第25話華音はまた沢田文美に捕獲されてしまった。
午前中の授業は、まったく静穏、平穏なもの。
華音は、姿勢を正して授業を熱心に受けているけれど、雨宮瞳は様々、考える。
「剣道中学日本一」
「合気道中学日本一」
「・・・そんな雰囲気は、華音君に全くない」
「最初に聞いた文学研究会は、超シックリ」
「しかし、格闘系先輩男子は、去年の大会で見たと言う」
「その華音君と同じ高校になったのだから、期待するのは当たり前」
「華音君が、自分たちの部活に入ってくれれば、都大会どころか、念願の全国大会だって夢じゃない」
「しかし、華音君は、前期の学校でも、文学研究会って言っていた」
「日本一になるほどの超実力者が、何故?」
「何か事件でもあったの?」
しかし、雨宮瞳が、考えるのにも限界がある。
考えるよりは、聞いた方がいいのかもしれないと思う。
華音も、「後でゆっくりと話します」と、格闘系先輩男子に言っていた。
「・・・となると、隠すものではないのかな」
「でも、聞かないとわからないや」
雨宮瞳は、とうとう考えるのをあきらめた。
昼休みになった。
三田華音は、雨宮瞳に目くばせ、立ち上がった。
つまり、「学食レストランに行きましょう」というサイン。
雨宮瞳は「わ!お誘い?うれしい!」と思ったけれど、また一歩出遅れた。
昨日のお弁当仲間たちが騒ぎ出した。
「えーー?華音君、今日は学食レストランなの?」
「また一緒に教室で食べようと思って、お弁当持って来ちゃった」
「学食レストランでも食べられるけれど、もう一品頼んだ方がいいかなあ、太るかなあ」
「何を今さら?」
よくわからない反応もあるけれど、雨宮瞳が「華音に声もかけられない」状態であることには変わりがない。
「うーーー・・・しかたないなあ・・・」
「委員だし・・・校内見学のお役目もあるし・・・」
「そんなことより、華音君と一緒にいたいし」
雨宮瞳は、複雑な思いで、華音と、それを取り囲むクラスメイトの列の最後尾で、学食レストランに向かうことになった。
その学食レストランに入ると、雨宮瞳は、またしても先を越されていた。
「華音くーん!こっち!」
沢田文美の大声が聞こえてきた。
「少し余分に席取ったよーーー!」
確かに、広い学食レストランの20人サイズのテーブルを沢田文美たち、先輩女子が確保している様子。
華音も、ニッコリ笑い、大声で応える。
「沢田さん、ありがとうございます!」
「助かります!」
沢田文美が、本当にうれしそうに走り寄ってくる。
「華音君、いい声!歌か上手そう!」
そして、そのまま腕を組んでしまう。
華音は、そこでまた真っ赤。
「あの、沢田さん、人も多いですし」
沢田文美は引かない。
「いいの!案内するから!」
「瞳より頼りになるって!」
もう、グイグイと食券売り場に華音を引きずっていく。
雨宮瞳は思った。
「とてもとても・・・ついていけない、ついていきたいなあ、沢田さんは邪魔」
雨宮瞳は、嫉妬心をハッキリと意識している。
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