閑話
すずらん。
依怙
いつまでもこの手を離せずにいる。
離してしまえば、二度と戻らない気がして。
優しくて、愛しいこの手の温もりをずっと感じていたい。
それが間違いだとしても、ずっと。
この感情は愛なのか、はたまた別の何かなのか。
恋も愛も分からないような私には、その違いを区別する術もなく。
ただ子供のように、温もりを手放すまいとその手を強く握りしめることしか出来ない。
今まで不必要だったそれは、いつの間にか大きな存在になっていた。
手を握ることさえ躊躇していたはずなのに、今では離してしまうことが恐ろしい。
それほどまでに、大切になってしまった。
月は今日も綺麗です。
隣であなたが呟いた。
その温かい手を、より一層強く握りながら。
私はきっと、幸せなのだろう。
死んでしまってもいいくらいには、きっと。
これが仮に愛でなく、何か別のモノだったとしても。
大切なものを失うことなくここまで歩いてこられたのだから。
今はただ、あなたがこの手を繋いでいてくれればそれでいい。
強く拒まれてしまわない限り、私はこの手を離さないだろう。
失わないことを願いながら、強く、強く。
ああ、でも、もし失ってしまったら、私はどうすればいいのだろう。
その隣に、私以外が並ぶ日が訪れてしまったら、私は。
わからない。
けれど、本当にそんな未来があるのなら──。
──そんな未来は、いらない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます