ルヴァン村長のヌリ村再興にっき

ばえる

プロローグ

私の住んでいるヌリ村は村長が夜逃げ、それに加え村人も減っていく一方で存続の危機にあった。

今は次の村長を皆で決めている最中、しかし廃れていく村の村長など誰もやりたがらず話は一向に進む気配がない。

いっそ廃村にしようという話すら出てきている。

どんな状態であろうとここにはお父さんとお母さんが残してくれた私の家がある。

潰させるわけにはいかない……!

だから私は手を挙げた。


「私が……やります」


私が手を挙げると周囲の人々からは驚きと呆れた声が聞こえてきた。

勿論この反応は予想済みだった。

農業をしてる村人が私に向かって話す。


「おいおいルヴァンちゃん、村を残したい気持ちは分かるが、さすがに無理だよ。去るものしかいないこの状況を変えるのは……」


続けてもう既に隣町へと移住する為荷物を抱えた村人が声を掛けてくる。


「この村はもう終わりだ。俺はおとなしく隣町へと移住する。ルヴァンちゃんも若いんだからそんな夢みたいな話してないで、早めに切り替えたほうがいいぞ」


私は退く気はない。

簡単じゃないのなんてわかってる。

それでも最初から無理だと決めつけたくはないのだ。

だから私は荷物を抱えた村人へ言う。


「ひと月……。いえ、一週間!」


荷物を抱えた村人さんはそのまま歩き村から出ようとする。

私は背を向けられていても気にせず言葉を続けた。


「お試しで私の村に住んでみませんか?」


荷物を抱えた村人さんは私の言葉に足を止め、振りかえる。


「私の……村だと?」


頭がおかしいと思ったのか、それとも興味を持ってくれたのか、何か迷った様子でその場に立ち尽くす荷物を抱えた村人さん。

そこへ、後ろから明るく大きな声が聞こえてきた。


「よっしゃ、乗った! 面白えじゃねえか! 俺はルヴァンちゃんに賭けてみることにするぜ!」


ガタイの良い村人さんだ。

私は周囲の冷たい、呆れたような雰囲気からどうしていいか分からないといった雰囲気に変わった今を利用し村人全員に向かって発言する。


「この村を終わらせようとしているのは誰ですか? そう、私達村人です!」


私はあえて少しだけ攻撃的な言い方をする。

今必要なのは具体的な解決策や私に良い印象を持ってもらうことでもない。

一人でも多くの村人に興味を持ってもらうことと、村へ留まらせること。

もしかしたら、と希望を繋げること。

だから私は宣言する。


「今この時この瞬間から、私が村長!」


騒がしくなる周囲の状況を無視して私は片手を空へと掲げ、言葉を続ける。


「村の存続を願う者は、私の元へ集え!」


少数の村人さん達の歓声と、迷う村人さん達、そしてその場から去る村人さん。

この後どれだけの村人さん達が残り、協力してくれるかなんてわからない。

はっきりとしてるのは、私の戦いは既に始まっているということ。

いいのだ、最初から退く気もなければ失敗する気もないのだから。

私がこの村を救ってみせる。



さあさあ、私が主役の物語を始めよう。

勿論目指す結末はハッピーエンド!

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