あたしの目の前から消えなさい

     lust thread


 次の日の朝。

睡眠不足で腫れ上がった目で、あたしは高級ホテルのスイートルームをあとにした。

結局、『237』の正体はわからずじまい。

やっぱり、神宮公園で覗いてたストーカーのしわざだろうか。


ヨシキのことも当然疑った。

そういえば、あたしがノマドのSUVに乗るとこはヨシキも見てたし、ノマドのツイッターをウォッチしてたら、『リッツカールトン』のスイートルームに泊まってることも、想像がつく。

そこから、あたしとノマドがいっしょにいるって想像するのは、簡単だ。

だいいち、野外エッチを覗いてたヤツが、『脱いでみた掲示板』のあたしを見つけるなんて、冷静になって考えれば、確率はすごく低いはず。

それに、あんな暗がりで、あたしのことがよく見えるわけもない。

ヨシキなら、掲示板のあたしを見たら、きっとわかるだろう。


『悪魔カメコ夜死期の悪行を晒すスレ』をヨシキも多分見てるだろうから、自分が散々叩かれてるくらいは知ってるはず。

一昨日も、親友のミノルといっしょになって、掲示板で血祭りに上げられたばかりだし、鬱憤は溜まってるだろうから、あたしを叩きに出てもおかしくない。

やっぱり『237』はヨシキかもしれない。


だけど、わたしの画像が晒されることで撮影したカメコもだいぶ叩かれ、なかでもヨシキがいちばん酷いバッシングを受けている。

あたしのことを書き込めば自分まで類焼するのは、ヨシキだって心得てるだろうから、自分の身の安全を考えれば、237=ヨシキの線は、やっぱり薄い。


ぐずぐず考えててもしかたない。

本人に直接確かめるのが、いちばんすっきりするかなぁ。

あたしはiPhoneを手にとり、ヨシキの番号をプッシュした。


“RRRRR…RRRRR…RRRRR…RRRRR…RRRRR…RRRRR…RRRRR……”


何度かけても、ヨシキは電話に出なかった。

コールバックもない。


なんで、、、

どうして?


“ピーン”


しばらくするとiPhoneのメール着信音が鳴った。

ヨシキからだった。


『炎上乙。全部ROMらせてもらった。もう無理。バイバイ』


なにそれ?

もう無理バイバイって。。。

ひどいんじゃない?!

いわれない中傷や荒らしにあたしが苦しんでるってのに、ヨシキは助けようともしてくれないわけ?

カレシなのに?!


頭にきて文句のレスを打ちかけたわたしは、指を止めた。


、、、これ以上追いかけるのって、惨めじゃない?

ヨシキはもう、あたしのこと好きでもない。

そんなの、わかってることじゃない。

もちろん、あたしのからだには興味あるだろうけど、、、 それだけ。

心まで、求めてくれてるわけじゃない。

ヨシキにとってあたしは、ただのセフレ、、、

結局ヨシキも、そこらのキモカメコやネラーと同じ、ただのおっぱい星人だってこと。


それくらいなら、あたしの方から振ってやる!

あたしを求めてくるカメコなんて、掃いて捨てるほどいる。

そりゃ、ヨシキ以上のイケメン神カメコなんて滅多にいないけど、世の中広い。

いつかはそんな素敵カメコが目の前に現れて、ヨシキなんて蹴散らしてくれるはず。。。

もう、あんなヤツのことなんてどうでもいいや。


こっちからバイバイだわ!

あたしの目の前から、消えてしまってよ!!


つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る