第15話 平和

 修学旅行の3日目は、ほとんどバスの中だった。

 ここで何かエピソードでも話せたらいいんだろうけど、ほとんどの人が熟睡してしまい話せることがない。

 ということで、今日は修学旅行から帰ってきた後の僕と奏汰の会話をお届けしようと思う。


 修学旅行の翌週、月曜日の昼休み。僕は奏汰と一緒に屋上でお弁当を食べていた。少し風が強いけれど、気にするほどではない。

「ねえねえ奏汰。ちょっと聞いてよ」

「何?」

「僕ね、友達出来たんだよ!」

「ほう」

「西野君と小野君って言ってね……」

「いや知ってるよ。クラスメイトだし」

「あ、そっか」

「そうだよ」

「うーん、あ、西野君が迷子になりかけた話でもする?」

「迷子? この年で?」

「そうなんだよ! ディズニーランドと自主研修の時に。大変だったんだから」

「楽しかった?」

「そりゃもちろん」

「ふうん……。あ、本田とはなんかあった?」

「あー……」

 言葉に詰まる僕。怪訝そうな顔をする奏汰。

「えーっと、まあ、前よりは仲良くなれたよ」

「前よりは?」

「うん。ディズニーでも隣に座ったやつがあるんだから」

 屈託のない笑顔で僕は言う。

 修学旅行中にあったことを奏汰は知らない。そして僕は言うつもりがない。

 前なら迷わず奏汰に報告していたけど、今回のは言わない方がいい気がする。ほら、奏汰って少しおせっかいなところあるし。

「で、その時何話したの?」

「それがさあ、人形とかがすごい細かく作られててそれに見入っちゃって。あんまり会話しなかった」

「ばか」

「ばかとかいうな」

「いやマジでばかだろ。そこは話しとけって。これまでにないチャンスだっただろ」

「うーん、それはそうなんだけど……。ほら、何事もあせらない方がいいっていうでしょ」

「お前なあ」

「へへ。そんなことより、奏汰はどうだったの? 修学旅行」

「ああ、面白いことがあったんだ。絶対慧斗も噴き出すと思う」

「マジで? どんなどんな?」

「それが……」

 そのあと、奏汰の話が面白くて随分長い時間話してしまった。そのおかげで5時間目に少し間に合わず遅れて教室に登場。一気にみんなからの視線を浴びたのと、先生からのお説教で、僕の精神ライフが少し削られた。

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