第13話 修学旅行2
「わーい! ついにきたぞ! ディズニーランド!」
僕の隣で西野君が騒いでいる。それを横目で確認してやれやれと思いつつも、僕自身も少しばかりテンションが上がっている。
「楽しみだね! 石橋君!」
「うん。そうだね」
2人で笑いあった後は、班ごとに整列して先生の話を聞いた。
いわく、今日の自由時間は午後6時まで。今は11時だから、大体7時間もある。
「じゃあ、早速いこう、昴、石橋君!」
西野君はそう言うと、するりと小野君と腕を組んだ。
「ちょ、錬、今日はやめろ。動きにくいし、恥ずかしい」
「ん、何が?」
「腕を組むな」
「あ! ごめん、今の無意識! ついいつもの癖で。えへへ」
「全く。しょうがないなあ。気をつけろよ」
「うん!」
とても仲がいい2人。なんだかアウェイな気分だ。
「えーと、2人はすごい仲いいんだね」
「そうだよー! 僕と昴は、恋人といっても過言ではないくらい仲良し!」
「え」
「おいおい。それはさすがに。単に、錬が甘えすぎなだけだから」
「ひどっ! まあいいや。ねぇねぇ、ビッグサンダーマウンテン乗ろうよ」
「それは混むから後にした方がいいんじゃ……」
僕が提案すると
「ふっふっふ。馬鹿だなあ石橋君は。混むからこそ先に行くんでしょう? 絶対乗りたいなら、それを優先的にしないと!」
「な、成程……」
「わかったら行く! あー待って。やっぱりその前にカチューシャ買ってかない? 耳付きの」
「僕は恥ずかしいからいい……」
「俺もいいや」
「えー? せっかくのディズニーだよ? 思いで作ろうよ!」
「俺はカチューシャ付けた錬の写真撮れば思い出になるわ」
「僕はキーホルダー買えたらそれでいいかな」
「むー!」
結局そのあと、西野君はまさかの三人分のカチューシャを買ってしまったので、皆で付けた。
そしてお目当てのビッグサンダーマウンテンやカリブの海賊など、たくさんのアトラクションを楽しんだ。西野君が迷子になりかけたりもした。
「よっし! 時間的にここが最後かな」
「ここは……、イッツアスモールワールド?」
「そうそう」
「おっ……」
時計の中から人形たちが出てきてくるくると戻っていく。なんだか楽しそうだ。
「じゃ、早くならんじゃおっか」
「そうだね」
うきうきと並んでいると、本田さんと清水さんが現れた。
「あれ、偶然だね。石橋君達もここ選んだんだ? まあ、最後といえばここだよね」
「清水さん分かってるじゃん! いいよね、ここ」
「もしかして西野君の選択? 趣味あうかもね。あ、3人ともカチューシャにあってる。やっぱり私たちも買えばよかったかなあ。ね、茜」
「え、恥ずかしいからいいよ」
「そう? でもさあ、こんなの付けられるの、今のうちだと思わない? いろんなこと、やれるうちにやっておいた方がいいと思うけどな、私は」
「香奈らしいね」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
「そうして」
仲良さそうに話す2人。今回同じグループになって初めて知ったことだが、清水さんは本田さんと事をとても大切にしているようだ。
カチューシャの耳をふわふわ触っていると、本田さんが口を開いた。
「あのさ、お願いがあるんだけど、いいかな」
「? 何?」
「あ、あのね。私、石橋君の隣で座りたいの」
「あら、大胆だこと」
「ちがっ、そういうんじゃないって!」
ほおを赤らめる本田さん。動揺を隠せない僕。
「ダメ、かな?」
「全然いい、いいに決まってる」
「ほんと? ありがと」
そうか、ついにこの時が来たか。
修学旅行で本田さんと同じ班になって、かなり会話をした。友達と呼べるかは定かではないが、十分可能性はあるだろう。
「あ、順番来たよ。のろ」
「石橋君! 後で感想聞かせろよ!」
「ええ!」
ドキドキしながら乗り込むと、リズムの良い音楽に合わせて踊る人形たちが目に入った。細かく作りこまれていて、つい見入ってしまう。
「あのね、石橋君。話したいことがあるの」
「は、はい」
「実は、私ね、その……。好きな人がいるの。それでね……」
来る。絶対来る!
「……颯のことが好きなの」
「は?」
「言っちゃったー! 恥ずかしい!」
「……」
「そ、それで、石橋君、颯と仲いいじゃない。だから、その、手伝ってほしいの」
「へ、へー」
「ご、ごめんね。皆勘違いしてるみたいで。恥ずかしかったでしょ?」
「いや、全然? 手伝いね、手伝い。いいよ、喜んでやるよ」
「ほんとに? 嬉しい! ありがとう!」
「あ、うん」
告白されるかもとか思ってた自分が本当に恥ずかしい。
でもまあ、僕は本田さんと仲良くなって事故から守りたいのであって、付き合いたいなんてそんな高望みは……。
その日の夜の西野君達への報告は、ずいぶんしょっぱいものになりました。
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