第69話 こんにちは 赤ちゃん

「こんにちは、赤ちゃん」

 出産直後に笑顔で呟きたかった第一位

 

 娘を産んだその年も猛暑だった。

 予定日を1週間過ぎた検診で先生が言う。

「暑いからお腹の中がいいのかもね。

 陣痛促進剤使って出しましょう」

 

 3日後、入院準備して産婦人科へ。

 朝の9時に促進剤点滴注入。

 お昼はカツカレー完食。

 午後2時、なんかお腹が張る感じ。

 チクチクかな?収縮かな?

 午後4時頃、なんかヤバイ、痛い。陣痛?

「まだないね」

 お見舞いに来てくれた母の一言に唖然。

 もう十分痛いんですけどね‼ (怒)


「私のお腹にエイリアンがいるー。助けてぇ」

 あまりの痛さに意識を失いかける。

「さあ、今のうちに分娩室に行きましょう」

 陣痛が弱くなった時に歩いて移動する。

 髪を振り乱したデバネズミの姿に3歩下がる

 義母。お化けみたいで怖かったそうだ。


「はい、いきんで、あっ、いきまない」

「どっちやねん!(怒) 早く出しちゃってよ」


「無理です、引っ張りましょう。先生!」

「早く準備して。――ちょっと切りますね」

 何を準備して、どこ切るの?

 ジョリジョリと切る音が聞こえる。会陰無痛。


「さあ、いきんで。引っ張るよ~」

 牛か馬のお産ですか?

 

 オギャー。産まれた。頭がながっ。

「おめでとうございます。女の子です。頭は

 しばらくすれば元に戻ります。縫いますね」


 波縫いですか、祭り縫いですか? 無痛。


「本当に人間が入ってたんだ」感動。

 赤ちゃんにかけた最初の言葉が残念すぎる。


 あれから24年、娘よ誕生日おめでとう!

 

 

 

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