第44話 ハンブンコ

「デザートは何にする?」

「お母さんは、抹茶パフェにする」

 食後のデザート選びは至福のひととき。

「抹茶パフェ美味しいからあなたもどうぞ」


「……私、親になる自信がない……。」

 ケーキを一口食べた後、娘が呟く。


 えー、出来ちゃたんですか?いつの間に?

 ないっない、あり得ない。

 

「……だって私、自分のものあげたくない」

 えっ、何の話?こんがらがるデバネズミ。

「子供に自分のデザートあげたくない」

 プッはぁ、ちぃちゃぁーい。そんな事?

「お母さんは、何でも私に分けてくれるけど

 私は自分の好きな物を分ける自信がない」

 

「親になれば自然と出来るんだよ。いや、

 考えてすることじゃないし……大丈夫」

 励ましながら、失敗したと反省。


 私は4人きょうだいの長女だ。

 幼い頃からわけっこ当たり前。

 4分の1じゃない!妹と弟の笑顔が見たくて

 何でも8分の1で満足していた。

 それが小さな幸せだった。


「お母さんも食べて」「ハンブンコして」

「美味しいからあげる」「一緒に食べよ」


「全部食べなさい」「お母さんはいいから」

 一人っ子の娘から与える喜びを奪ってきた。


「お母さんとハンブンコして一緒に食べる」

 小さな手でわけっこしたクリームぱん。

 あの時、ありがとう、うれしいって

 一緒に食べたらよかった。

 娘のがっかりした悲しそうな顔。反省。


 幸年期は涙もろい。成長記録のビデオを

 観て止めて、「この時もごめんね」

 一時停止して「こんな言い方してごめんね」

 画面に謝るデバネズミ。涙、なみだ、涙。


 今からでも遅くない!

 棺桶入るまで母娘。大切な宝物。

 これからは、何でもハンブンコしようね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る