第37話 アパレル店員

「お時間限定のタイムセールです!」

「ただ今、30パーセントオフです!」


 春のセールでお宝探しの娘とデバネズミ

 お決まりのアパレル店員の声を頼りに

 あっちのお店、こっちのお店に出没する。


 まずは全店回ってから、買うか決める。


「これいいね。どう思う?」「ダメ」

「これ似合うかな?」「いいんじゃない」

 娘との楽しい時間。になるはずですが……


 お店の名前も覚えられない。どこにどの

 服があったか思い出せない。

 記憶じゃなくて記録の幸年期。


 娘はお気に入りの服を見つけると必ず

 試着する。荷物持ちのかくれんぼ。

 いつ試着室を出たのか分からない。

 店内を探し回るデバネズミ。挙動不審。


 セール中はお客さんも多い。

 ここで自慢したい。私のいる所には

 必ずお客さんが寄る、増える。


「お母さん、庶民的な顔だから、みんな

 安心して入れるんじゃないの?」


 そうなの。顔もファッションも庶民的。

 そして声をよくかけられる。

「よかったら、ご試着してみて下さい」


 値札を見てひっくり返しながら、愛想笑い

 ぐいっと来られると、娘にSOS。

「これと同じような服持ってたよね?」

「……あった、かもね」娘は苦笑い。


 セール中は声をかけないで下さい。

 選択表示見て水洗いOKかチェックする。

 

 娘はどこかな?元アパレル店員の娘。

 

 商品をていねいにたたんでいる。

 自分がさわっていない商品なのに、

 棚にある服を全部たたんでいく。

 すんごいスピードだ。

「乱れてるとつい綺麗に畳みたくなるの」


 そういえばセール期間中、話す声も

 大きかったな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る