6月5日 火曜日
第8話 桐川 絶
◆桐川
退屈。
その言葉で人生を表すのに事足りた。
高校3年生。
何か張り合いのあるもを見つけた事がない。
スポーツ。
小学生ではサッカーで全国大会優勝まで行った。
特に熱中した覚えはない。
上手い人間の動きを見て学び、真似をする。
上手くいく。
何も楽しくなかった。
勉学。
中学、高校のどちらもトップクラスの学校へ行った。
本を読む。
理解する。
学年トップの成績を取った。
他の人間からの賛美を受けても満たされない。
当たり前だ。
他の人間から称賛されて悦を感じるのは、他人に興味があるからだ。
自分にすら興味が薄れ始めた。
張り合いがない。
生きがいがない。
しかし
――6月5日 木曜日 午前7時12分。
「俺は悪魔のガルバだ」
18年の退屈は一瞬で崩れ去る。
◆◆◆
「では、悪魔とはなんだ?」
「悪魔とは、魔界に住む生き物だ」
「人間と何が違う」
「人間と違い理性がなく、本能で生きている。 したいことをして生きる」
「今俺と話していることもしたいことなのか?」
「俺が欲しいのは勝利だ。 そのためだ」
「本当に理性がないのか?」
「……そう言われても困る」
ふむ。
悪魔──このガルバと名乗るスーツ姿の髭を生やした大男──はそう語る。
理性がなく本能で生きるというのは多分言葉のあやだろう。
好き勝手に生きているということを言いたいのだ。
人間とは違って我慢をしたり、法を作ったりしないぞと。
そういうことなのだ。
俺は契約にはすぐに応じた。
魔界、悪魔、魔力、魔術。
俺の知らない世界。
人ではたどり着けない領域。
そこになら俺の求める何か、生を感じることができるかもしれない。
世の中捨てたものじゃない
──そう教えてくれたのは魔界であった。
◆ガルバ◆
俺が契約者の候補を探し見つけた、この少年――桐川絶は、空前絶後な才能を持っていた。
こんな人間いて良いのかと思うほどの契約者の才を持っていた。
想いの方は「退屈」という強いイメージ。
大当たりだろう。
「契約者の才能とはなんだ。 『
「いや、契約者の才は、魔力を受け止める器のことだ。 器は大きくてはならない」
「小さいとどうなる」
「意識を乗っ取ってしまう。 つまり憑依だ。 大きければ魔力を多く受け止めることができ比例し身体能力があがる」
「なるほど。 想いというのが『
「そういうことだ」
絶は真剣に聞いていた。
何がそんなに彼を熱中させているのか俺にはわからない。
◆ロック◆
空の旅を終え日本へたどり着いた。
東京都。
この平和な町が戦場となる。
ここから油断はできない。
6体とはいえ、いつ会ってもおかしくない。
「では、ロック君。 拠点になっているホテルまで行こうか」
「えぇ。 流石に今の装備では不味いですからね」
「飛行機に武器を持ったままは乗れないからね。……でも、ここは日本なわけだし、君の武器はいけたんじゃないのかい?」
「まあ、200年前だったら大丈夫じゃないですかね?」
「生きにくい時代になったねぇ」
「何歳なんですか」
ハーデンバルトさんはガハハと笑った。
ほんとこの人は……。
本当に200歳とかなんじゃないんだろうか。
冗談に聞こえなくて困る。
で、
200年前なら俺の武器の
まず、飛行機が飛んでないって話だ。
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