ギルドの雑用係

 「よし、いくか」


 ギルドへ仕事をしに行く準備をし、宿を後にした。


 宿を出ると、目の前に広がるのは、空から温かな日が照らされた数々の建物が並んでいる光景だった。

 『月光』が建っているこの場所は、比較的高台といえるくらいの高低があるところ、しかも王都の端の端に位置しているので、こうして一望できるスポットでもある。


 「今日は快晴だし、絶好な採取日和だ」


 と、メインストリートへ続く、爽やかな風が吹き抜けている小道を、晴れやかな気分で歩いていく。


 数分歩けば、直ぐに大勢の人々が交差しているメインストリートへ出た。


 歩く度に、いつも自分が身に付けている、カチャカチャと身に付ける装備品が揺れる音を鳴らしながら、ギルドがある方面へ。

 いつもの慣れ親しんだ装備品の重さを全身で感じ、朝食やエリーとの絡みで緩みきった心を切り替えた。


 今の時間帯は、ギルドへ向かう冒険者達以外にも様々な職業に就いている人達が準備に奔走する時間のため、大勢の人々が行き交い、今のように混雑している。

 このガヤガヤしているメインストリートを歩いていると、「あ、これだ」と何処か安心するのは俺だけだろうが、このメインストリートの騒がしさはここ王都シーラのご愛嬌なのだ。


 (……ま、安心しきってちゃ危ない時もあるがな)


 そう。安心しきって油断していると、人混みに上手く溶け込んだスリが金品を盗んでくる場合がある。


 というか、まんまと過去に財布を盗まれてしまった被害者こそ自分なので、一応経験者として忠告しようと思った次第だ。

 あの時は本当に困ったことになった。


 先ず、当時の俺は仕事を優先していたがために、シーラには王城と関所ぐらいしか習慣的に行くことがないため、道に迷ってしまう。


 噛み砕いて話せば、元は比較的、隣国が領地侵犯する頻度が多い地を治めている辺境伯の家に雇われた傭兵だったのだが、そこで結構な輩を取り締まった功績を称えられて首都シーラに配属されたので、当時ここの立地には詳しくなかったのである。


 そして、迷子になり、メインストリートをうろうろしている内に、人混みのなかに潜んでいたスリに財布をまんまと取られ、その後一週間は無一文で野宿生活を送ることになってしまったという苦い想い出がある。

 シャレにならないくらいその時は死ぬかと思った。主に寒さで。


 (次盗んでくる輩には俺の正拳が肋に突き刺さるだろう……)


 なので次は絶対盗まれないようにベルトに財布が入った子巾着をきっちりと結んであるが、もしスリが来たときは盗まれはしないだろうが、きっちりとお灸を据えてやろうと心に誓っている。 


 「──よ、エーデル」


 「ん?」


 そんなことを考えながら人混みを歩いていると、不意に後方から誰かに呼ばれた。


 「はい? ……って、ロイスかよ」


 「いや何だよいきなり。誰を期待してたんだよ」


 振り返れば、そこには見知った顔があった。


 このロイスという男は、二年前ギルドにやっと慣れてきた頃に、何時の日かは忘れたが隣街まで商人を何人かで護衛する依頼を受けたときに出会ってから関係を持ち続けている、要は戦友っていう間柄だ。

 あの時は確か定員六人の寄せ集めパーティで受けたような気がする。

 

 今もロイスとは度々一緒に依頼を受ける仲なのだが、あの時でパーティになった他の四人とも交友関係を続いている。

 一応紹介しておくと、目の前にいるロイスは盾と直剣を扱い、他四人の中でトーレスという変態がいるのだが、そいつは意外なことに、扱いが難しいロングボウを扱っている。


 後、コウセイという珍しい名前で如何にもモテそうな顔をしている奴が居え、そいつは長剣を使い、剣術は中々ものでありながらも、魔法も上手という万能型である。

 戦い方はまだまだ未熟ながらも、良いものを持っている青年だ。

 たまに「これがチートか」とか「やっぱり出来るだけ抑えておこう」とか意味わからん言動するが、良い奴だ。


 もう一人はシオリという、これまた珍しい名前の可愛らしい女の子が居るのだが、そいつは魔法が得意なようで、護衛依頼の道中で襲ってきた盗賊の結構な数を倒していたのを覚えている。

 こいつもたまにコウセイと同じような意味わからん言動をするが、普段から礼儀正しく、何処かしらの令嬢みたいな振る舞いをする奴だ。


 最後の一人はレイナという治癒魔法が得意な奴だ。

 しかし、こいつとは他の四人とは違ってどうも仲が良くなれない。

 例えば、護衛依頼を終えた後も、たまたま道中で出会い、挨拶を交わすときがこれまでに何回もあったのだが、その時は「あら、まだ冒険者をお続けにいらしてるのですね」とか「そろそろ、その汚い髭を剃られてはどうですか?」とか毒を吐いてくる、そのような奴なのだ。


 (黙ってれば美人なんだけどなあ……)


 「はぁ……」


 まあ、こういう個性的な奴等が、現在の俺と主にパーティを度々組んでくれる戦友達である。


 「──おいおい。俺の質問への答えが溜め息ってまた酷いことしてくれるじゃねえか」


 どうやらレイナの事を考えていた時に無意識に嘆息してしまってたようだ。 


 「おっと……すまん。何かお前の顔をみたらレイナとか他の奴等のことが頭に浮かんできた」


 「は?」


 と、俺が咄嗟に言った言葉に対して呆けた顔をしたので、話を変えることにした。


 「いや、なんでもない。どうした? 何か用か」


 「あ、ああ。いや……今日も雑用か?」


 「雑用っていったらそうかもな。今日は薬草採取だ」


 「へえ。……ちょっと依頼書見せてくれるか?」


 「いいぞ。ほれ」


 バックパックから依頼書を取りだして、それを渡されて見た瞬間、ロイスは「……お前、これって」と顔を渋くさせてそう聞いてきた。

 その時点でロイスが何を言いたいのか察することが出来たので頷く。


 「まぁな」


 「まぁな、じゃねえよ。お前この依頼どう見ても採ってくる薬草の数と報酬額が釣り合ってねぇじゃねえか」


 「それはそうだけど、掲示板に貼り出されて一週間も放置されてるのって……なんか、こう……ね?」


 「なるほどー……ってなるかい。またやってんのかよ。しかも何回目? こういう放置されてるような明らかに受注した側が不利益になる依頼受けるの。何? お前まさか進んで自分から虐められたいとか、そういうの好きな変態なの?」


 「変態な訳あるかよ」


 全く、偏見も良いところである。


 「じゃあさっさと答えんかい。これでもお前の生活のこと心配してるんだぞ」 


 雰囲気は軽いものの、その表情は真剣そのものだ。


 「そりゃありがとな。まあ、気分だよ気分」


 「……気分でどうして上質な薬草50個なのに報酬額が50シルバーな不当しかない糞依頼を受ける気になるんだよ。てかそろそろ真面目に答えろ」


 「糞依頼とかいうなよ。確かに、この依頼は仕事量を考えれば本来10ゴールド以上の報酬額が妥当だ。けど昨日、この依頼を出した依頼人の元へ訪ねてみたんだよ」


 「……ああ、なんかもう訪ねたのが受ける理由ってとこで概ね予想が出来たわ」


 そう言った時点で察したようだったが、一応心配もさせてるので構わず続けた。


 「そしたらその依頼人が貧しい家の10才くらいの女の子でさ……依頼理由が『母親が採ってきた山菜にモウドクゲソウの一部が混じっていて、そうとは知らずにスープを作って先に口にした母親が倒れてしまったので、特級の薬草を作るために上質な薬草を集めてきて欲しい』って奴だったんだよ」


 ──モウドクゲソウ。

 

 名前の通りに、過度に触れたり、食べたりすると対象を猛毒状態にさせてしまう草だ。

 元々ドクゲソウという草だったのだが、魔物の増殖による空気中の急激な魔素の増加で、魔素を栄養とするドクゲソウが大量に取り込んだ結果、昇華したものと考えられており、別名『魔の草』とも呼ばれている。


 そんな危険な草を、彼女の母親は一部だとしても口にしてしまったのだ。


 「まあお前のことだからそういう事情が絡んでんだと思ったわ。……それで? 確か貼り出されて一週間が過ぎてたんだろ。母親は大丈夫なのか?」


 いつものことのようにやれやれと呆れた顔だ。

 勿論、一端冒険者であるロイスはモウドクゲソウがどんなに危険かを承知しているので、理由を聞いて納得した様子ではあるが、同時に心配気に眉を狭めてくる。

 

 「普通ならモウドクゲソウの一部でも口にしたら5日も持たないけど、近くの通っている教会に頼み込んで、特別に派遣された僧侶の治癒魔法でなんとか保っている状態らしい。……けど治癒魔法を受け続けると効果が次第に薄れて来るんだ」


 「いずれは死ぬ……っていうことか」


 「……ああ。時間が無い。治癒魔法を使ってから今日までで既に四日が経過している。だから今日中に全てを集めきって、明日の朝には特級の薬草で作った特効薬を服用させたいと思ってる」


 「そうか。急いでんのに呼び止めて悪かったな」


 「いや、大丈夫だ。こと雑用に関しては俺の右に出る奴は居ないし、薬草採取もその一部で場所も大方見当はついている」


 「……流石だな。伊達に『ギルドの雑用係』の異名を背負ってきただけある。ほれ、さっさと行ってこい。またな」


 (その異名は正直嬉しくないが)


 「おう。またな」


 と、普段より早歩きでギルドへ向かうのだった。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆






 ギルドへ着くと、早速受注するために受付の方へ向かう。


 ──王都の冒険者ギルドであるためか、地方と比べて豪勢な造り、内装を施していた。

 清潔感がある、真っ白く研磨された石壁、天井には正に芸術を思わせる綺麗なギルド紋章を硝子へ彫刻されたシャングリラ、広く高い天井を支える為に柱は大理石を主な素材として使用している等。

 流石は王国中のギルドを牛耳っている総本山だ。格が違う。

 コウセイ風に言えば『レベルがちげえ』だ。

 因みにコウセイによると、相手が反則級の強さを持っていたときに『チーター』と呼んで、格の位置付けをしてるらしい。


 今は朝であり、冒険者が少ないからなのか普段より広く感じるエントランスを進み、いつもの受付の前で立ち止まる。


 「すみません。この依頼を受注したいのですが」


 「──はーい!」


 少し声を張り上げて奥の方へ呼び掛けると、ハツラツとした声で返事をする一人の受付嬢が出てきた。


 「あ、エーデルさん。今日も早いですね。おはようございます」


 「おはようございます。リーアさん。俺の場合稼ぎが少ないので早く来ないとですからね」


 受付嬢であり、実は冒険者でもあった俺より一歳歳上のリーアさんは、冒険者として活動し始めた三年前からの間柄だ。

 冒険者としての基本を教えてもらった先生でもあり、色々と迷惑もかけてきたので、国王や騎士団長の次に頭が上がらない人でもある。

 綺麗な黒い髪を横で結えた可愛らしい髪型でありながらも、宝石のような金眼は美しい雰囲気を醸し出している。


 又、男冒険者の間でも綺麗所のリーアさんは人気で、ピーク時にはリーアさんの列が一番長くなるらしい。

 

 そんな人に朝から会えるのは素直に嬉しいが、何故かは知らないが、この頃リーアさん以外の受付嬢に対応されてない気がする。

 嫌がらせとかそういうのじゃなくて、他の受付嬢が来る頃にはリーアが来るからだと思うが。

 

 いや、まあ嬉しいので良いが、そろそろ他の男冒険者からのやっかみが来そうで怖い。


 「ふふっ……確かに、そうですよね。──それで、良い依頼は見つかりましたか?」


 返答に何故かクスッと微笑んだリーアさんに困惑しながら、「はい。これでお願いします」と、依頼書を渡す。


 「はい。少々お待ち下さい──」


 受け取ったとき、また何故か予想していたような微笑みを浮かべたリーアさんは、慣れた手つきで書類をパラパラと捲りながら、依頼書を何回か見比べ、「確認致しました」と、羽ペンを持ち、担当受付嬢の欄に名前を書こうとするが、その前に俺へ確認してきた。


 「最後の確認ですが……本当にこの依頼を受注しても宜しいのですね?」


 普通なら咎める表情で『この依頼は報酬額と依頼内容が不釣り合いであり──』と他の受付嬢には言われるのだが、何回も俺に対応してきた数人の内の一人であるリーアさんにとって、このやり取りは何回もしてきたので説明を省いたのだろう。


 今のリーアさんの顔は咎めるような表情とは程遠い、又、俺の心を見透かしたような目で笑顔である。


 「はい」


 勿論、俺が肯定することを分かっていたから笑っていたのかは不明だが、大体そんなとこだろう。


 「承知致しました」


 隣の欄に俺が記入した名前が霞んでしまう程の綺麗な字で名前を書き上げ、「依頼達成を祈ります」と手渡される。


 「ありがとうございます」


 「上質な薬草採取……正にエーデルさん打ってつけの依頼ですね。いつもこのような依頼の他にも、他の冒険者の皆さんが手に取らないような依頼を率先して受注し、必ず達成してくれるエーデルさんみたいな人が居ると本当に助かりますよ」


 「いえ。こうして雑用係がするような依頼をしてるのは、戦闘を出来る限りしたくないからですから」


「それでも、行動としての結果が称賛に値するものなのは変わりありません。実はエーデルさんのお陰で二年前に比べて王都の皆さんからのギルドへの評価と信頼が日に日に相当高くなってきてるんですよ。本当にいつも助かってます。ギルド員を代表して礼を言わせてください。……本当にありがとうございます」


 正直、リーアさんにここまで感謝されると照れる。


 大丈夫だろうか。俺の鼻の下が伸びてないか鏡で今すぐ確認したい。



 「……まあ、こういう仕事ぐらいしか俺には出来ないですから」


 何とか耐えながらも食い下がると、リーアさん「謙遜は美徳ではありますが、過ぎると唯の嫌味になりますよ?」と、咎められる。


 「え、で、ですが……本当に、逃げてるだけで、そこまで誇ることでもないと思います」


 (後、頬を少し膨らませて咎めるのはズルいと思います)


 何というか、怒られてる筈なのにほっこりとしてしまう。

 多分男冒険者は怒られに毎日来てるのかなとも思ってしまう。

 

 「それでも助かってる人たちは大勢いらっしゃいます。とにかくこれは事実なんです。分かりましたか?」


 (あ……呆れられた)


 これ以上俺の食い下がりに付き合う気がないようだ。


 「……はい」


 「よろしい……では、気を付けていってらっしゃいませ」


 「行ってきます」


 返事にリーアさんは満足したように微笑んだ次には、受付嬢らしく優雅に一礼をしながら見送ってくれた。

 

 そんな彼女を尻目に、ギルドから上質な薬草の群生地帯へ直行するのだった。


  

 



 


 


 

  

 


 



 



 「……」


 王都シーラを出て数十分の森林に到着後、周囲を警戒しつつも目的地を目指している。


 『エアール大森林』と呼ばれているこの森は、主にワーウルフ族やゴブリン族、ピクシーという妖精族の種族が住んでいる。

 多くは初心者冒険者達の育成や魔法学園の遠征という名目で使用されるのだが、普段から冒険者達の出入りが激しい人気の活動場所でもあるので、別名『始まりの森』とも呼ばれている。

 資源も豊富なので、ここで林業等で稼いでいる人達も多く居ると聞いている。


 そんな森の獣道を、迷わないように所々の木々にナイフで印を付けながら進んでいくこと十数分が経過した頃の時だった。


 「──っ」


 (気配がするな)


 周囲に生い茂る林を掻き分けてくる複数の物体の気配を感じ取る。


 (数は……4、いや5か)


 大方の気配の数に予測をし、直ぐに臨戦態勢へ移行する。


 因みに今の着用している装備、又は所持している道具は以下のようなものだ。


・主に使う武器となる、175サンチの短槍。


・予備の武器として、直剣と投げナイフが10本、武器として扱わないつもりだが、作業用ナイフがある。


・所属しているギルドからの至急品である、ワイルドベア皮の素材を使用している皮装備一式。


・腰のベルトに投げナイフ、作業用ナイフと共にぶら下げている、簡単な応急処置に必要な医療品の小物入れ。


・背負っている中型の鞄には地図と、ランプ、蝋燭、三日分の非常食、そして薬草を入れる用に用意した大きい皮袋が畳んでしまってある。


 以上が、俺の装備だ。


 主武装となる短槍は、従来の槍よりも一回り短く、軽い。

 それにより、取り回しが利いて扱いやすいため、直剣に次いで前衛の初心者達に人気な武器である。

 リーチが短くなってしまうものの、世界で一番使用者がいる直剣よりは明らかに長いので、そこまで気にすることではない。


 又、取り回しが利くということは、次の攻撃に手間隙を掛けずに移すことが出来るということも表すので、攻撃速度もやや速いし、何より冒険者という職業柄で洞窟を探索する機会が多いのだが、長く重い長槍だと洞窟内での戦闘中に、扱いにくさで近くの岩肌に当たってしまうことがあり、どうしてもその長さという利点が難点になってしまう。

 しかし、短槍ならば、洞窟内での戦闘中に、従来より短く、取り回しが良いため、近くの岩肌に当たってしまうことが無くなるので、汎用性の面で見ても、短槍は素晴らしい武器と言えるのだ。


 最初は慣れないその軽さと短さで、感覚が鈍り、思うように動けなかったのだが、今はもうすっかりと慣れ親しんでいる。


 次に直剣なのだが、これは単に、槍に次いで扱える武器ということと、汎用性に富んでいるので選んでいる。

 短槍と同じように、軽く丁度良い長さなので、色々な状況下での戦闘が可能だ。


 投げナイフはより効率的な戦闘運びをするときに扱う武器だ。

 遠距離から攻撃を仕掛けてくる魔術師や弓士、銃士への対抗手段、もしくは牽制として扱うことも出来るし、奇襲時や敵の集団を撹乱させたい時、敵の注意を引く時にだって活躍する。

 正に万能だ。


 後の物の説明はさておき、今は目の前のことに集中しなければ。


 少し位置を調整し、周囲に木々があるので短槍よりも更に取り回しの良い片手剣をゆっくりと引き抜いた。

 左足引き、また同じように左腕を引く。そして、右足へ重心を置いた後に、剣を掴んでいる右腕を体の軸に合わせるように虚空へ突き立てる。


 王国流剣術に自分なりに研鑽積んで調整を繰り返し、最終的に出来て身に付いた我流とも言える型であるが、実際の実用性はこちらの方が高い。

 型としての強さなら王国流剣術の方だが、単純な強さであればこちらの剣術の方が強く、また堅いのだ。


 「……よし」


 最近は敵から逃げてばかりで戦闘してこなかったが、我流剣術は正当な剣術よりも衰退が早いので、腕が廃れぬうちに今日ぐらいは戦うことにしよう。

 少し緊張気味だが、やらなければ。


 俺には待ってくれてる人が居るから。


  

 

 ──ゴブリン族だったらいいな


 と、迫ってくるもの達が唯一この森で意思疏通出来る種族であることを祈りながら、剣の柄を強く握り締めるのだった。

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