第286話



「あ、あの『ツバサ』の皆さんですよね」


さくらが振り向くと、『ぼんくらパーティ』から追放された若者たち3人が立っていた。


「ああ。そうだ」


「すみませんでした!」


3人は同時に頭を下げる。

・・・この子らが謝る必要あるか?


『ありませんね』


「オレたちはジュスタールに戻るが、キミたちはどうするんだ?」


さくらの言葉に3人はお互い顔を見合わせる。


「すみません。俺たち、此処で迷ってしまっていたので・・・

町まで案内してもらえますか?」


「ああ。それは構わない」


「ありがとうございます。

それで、実は俺たち・・・あの?」


さくらに話しかけてきたが、さくらは相手にしない。

スゥたちも同じ方向に目を向けている。


「・・・スゥ」


「はい。ルーナ」


「うん。行ってきます」


スゥとルーナが音を立てずに森の中へと駆けて行きました。


「え?・・・あの」


少年たちはさくらに話しかけようとしたが、シーナがさくらを背に隠すように位置をずらした。


「あなたたちを追ってきたと思われる魔物が近くまで来ていました。

・・・すでに討伐済みです」


「スゥ。ルーナ。お疲れさん」


さくらが声をかけると、「お待たせしました」との声と共にスゥとルーナが目の前に現れた。


「じゃあ、行くか」


「あの!彼らはこのまま置いていくんですか?!」


さっきまで『共闘仲間』だったから、魔物の出てくるここに置いていくのは躊躇うのだろうか。

しかし、さくらたちにとってみれば「殺そうとしてきた連中にかける情けはない」のだ。


「じゃあ、ここに残って魔物が来たら追い払ってやりな。

じゃあ、オレたちは帰るぞ」


さくらの言葉にスゥたちは「はい!」と声を揃えて返事をすると、先を行くさくらを追いかけた。


「ご主人様。宿の方は・・・」


「ああ。すでにハンドくんがギルドの部屋をとってくれた」


〖 あの3人は町までの同行者です。

それ以降は関係ありません 〗


ああ。やっぱり。

『寄生パーティ』なんだね。


『気付いていましたか』


うん。私たちのことを知ってるけど、上辺だけのようだし・・・

だいたい、『魔物が近くまで来た』と知っても武器を構えようとしない。

・・・魔物に追われて逃げたというのにね。


「ご主人。ギルドで所持アイテムの売却と買い物をしたいのですが宜しいでしょうか?」


ああ。3人の様子が変わったな。

スゥに目をやると、背後を気にしているようだ。


「そうだな。

オレは専用のアイテムボックスを持ってるが、スゥたちはないもんな」


その一言で、さらに気配が変わったようだ。


「スゥ。昼休憩にするぞ。

ハンドくん。この先に広場があるけど・・・」


〖 広さは十分です。

結界は私たちだけ張ります。

連中は『無関係』ですから甘やかす必要はありません 〗


「師匠。結界を張る前に、彼らに『事実』を伝える時間を下さい」


〖 分かりました。

ですが、『理解出来るまで説明しよう』と思わないように。

足りない頭では、何を言われているのか分からないでしょう 〗


「はい。無駄な努力をせず、頃合いを見て切り上げます」


最近、スゥたちが『ハンドくん化』してる。

たくましいというか、丸投げしちゃっても安心して任せ・・・られるのは、まだスゥだけだな。


『ですが、成長は見られています。

あとは経験でしょうね』


スゥは『村長の孫』らしい。

ただし、伯父が『次期村長』になるそうだ。


「だから、私は『守護者』になりたい」


そのために、スゥは鍛錬を頑張っている。

・・・時々、ハンドくんに止められているが、それで『自分の限界』を把握しているようです。

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