第211話
宿屋の部屋に戻ると、ハンドくんから〖 デザートはどうしますか? 〗と聞かれた。
たべる〜。と答えると、すぐに杏仁豆腐が差し出された。
杏仁豆腐を食べながら「3人は?」と聞くと、シーナからの『お説教』と『お勉強』が始まっているらしい。
ハンドくんたちは、部屋に戻ってすぐに飾り紐を武器に取り付けてくれたそうだ。
シーナが選んだ紐の色は・・・『セルヴァンの瞳の色』だった。
心の片隅に『残っていた』のだろうか。
〖 茶色はルーナの武器に。赤はスゥの武器に、それぞれ取り付けたようです 〗
〖 茶色は『獣化』したセルヴァンと同じ色ですね 〗
〖 赤はスゥの『好きな色』だそうですよ 〗
「良かった〜。スゥの『前』のことがよく分からないから、赤色で良いのか心配だったんだ」
他の2人のことはまったく知らない。
でもルーナの場合は、シーナが選んだ時の様子から『セルヴァンの色』でいいと思った。
ただ・・・『スゥのこと』は何も分からなかった。
〖 それでいいんですよ 〗
〖 彼女たちは『新しい生命』を生きているのですから 〗
「新しい、生命・・・」
〖 そうです 〗
〖 今は『好きな色』でも、成長して『たくさんの色がある』ことに気付いたら、変わっていくと思いますよ 〗
〖 それでも『好きな色のひとつ』となるでしょうね 〗
・・・そうだね。
でも『ゴール』で『待ってる』よね。
ハンドくんは黙ってさくらの頭を撫でる。
さくらの『さみしい』というココロが少しでも軽くなるように。
ハンドくんが持つ『パーティ用アイテムボックス』から、新しい寝袋を出してもらい床に広げる。
やはり『薄い素材』だ。
これでは下の岩や地面の隆起物で『寝づらい』だろう。
床に広げたままの『おもちゃブロック』の上にタオルケットを敷いて寝ているようなものだ。
ハンドくんから出してもらった私専用の寝袋はやはり『特別製』らしく、どんな場所でも『布団の中』で寝ているように快適だった。
もちろん寝るときは『ダッちゃん』も一緒のため、少し大きめだ。
休憩場所にはハンドくんが結界を張ってるけど、寝るときは更に『私の周り』に結界を張ってくれる。
それは私が『安心して眠れるように』という配慮からだ。
結界内で過ごしていると、スゥとルーナはしょっちゅう飛んだり跳ねたり『組み手』をしたり
大人しく出来ないのだ。
『子供だから仕方がない』とは思うが、体力がありすぎるのだ。
逆に『移動中』は席で大人しくしている。
『慣れない鉄の箱の中』では『緊張状態』なのだ。
ただ、さくらは運転をしている。
出来る限り、さくらが疲れないようにハンドくんは気にしている。
さくらも『気を遣って』運転しているのだ。
『乗車初心者』の3人が、鉄の臭いや揺れで『車酔い』をしていないか、座っているだけでも疲れていないか。
そして、さくらの愛車はエンジンをかけてから2時間すると「長時間の運転、お疲れ様でした」と『休憩』を促してくる。
その度にハンドくんが周辺の『休憩に最適な場所』を選んでくれる。
そして周辺に結界を張ってくれるため、3人は鍛錬や魔法の練習に取り組み、私は『
途中で『ランチタイム』を挟んで、3人は再び鍛錬か魔法の練習で、私は『シエスタ』。
ハンドくんが私の周りに結界を張って『温度調節』もしてくれるから、眠りやすい温度でぐっすり。
そして起きたら『おやつタイム』。
再び車を2〜3時間走らせたら、ハンドくんが見つけてくれた場所で一泊。
シーナは「お疲れでしょう。先にお休み下さい」と私を先に寝かせてくれるけど、寝袋に飛びついて寝かせてくれないのが『夜ふかし魔人』たちだ。
一度、シーナが2人に『おしりペンペン』をしてお説教をしたことがある。
ハンドくんが結界を張ってくれたと同時に、静かになった空間が心地良くて眠気に誘われるまま寝ちゃったけど・・・
スゥとルーナは一晩中、シーナに『正座でお説教』を受けていたそうだ。
その日は『私の休憩』と称して移動はナシにしようとしたが、「私たちは2〜3日の徹夜なら平気です」とシーナに言われて『北の寒村』へ向かった。
寝不足が功を奏したのか、私が村の人たちと話し合って『『銀馬亭』との代理契約』をしている間、大人しく待っていられたらしい。
「大した『おもてなし』も出来ず・・・」
「
村の人たちに頭を下げられたが、此方が突然押しかけたのだ。
そのため『早々に辞する』ことにした。
早く『今日の宿泊場所』に行って、3人を休ませたかったのもあったが。
「・・・ねえハンドくん」
「この寝袋って『底が分厚いの』ってないのかな?」
〖 ルーナの場合、『寝苦しい』のではなく『寝相が悪い』だけです 〗
〖 彼女たちは、いまは『ある物に慣れる』ことが大事です 〗
〖 この先、『不便』に慣れないと困るのは彼女たちですよ 〗
「・・・私も『不便』に慣れた方がいい?」
〖 それは『私たちの世話にならない』という意味ですか? 〗
「え?ちがう!ダメ!いなくなっちゃダメ!」
涙目のさくらが、慌てて両手でハンドくんにしがみつく。
他のハンドくんたちがすぐにさくらの頭や背中を撫でて慰めるが、さくらは必死にハンドくんを掴んで離さない。
さくらのココロの中は『ひとりにしないで!』という思いでいっぱいだ。
〖 さくら。大丈夫ですから落ち着いてください 〗
〖 私たちは『いつも一緒』ですよ 〗
〖 もちろん『いなくなる』ことはありません 〗
〖 ちゃんと『約束』しましたよね? 〗
「・・・でも・・・『世話をしない』って」
〖 さくらは『自分で何でも出来る』でしょう? 〗
〖 ですから、たまには『自分で
〖 その時は『別荘』に移ります 〗
〖 さくらはまだ、『この世界の道具』に慣れていませんからね 〗
〖 『その点』は絶対に譲りませんよ 〗
「・・・ハンドくんも一緒?」
〖 当たり前ですよ 〗
〖 もしかして『ひとり』で別荘に『引きこもる』つもりですか? 〗
「・・・『ハンドくんも一緒』じゃなきゃヤだー」
ポロポロと涙を流すさくら。
掴んでいた手のチカラが緩んで、ハンドくんはさくらの頭に移動して優しく撫でる。
〖 私も『さくらと一緒』じゃないとイヤです 〗
〖 だいたい、こんな『泣き虫さん』を置いて
「ハンドくんが『泣かした』んだもん」
〖 はいはい。『責任』をとって『絶対にさくらから離れません』から 〗
〖 ちゃんと『覚悟』してて下さいね 〗
「・・・・・・ちょっとでも『離れた』ら『泣く』からね」
さくらの『可愛い脅し』に、ハンドくんは『さくらへの愛しさ』を
もちろん、ハンドくんはさくらから離れる気は毛頭ない。
『さくらから離れる理由』がないのだ。
逆に『さくらから離された』時に、さくらは生命を狙われた。
そのため創造神からは「さくらを守るためなら『どんなこと』をしても良い」と言われている。
もちろん『さくらが悲しむ』から『
しかし、さくらに手を出そうとした者に『手加減はしない』。
する必要はない。
する気なんて一切ない。
さくらに手を出した時点で、万死に値するのだ。
いや。さくらに『目をつけた時点』で『生きる資格はない』のだ。
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