第154話
「『なぜ』って言われても・・・ねえ?」
「ああ。オレたちはセルヴァンから直接謝罪されたんだ」
そう。
ボルゴたちが『国外追放』された直後に、セルヴァンは被害を受けたすべてのマヌイトアに足を運び、説明と謝罪をして回ったのだ。
だから逆に『セルヴァンの子供たち』がその事を知らなかったことに驚いていたのだ。
しかし、当時の彼らはまだ幼かった。
末のアムネリアがヨルクたちの『ひとつ上』。
長子のカトレイアでも『
当時のことをセルヴァンたち大人から聞かされていなくてもおかしくはないだろう。
実は独自で調査していたセルヴァンは『獣化した獣人が村やマヌイトアを襲っているのではないか』という仮説にたどりついた。
しかしその仮定を証明する『証拠』も『証人』も見つからなかった。
襲撃は人々が寝静まった深夜に起きていたのだ。
そのため『目撃者』が極端に少なく、目撃者の証言も「暗闇で姿が分からなかったが、目だけが異様に光っていた」というものだった。
だが、その証言が『魔獣以外の襲撃』を示唆していた。
本当に魔獣の襲撃だったら『暗闇で姿が見えない』ということはない。
何故なら、魔獣の体は『闇色』だが『暗闇でもぼんやりと青白く光っている』のだ。
それは元々魔獣や魔物は『濃い瘴気を吸った結果、姿を変えたモノたち』だからだ。
そのため『体から瘴気が漏れ出て青白く光っている』。
ただ、その
そして『襲撃事件』の犯人を『獣人』に絞って調査を開始した直後にボルゴたちがセルヴァンを襲ったのだ。
それはもう「自分たちが『犯人』です」と自白したようなものだ。
・・・それも『生存者』を口封じするために皆殺しにして。
ボルゴたちは『何の罰も受けず』に国外追放された訳では無い。
獣化が封じられ、他者を加害すればその何倍も自らが傷つく『罰』が課せられた。
たとえ相手が『魔獣』であっても、傷つければ自らに何倍にもなって返ってくるのだ。
『追放者』はボルゴを入れて10人だった。
先日捕縛された時は8人に減っていた。
どうやら2人は『罰』で生命を落としたようだ。
そのためボルゴたちは『人身売買』という悪行に手を染めたのだろう。
それも『実行犯』を別に仕立てて、自らは直接手を下さずに。
だが、ボルゴたちはもう此処にはいない。
さくらをターゲットにした結果・・・
神の怒りに触れ、ハンドくんたちの逆鱗に触れた。
意識を残したまま、その身を何時間も『業火の竜巻』で焼かれ続けた。
火は『浄化』を意味する。
連中の『いくつ生命があっても償いきれない罪』を『浄化』で少しは軽くしたのだ。
そして最下層の大陸に『記憶を消された犯罪奴隷』として送られた。
そして死後は『先に生命を落とした2人』同様、『生前の記憶』を残したまま『家畜』として生まれては
ヨルクは『言える範囲』で話をした。
『ハンドくんの制裁』は『神の制裁』と変えて。
『下層大陸』ではなく『何処かの洞窟にある最深部で一生罪を償っていく』と変えて。
「ヨルク・・・貴方、その『制裁の場』に・・・」
「ああ。立ち会った」
オレやジタン、セルヴァンとドリトス様も一緒だ。
おそるおそる聞いてきたベロニアに答えるヨルクにジタンは頷いて同意する。
「それっていつ?」
「さくらが熱を出した日」
ヨルクの言葉にヒナリが「そういえば、あの時みんな出掛けたわね」と納得する。
「ヒナリは行かなかったの?」
「ええ。さくらが寝てたから」
ベロニアに聞かれたヒナリは『至極当然』という表情で答える。
「私たちは誰もさくらを1人で残したりしないわ」
そう。
あの広い部屋にさくらは『ひとり』でいた。
それを聞いて以降、どんな短時間でも『さくらを一人にしない』と心に誓った。
ヨルクやヒナリは、ドリトスやセルヴァンのように役職を退いても様々な『残務整理』がある訳ではない。
あるのは『屋上庭園』と『温室』にある植物の世話だ。
そこには『さくらの世界』の植物が、ジタンとヨルクの研究のために置いてある。
そのため、さくらを連れて行くとその植物の話や歌を聞かせてもらえるメリットもある。
逆にデメリットは、話に夢中になり『世話が
そしてハンドくんに『お仕事のジャマをしてはダメですよ』と頭を撫でられながら
その後ろで、ハリセンを受けるヨルクとヒナリだった。
移動した芝生に座ったさくらは、妖精たちと一緒に歌ったり遊んだりして楽しそうにしている。
その様子を微笑ましく眺めていると、『手が止まっています』と再びハンドくんにハリセンを受けるのだ。
「そうですね。・・・今もセルヴァン様とドリトス様がおそばに?」
「いえ。今日は『神々』がご一緒に」
「今日は皆様ご一緒にリビングで過ごされてらっしゃるのですか?」
「ええ。セルヴァン様もドリトス様もお忙しいみたいで朝からいらっしゃらないの。だから、私たちが帰るまでは皆様がさくらのそばでお過ごしになられているわ」
ジタンとヒナリの会話にシルバラートたちは目を丸くする。
2人は『神々』が一緒にいるのが当たり前のように話をしているのだ。
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