第117話
ドリトスに支えられながら足を交互にゆっくり動かして『足踏み』をする。
足の裏でタタミの感触を確かめたりしているとハンドくんから『そろそろ座ってください』と注意される。
「さあ。さくら。少し休もうかね」
「はじめから無理をしたら、また熱を出して寝込んでしまうぞ」
ドリトスに止められて、近付いて来ていたセルヴァンには抱き抱えられてソファーで『膝だっこ』をされてしまう。
さくらは「うー。まだやりたい」とワガママを言うがセルヴァンに抱き締められてドリトスに頭を撫でられて大人しくなる。
2人はワガママを言うさくらにひと言も言っていない。
ただ黙ってそばにいるだけだ。
「・・・今日はもう『おしまい』?」
「そうだな」
「・・・また明日?」
「そうじゃな」
さくらは自分を納得させるためか、2人に確認していく。
「お昼を食べたらハンドくんたちと『夕飯作り』をするんじゃなかったかね?」
「疲れて眠ってしまったらそれも出来んぞ」
『それ以前の問題ですね』
『さくらには頑張ったご褒美として『10時のおやつ』を用意したのですが「10時のお昼寝をするからいらない」のでしょうか?』
「ダメー!いるー!寝ないもん!」
『それでは
ハンドくんたちが大きな箱を2つ見せる。
途端にさくらの目が輝く。
「アイス!」
『ソフトですよ』
「じゃあコッチ!」
さくらは『ワッフルコーン』を指差す。
ハンドくんとの会話中に座卓の上が片付けられていく。
そしてさくらはドリトスとセルヴァンの間に座椅子が用意されてそこに座る。
するとハンドくんがソフトクリームを持って現れる。
『バニラです。トッピングは何がいいですか?』
「カラースプレー!」
ハンドくんがソフトクリームに色とりどりの小さなチョコレートを振りかける。
「わーい!ありがとうハンドくん!」
両手で受け取ったさくらはそのままパクリと口にする。
「おいしー!」
満面の笑みを浮かべるさくら。
他の4人にも同じバニラソフトが出される。
『今日はバニラしか用意できませんでしたが、後日には様々な味のソフトをお出しします』
「なんでも?」
『はい。チョコやストロベリー、ゴマや抹茶など準備しています』
「コアラやゾウさんのソフトは?」
『ご希望とあらば』
「ハーイ。食べたいでーす!」
『分かりました。後日お作りします』
動物園でよく食べていたアレンジのソフトが食べられると知り「ヤッター!」と大喜びのさくら。
そんなさくらの頭を優しい表情で撫でるドリトス。
セルヴァンは「また『頑張る楽しみ』が増えたな」と笑う。
その様子を向かい側に座るヨルクとヒナリは黙って見ていた。
さくらがハンドくんたちに助けられながらも立ち上がった時は驚いたし嬉しかった。
そのため『筋力がなくて長くは立てない』と思いもよらなかったため、さくらがバランスを崩して倒れるのを見ているしか出来なかったのだ。
ドリトスが瞬時に立ち上がり、さくらを支えられたのは『動ける体勢』をとっていたからだ。
セルヴァンもすぐに動いたが、ドリトスより出遅れた形になってしまっただけだ。
ドリトスとセルヴァンは
それは今みたいに『何気ない時間』であってもだ。
そのため
2人はさくらと会った時から『さくらの守護者』としてそばにいる。
だからこそさくらを無条件で可愛がるのだ。
それこそ『目に入れても痛くない』ほどに。
そんな2人だから、さくらは無邪気に甘えていられるのだ。
ヨルクとヒナリはあれほど無邪気にさくらから甘えられたことがない。
さくらは2人を『歳の近い友だち』としてみている。
それが理由なのだろうか。
ドリトスやセルヴァンみたいに甘えてもらえないことを2人は気にしている。
そしてヨルクはさくらに構いすぎてしまうため、セルヴァンやハンドくんたちに叱られてしまうのだった。
ヒナリの場合は逆に『次期族長』として大人たちの中で育ってきた事もあり、同年代のさくらとどう接したらいいのか分からなかった。
ただヨルクがさくらと仲良くしているのを見ると気分が『ムカムカ』してつい張り合ってしまう。
そのため最近ではヨルクと一緒にヒナリも説教を受けるようになってしまった。
・・・困ったもんだ。
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