第95話
「あら?さくらは『そばにいて欲しいって誰のことをさしてるの?』って聞いただけよ」
女神に指摘されて目を見開いたヨルク。
ヒナリとドリトスは女神の言葉に頷いている。
ヨルクはどうやら『ジタンの存在』を忘れていたようだ。
そして『
『・・・パァパぁ』
涙目のさくらに『おねだり』されて突き放せるような者はここにはいない。
ヨルクも筋金入りの『さくらバカ』なのだ。
「ん。分かった。ちょっと行ってくる」
さくらの頭を撫でて額にキスをしてからヨルクは寝室を出た。
そして『激怒真っ最中』のセルヴァンを『言葉ひとつ』でアッサリ鎮めたのだった。
「もう大丈夫みたいね」
外の様子を感じ取っていた女神は、さくらを抱きしめてからドリトスに預けた。
・・・ありがとう。エアリィ。
心の中でお礼を言うと「どういたしまして」と頭を撫でてから姿を消した。
ドリトスに抱かれてリビングへ向かう。
座卓近くの畳に座ったドリトスに『膝だっこ』されているとすごく安心出来るのは何故だろう?
「さくら。さっきは『頭がクラクラする』と言っておったが。今はどうだね?」
『うーん・・・だいじょーぶ?』
私の『疑問符付き』の答えに苦笑するドリトス。
ヒナリが心配そうな表情で頭を撫でてくれる。
「さくらの『大丈夫』は信用出来ない」
『それ。前にも言われたー』
頬を膨らませるさくら。
さくらが高熱を出していた時のセルヴァンの言葉だ。
・・・あれが『呪い』のせいだと気付かなかった。
思い出すだけで後悔が押し寄せる。
『ドリぃ?』
心配そうに見てくるさくらの額に手をあてる。
簡単な『治癒魔法』をかけると、さくらは目を丸くした。
「どうかね?」
『スッキリした〜』
「良かったわね。さくら」
『うん!ありがとー。ドリぃ』
笑顔で喜ぶさくら。
ヒナリも嬉しそうにさくらを撫でる。
『クラクラする』と言ってたから目眩だろうと思ったが、どうやら『その通り』だったようだ。
『大丈夫』以外の言葉も引き出せてドリトスは安心したのだった。
「おっ。さくら〜。ただいま〜」
テラスからヨルクが入ってきた。
さくらの顔を見て両腕を広げて抱きつこうとしたがヒナリにジャマをされる。
弱っているさくらのために『
「ちゃんと
ヨルクはヒナリに向かって叫ぶ。
しかし、『部屋の外』で
ハンドくんがハリセンを持って現れるとヨルクはすぐに自分に魔法をかける。
「改めて・・・さ〜くら〜」
ヨルクがドリトスに抱かれているさくらを抱きしめて頭を撫でる。
『ヨルク。セルヴァンは?』
抱きしめているため、さくらの『声』が分からないヨルク。
「ヨルク。さくらが聞いておるぞ」
ドリトスに言われてさくらに「ゴメン!何だった?」と聞き直したが、頬を膨らませてプイッと顔を逸らされて慌てる。
「ヨルク。セルヴァン様の事で『報告』があるでしょ」
ヒナリがヨルクに助け舟を出す。
「ああ。セルヴァンからさくらに
「さくらを抱きしめる前に、それを先に言いなさいよ」
ヒナリに頭を
『セルヴァン。帰ってくる?』
「ええ。心配しなくても大丈夫よ」
『でも・・・『新人さん』といたら、また『怒る』んじゃないの?』
『それじゃあ、セルヴァンがずっと帰って来られないよー』と涙を浮かべて心配するさくらの言葉に3人は顔を見合わせる。
確かに『ありえる』ことだ。
さくらは知らないが、セルヴァンは『鬼族長』の異名を持っていた。
『族長』の地位を退いたからといってすぐに『角が取れて丸くなる』はずもなく・・・
怒気だけで部下を気絶させた『鬼』は今でも健在だ。
特にヨルクは、激怒して手が付けられないセルヴァンと会ってきたばかりだ。
『さくらの
『『避雷針』いる?』
『コレがあるから
ハンドくんはスチャッとハリセンを手にした。
それを見て笑い出すさくら。
ハンドくんとさくらのやり取りを笑って見ているドリトス。
顔面蒼白のヨルクとヒナリはお互いに目線で会話中。
「ドリトス様。セルヴァン様の所へ行ってきます」
「ああ。『気をつけて』な」
「・・・はい」
『まぁま〜。大丈夫?』
さくらが心配してヒナリに声をかける。
そんなさくらに笑顔を向けて「大丈夫よ。ありがとう」と頭を撫でる。
『セルヴァンに『早く帰ってきてね』って伝えてね』
「ええ。真っ先に伝えるわ」
さくらの頬にキスをしてからヒナリは部屋を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。