第197話 保持者
「リーフ、大丈夫?」
朝、いつまでも起きないリーフを気遣ってアトラスが声をかけた。
「うん、大丈夫・・・。ちょっと体が重くて。」
リーフはのろのろと上半身を起こす。
「早く支度しろ。赤の欠片を集める目標は今度の満月までだ。それがタイムリミットだろう。」
ダグラスはマントの紐を締めながら言った。
「次の満月・・・あと30日・・・」
ため息をつくリーフ。(あと、何人の人とこんなことをしなくちゃいけないんだろう・・・)
必要な赤のドラゴンの欠片は全部で14と1つ
1つは青のドラゴンの涙が入った欠片で、リーフの中にもともとある物。
残り14個
***集まった欠片***
サスケ(クロード)
怪鳥ジャック
ヒョウガの国の王ブルー
ツルギの国の第1王子ダグラス
囚われのアトラス
リーフの右手に一つ
***欠片の保持者***
ツルギの国の第2王子アーサー
ホシフルの国の第1王子ララ
ホシフルの国の第2王子マーリン
双剣のシャルル
シロクマのベイド
森の大賢者クルクル
***持ち主不明***
2つ
ここまでまとめて、アトラスが首を振った。
「おかしいな。キミはすでに全ての保持者と出会っている。」
彼の中には古の魔法使いの脳みそも入っているのだ。
「すでに出会っている人・・・?」
「すべての欠片の気配がするんだ」
リーフは思い返してみた。きっとそれは特別な能力を持っている人なんだろう。
「ロック・・・クルト・・・」
「リーフ、その人たちの姿をなるべく鮮明に頭に描いてみて」
アトラスがリーフの手を握り目を閉じた。リーフは、アトラスに噛まれた首筋と、おへその辺りがが熱くなるのを感じた。
(アトラスさんと繋がっている・・・)それほど不快ではない、心の流れ。
リーフは言われた通りに、ロックとクルトの姿を思い描いた。
クルトは簡単に思い出せた。優しい、乾草の匂いがする王子様。きっとツバサの国の次の立派な王様になるだろう。
しかし・・・困ったのは紅い髪の少年。明るくて陽気なロック。しかし彼は、何らかの理由でリーフとジャックを弓矢で殺そうとした上に、姿を変えてサスケにリーフを暴行させた。
楽しい旅を共にしたこともあるのに・・・。彼のことを考えるとリーフの心は暗くなる。
「リーフ・・・!」
妙に真剣な声でアトラスが言った。
「キミは知らなかったの・・・?」
「え・・・?何をですか・・・?」
「いま、キミが思い出していた紅い髪の少年は・・・・。我が子孫にしてダグラスとアーサーの弟。
ツルギの国の第3王子だよ」
「・・・えーーーーーっ!!!」
「ロックのことを知っているのか?」とダグラス。
「・・・はい・・・!ブルー王のヒョウガの国で会いました。さすらいの旅人だって・・・サスケさんも一緒でした・・・」
「ロックと会ったのか。あいつは・・・あいつは、赤の欠片の保持者ではないだろう。」
アトラスは頷いた。
「クルトという男の子も違いますね。」
「え、じゃあ・・・だれ・・・?今までもう出会ってる、特殊な能力を持った人・・・。」
リーフの頭の中にパッと浮かんだのは、瞬だった。
パッチの薬で自由を奪われ、乱暴されている自分の姿。
心の中をのぞかれたようで、とっさに握っていたアトラスの手を放す。
「・・・いろいろ、辛い思いをしたんだね、リーフ。」
アトラスは優しい水色の瞳でリーフを見つめた。
「アトラスさんには隠したって無駄なんですね。ボク・・・自分の力のなさが恥ずかしいです・・・。」
「そんなことないよ、リーフ。キミは自分が思っているより、ずっと強い。どんな時だって大事なことを見失っていない。」
「アトラスさん・・・。」
リーフは泣きそうになった。そう言ってもらうことで、(今までのことは、無駄じゃない)と思えたから。
「ところでリーフ、キミの中に出てきたもう一人の男・・・背の高い・・・」
「小次郎さん?」
「ああ、そうだね。彼から赤の欠片の気配を感じる・・・」
「ええっ!だって小次郎さんはこの世界にいないのに・・・!」
そのころ、アーサーはグレンの国の北の町、シンジュの町でいろんな人々に話を聞き終わっていた。
ジャックを置いてきた酒場に戻る。
「ジャック、リーフの噂は聞けなかったが、この国の南の方に見たこともないような化け物が増えているらしい。黒のドラゴンの影響だとすると、リーフもその付近にいる可能性が高いだろう。もう行けるか?」
「・・・ああ・・・」
ジャックは少し沈んだ様子だった。
「どうした、ジャック?まだケガが治らないのか?だが、そんなことで参るお前じゃないだろう?」
「・・・・」
「ジャックさん!」
アーサーの背後から可愛らしい声がする。
「フェイリー・・・」ジャックは声の主の名を呼んだ。
少しリーフに似た少女は、アーサーにぺこりと頭を下げる。
「ジャック、まさかお前…?」
「いや、ちがう・・・・!」
「あの!」フェイリーは顔を赤くしながら大きな声を出した。
「あの!私もお二人の旅に連れて行ってください!」
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