第106話 エリーの変身

「よく5日でここまできれいになったねぇ!」

ロックも、スッキリ美しくなったエリー姫に感動した。


「ボクの計算では、姫様がここまで良くなるのに一か月はかかる予定だったんだよ~。解毒の薬草以外に、何か別の力が働いたのかなぁ・・・。まあいいかっ!おめでとっ!」


エリーは少し微笑んだ。艶やかになった短いブロンドの髪が揺れる。


姫を見るクルトの顔は暗かった。

「姫様・・・申し上げにくいのですが・・・。」言葉に詰まる。


「よい、分かっておる。鏡を見た時、わたくしも確信した。

私の父は、王ではないのだな・・・。」


「えっ!」びっくりするリーフ。


「かつて母上の親衛隊長だった、ガランド殿にわたくしはそっくりです。誰が見ても一目瞭然でしょう。

きっと生まれた時からそっくりだったのでしょうね・・。それでも私を生かしてくださったのは、母上の、私と実父に対する愛だと思いたい・・・」

エリー姫はむなしく笑う。



「エリー姫様、どういたしましょうか・・・。そのお姿でツバサの国の者の前に帰れば、皆気づいてしまうでしょうし、かと言って今日中に城まで帰らなければ、姫様が行方不明になったことに激怒している姫様の親衛隊長がツバサの国に知らせてしまいます。これは、実質上のヒョウガの国への宣戦布告となりましょう。」


「クルト、お前はただの馬番にしておくには惜しいですね。どのみち、いつまでもこの洞窟にいるわけにはいかないでしょう・・・。急ぎ支度をしておくれ、早くブルー様の城に帰らなければ。」


その日の夜までに間に合うよう、一行は城へ急いだ。




まだ日が沈む前に、ヒョウガの国の美しい城に着く。

城門に入ると、エリー姫は馬を降りた。


誰もが、その凛とした美しさに目を奪われる。

初めは誰も、それがエリー姫だとは気が付かなかった。ただリーフを出迎えに来たブルーだけが、すぐに姫だと分かった。

「エリー姫・・!?なんと、美しく、健康そうになられましたね・・!一体、何があったのですか?!」

「ありがとうございます、ブルー様。お話ししたいことがたくさんありますわ。でも、ああ、ブルー様ならばきっと、わたくしだとお分かり下さると思っておりました。

やはりあなたは素晴らしいお方、わたくしの目に狂いはございませんね。

今まで、あのような姿でお目に触れていたかと思うの恥ずかしい・・・。

今の私ならば、ブルー様の妻になれるでしょうね?」


ブルーはそばに立っていたリーフを見た。それに気づくエリー。

「ほほ、ブルー様がその娘にご執心であることはあ存じておりますのよ。確かに、今回世話になって分かりました。とても良い娘です。

田舎から買われた娘ではありますが、お望みであればわたくしが侍女としてのちゃんとした身分を与えますので、側室としてお側に置かれるとよいでしょう。」


「そ、側室・・・。」そんなの時代劇でしか見たことない、と思うリーフ。

だがそれは、以前のエリー姫からは考えられないほど素晴らしく寛大な提案だった。


「・・・とにかく今は、姫のことを探し回っている親衛隊長に無事を報告しなければなりません。

不眠不休で探していた兵士たちも休ませてやらねば・・・。そして姫もお疲れでしょう、今はお休みになってください・・。お話はまたのちほど」

エリーが、ツバサの国から連れてきた召使たちは信用できないと耳打ちしてきたので、ブルーはヒョウガの城の召使頭のバニイにエリーの世話を頼んだ。


エリー姫が部屋へ行き、リーフが馬を馬屋へ連れて行こうとしたとき、後ろからブルーに抱き付かれた。

「リーフ・・・」

驚いたリーフが振り向くと、そのままキスをされる。

ブルーは戸惑うリーフを抱きかかえて、馬に乗せると、そのまま自分も後ろに飛び乗り馬を走らせた。

「やめてっ!ブルーどこに行くの?!今帰ってきたばかりで・・・!」

「だまれ・・・」

ブルーの馬は風のように駆けていく。


その様子を見てたロックは、「ひゅ~!やるなぁ!ブルー王は!情熱的だねっ!」と言いながらおもしろがって拍手した。

クルトは眉をひそめたが、何も言わず馬屋へ向かった。


「そろそろ嵐が来るなぁ。ねえ、サスケ?」一人残されたロックは空に向かって独り言を言った・・・。


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