第103話 バナナブレッド

夜の間、エリー姫のことが心配になったリーフは何回も部屋の様子を見に行ったが、もの凄い目で睨まれて追い出されるばかりだった。


サスケが用意してくれた解毒作用があるお茶も、説明してから飲むように進めたが、入れていたコップごと破壊されて部屋の外に捨てられていた。


それが、洞窟に着いた日の夕方から二日間続いた。



「ふぁぁ~・・・眠いなぁ・・・」

朝、大あくびをした後、リーフは広間のテーブルに突っ伏す。

結局姫の様子が気になって、二日間ロクに寝ていない。


「大丈夫?リーフ。無理しなくていいんだよ、ぼくもロックもいるんだから。」

「ありがとう。でも、クルトだってほとんど寝てないじゃない。サスケなんて座ってもないよ・・・。

よく食べてよく寝て、元気があるのはロックぐらいかな・・・。」



「おっはよー!!」

その元気なロックが広間に入ってきた。

「リーフぅ~、お腹すいたっ!」

ぐったりしているリーフにぎゅう~っと抱き付く。

「うう、はいはい・・・。持ってきた食料もあるけど・・・今朝はあの壺で作るかな・・・」

リーフは疲れた体をどっこいしょと起こして、紫の壺を持ってきた。


「何にしようかな」

そうだ、バナナブレッドにしよう。お腹がすいた女子に大好評だったやつ。ほんのり甘くてお腹に優しい味の・・・。


リーフが焼き始めると、洞窟中にいい香りが広がる。

最初の1本はロックが丸ごと独り占めしてしまったので、そのあと3本追加して焼いた。


クルトは「ほんとに美味しいね」とニコニコしながら食べてくれるし、あのサスケもテーブルについてしみじみと食べている。


リーフはダメもとで、バナナブレッドを一切れと、解毒のお茶をもってエリー姫の部屋へ行った。

エリーはぶすっとして窓際のイスに座っている。

入ってきたリーフをギロリと睨むと、呪いの言葉をブツブツつぶやき、手でシッシッという仕草をした。

しかし今回は、バナナブレッドの香りに気付いたのか、ちょっと柔らかい表情をしたように見えた。


「あの・・・、解毒のお茶とバナナブレッドです。エリー姫に元気になって欲しいんです・・・。食べてくださいね。」リーフはトレーを置いて部屋を出た。




いつものようにコップは投げつけられ、お皿はひっくり返っていたが、お茶もケーキも、少し減っているような気がした。

「もしかして、姫、食べてくれたのかなぁ」

嬉しくなるリーフ。

「ボクの計算だと。お茶は7分の1、ケーキは3口食べてますね!」

「ほんと?!やった!」

ロックと手を取り合ってぴょんぴょん跳ねる。

「心配だったんだぁ。エリー姫があのまま何も食べずに飢え死にしちゃったらどうしようって。よかったあ・・・。」

安心したら、もの凄く眠くなってきたリーフ。そのまま気絶するように寝てしまった。

「ありゃりゃ、リーフがんばったもんねぇ。まあ、ちょどいいや。クルトも用事で洞窟から出て行っていないし。

サスケ!」

ロックが呼ぶと、すぐにサスケが現れた。

「リーフを部屋のベッドまで運んであげて」

サスケはリーフを抱きかかえた。軽くて、やわらかい女の子が腕の中でスースー眠っている。

疲れ切っているのに嬉しそうな顔をして・・・。

不思議な感情が芽生えるのを感じた。


ロックはひょいとサスケの腕の中のリーフを覗き込み、服の胸元を大きく開いた。

豊かな胸があらわになる。白い肌に綺麗なピンク色。


「この娘はおいしそうでしょ?ケーキみたいに。

ねえサスケ、今からベッドに行くついでにリーフを抱いて来たら?

ボクの計算によると、サスケはそうしなきゃいけないはずだし。

たぶんリーフは初めてだから、優しくしてあげてね。

あ、これ命令だから。」


ロックの顔からはいつもの幼い笑顔は消えていた。



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