第77話 ベイドの苦悩

「結婚?!」


の話もえらく急だし、「他の男に触れさせない方法」ってのも気になるリーフ。


つまり、あと12人としなくていいってこと?


「まってまって、まず、結婚ってなに・・・」

と言いかけたところで、寝室の扉の向こうで騒がしい音が聞こえてきた。



「離せ、離してくれ!!」

ガッシャンガラガラ、何か物が壊れる音。


「おやめ下さい、ベイド殿!!」

叫ぶ兵士たち、大声の主はベイドのようだ。


「は~な~せ~!!」


ブルーは「ちょっと見てこよう」と言って寝室を後にした。

ベイドのことが気になったので、リーフも大急ぎで服を着て声の方へ行ってみる。


そこには、ベイドが血まみれで大暴れしていた。

シロクマの白い毛が、全身、所々赤い血で染まっている。


「ベイドさん!!どうしたの?!」


「リ、リーフ殿・・・・・・・」

シロクマのベイドはリーフの姿を見て暴れるのをやめた。

そしてボロボロ泣き始める。


「わたくしは・・・こうするしかないのです・・・!

我が王がお妃さまにと決めたお方と・・・できません・・・!」


ベイドは昨夜、ブルーがリーフの寝室に来る前に、ブルーから説明を受けていたのだった。


黒のドラゴンを食い止めるには、赤のドラゴンを復活させるしかないということ。

赤のドラゴンを復活させるには、15の欠片を集めなければいけないということ。

その欠片はリーフの体内に集まり、そのためには赤の欠片を体内に宿す男たちと愛し合わなくてはならないということ。


そして、ブルーだけではなくベイドの体内にも宿っているということ。



「私は考えたのです、ほかに方法はないのかと・・・!出来ることと言えば、私の体内から赤のドラゴンの欠片を取り出すことだけだと・・・!」


それでベイドは、剣で自分の体を突き刺し、欠片を探していたのだった。


「ばかっ、そんなことしたら痛いでしょ?!死んじゃうじゃない!

・・・ボクのことならもう、決心はついてるから大丈夫だよ!もうやめて!」


リーフはなおも自らを刺そうとするベイドの腕にしがみついて止めた。

ベイドは、リーフを傷つけてはいけないとナイフを収める。

「お離しください・・・。リーフ殿の服が穢れてしまいます・・・。」


ベイドが苦しんだのは、彼自身がリーフに惹かれていたからだった。

そして昨夜、ブルーと愛し合ったであろうリーフを見るのも辛かった。

「わたくしの体内の欠片は砕けて全身に散らばっているようです。私が死んだ後、切り刻んで探してください・・・!」

ベイドは自分の喉にナイフを突き立てた。


「ベイドさん!」


「やめないか」

ブルーはベイドのナイフを自分の剣で叩き落とした。

「早まるな、ベイド。大丈夫、他に方法がある。お前は死ななくていい」


ベイドは座り込んだ。

「他に・・・方法が・・・」

「それには・・・、お前も私たちと一緒に旅をしなくてはいならない。明日我が城に向けて出発する。一緒に来い、ベイド。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る