第19話
オークジェネェラルの掛け声で魔物達が大声を上げて向かってくる。
「囲まれるとまずい、止まらず戦うぞ!」
「求めるは火炎。
荒ぶる太陽は空を染め、地を焼き、全ての生命を奪い取る。
今、破滅の炎よ、顕現せよ!
【終焉ノ炎】」
セリィが生み出した火の塊が魔物達を飲み込み、灰にする。
「大回転斬り!!」
フロウは回転し、フロウを囲んでいる魔物を次々と吹き飛ばす。
「衝撃波インパクト! 縮地! 焔剣!」
俺は近接魔法を駆使して移動しながら次々と魔物を倒していく。
「くそ、キリがねぇよ!」
「魔力にも限界がある。長期戦は避けたいな……」
「なかなかしぶといな。ならば、特異部隊行けぇ!!」
その掛け声と共に普通と違う形をしていたり、見た目は変わらなかったりする魔物がたくさん出てきた。
スライムからオーガまで中にはミノタウロスもいる。そのどれもが特異個体と思うと思うとゾッとする。
「変身隊、変身!」
オークジェネェラルがそう言うと、スライム達が変身をする。
スライムは龍のような形になるもの人型になるものなど色々いた。
普通のスライムもこのように擬態するが、そもそもの能力は変わらないので大丈夫なはずだ。
特異個体というのでそもそもの能力が高いのか、擬態したものの能力を手に入れるかのどちらかだろう。どちらにせよ、油断は出来ない。
「全隊、突撃ー!!」
待機していた魔物が一斉に向かってくる。
俺は身体強化で素早さを上げて戦場を逃げ回る。
「防御力移動:全魔物からパーティー皆に!」
俺はここにいる全魔物から防御力を根こそぎ奪い、皆に限界まで付与する。
それでも大量に余るので全て自分に入れる。
「みんなの防御力をSSSまで上げた! 防御は気にせず戦え!」
「ありがとう! 助かる!」
「雑魚は任せて!」
「ミノタウロスは任せろ!」
俺はそう言ってミノタウロスと向き合った。
「ブモォォォォ!!」
ミノタウロスがそう叫ぶと全身の筋肉が隆起し、拳が金属のようになる。恐らく何かのスキルだろう。
そして高速で俺に近づき、凄い勢いで俺を殴る。
ドォォォォン!!
パンチの衝撃で地面にクレーターができる。
これは防御力がSでも、いやSSでもかなりのダメージを受けただろう。
だが、俺の今の防御力はオーバーSSS。
全くダメージは無い。
「ブモ?」
自分の拳をまともに受けて立っている俺を見てミノタウロスは信じられないといった様子でこちらを見ている。
「残念だったな、俺には効かないんだ。付与魔法エンチャント:ブレイズ」
そう言って俺は剣に炎を纏わせる。
ミノタウロスの顔が恐怖に染まる。
「焔剣!」
俺はミノタウロスに剣を振り下ろす。
が、ミノタウロスの強靭な筋肉とそもそもの防御力で大したダメージは与えられない。
そりゃそうだ。
カッコつけて「俺には効かないんだ」とか言っていたが、攻撃が効かないだけで攻撃力は標準のBなのだ。
ミノタウロスはそこまでダメージが無いことに気づくと安心したようにこちらを向き、背中に背負っていた斧を手に持った。
能力変更を使えたら良いのだがそうすると防御力が下がってしまう。
すると素早さが遅い俺は攻撃を避けられずに攻撃を受けてしまうのだ。
それじゃまずい。
「ブモォォ!!」
ミノタウロスは今度は斧で斬りかかってくる。
「斧はこう滑らせるように受け流して……」
俺は剣を滑らせるように受け流し、勢い余ったミノタウロスに足をかけて転ばせる。
「付与魔法エンチャント:ウインド」
今度は剣の速度と切れ味をあげる風を剣に纏わせる。
「首元なら効くかな? エアリアルソード!!」
俺は転んでいるミノタウロスの首筋を狙って斬撃を放つ。
今度は少し傷を付けることができた。
よし、この調子! じゃねぇな、このままだと長期戦になってしまう。
誰か手伝ってくれるやつは……いないな。
それに任せろとか言っちゃったからなー……
「ブモォォ!」
ミノタウロスはようやく起き上がり、再び斧を持った。
「斧の動きはフロウで慣れてるから使っても無駄だぞ」
するとミノタウロスは腰を大きく捻り、なんと斧を投げてきた。
「くっ、アイギスの盾!」
俺は光の盾でギリギリ斧を防ぐ。
危なかった、まさか投げてくるとは思わなかった。
「ブモォォォ!」
ミノタウロスは後ろに回り込んで殴りかかってくる。
「固定魔法展開【リフレクト】」
俺はミノタウロスのパンチの衝撃をそのままミノタウロスに返す。
ミノタウロスはその衝撃に吹き飛ばされる。
「付与魔法エンチャント:ウインド・【風の衣】」
俺は付与魔法エンチャントの応用で自分に風を纏わせて素早さをあげる。
少し怖いがここで決める!
「能力変更:防御力を攻撃力に!」
俺は防御力をほぼ全て攻撃力に変更し、高速でミノタウロスに近づく。
「ブモォォォ!!」
ミノタウロスは近づくなとばかりに腕を振るう。
俺はそれを周囲の風を操作して避ける。
「閃光フラッシュ! 衝撃波インパクト!」
俺は光で視界を奪い、その隙に足に衝撃波を当ててバランスを崩させる。
そしてミノタウロスが踏ん張ろうとしている足元を土魔法を発動し、穴を作る。
「ブモォォォ!?」
ミノタウロスは完全にバランスを崩し、転けた。
「終わりだな。エアリアルソード!!」
俺は超高速で剣を振り下ろし、ミノタウロスの首を飛ばす。
「これでよしっと! ん?」
強い魔力反応があったのでそちらを見るとミノタウロスの首が発光していた。
「まさか、自爆か!? なら!」
俺はミノタウロスの首を掴み、敵が一番集まっている場所に投げ込む。
「爆発するぞー! 逃げろー!」
俺はそう叫んで皆に伝える。
投げ込んだ所にはレインがいた。
「レイン、逃げろー!! その首、自爆するぞ!」
「は!? なんてもの投げつけてくれるんだよ!」
レインは急いでその場から離れる。
周りの魔物達もそれに気づき、逃げようとする。
「逃がさない! 影縛り!」
ナージャが周りの魔物達を魔法で動けなくする。
「もうちょっと集めた方がいいわね。蟻地獄!」
セリィは土魔法で近くにいる魔物達をミノタウロスの首の近くまで集める。
「爆発するぞー!」
ミノタウロスの魔力反応が急激に上がった。
その瞬間、
ドォォォォン!!!!
ミノタウロスの首を中心に大爆発が起こった。
「ひえー、凄い威力だなー」
「あ、危なかった……」
レインが息を荒らげて横に立っていた。
「危なかったな。大丈夫だったか」
「お前のせいで危なくなったんだけどな!」
「でも、倒せたぜ。見てみろよ」
爆発があった方を見てみると、綺麗な草原が焼け野原となり、爆発の中心部では今までと比べ物にならないほどのクレーターが出来ている。
「ふー、危なかったぁー」
「死ぬかと思った……」
「びっくりしましたわ……」
「お、みんなおかえり」
「ただいま。で、残りの敵は?」
「あとはオークジェネェラルとスライムドラゴンだな」
「もうそんなに減ってたの?」
さっきの爆発で沢山倒せたのも大きいがあれで倒せたのは全体の3割程だ。
それ以外は全て皆が倒したのだ。
防御に気を使わなくてもいい分、ガンガン攻撃出来たかららしい。
「スライムドラゴンは私達に任せて。レイン様、手伝ってください」
セリィがレインの腕を掴んでそう言う。
絶対そっちが目的だろ。
「わかった。ならフロウ、2人でオークジェネェラルだな」
「まぁ楽勝だろ。何せ今の俺の防御力はSSSだからな!」
「だからって油断するなよ? 毒とかは防御力関係ないんだから」
「分かってるって! 行くぞ!」
「おう!」
俺は剣を構え、オークジェネェラルと向き合った。
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