第5話

――スカルキングサイド――


「なんかあっちの方から凄い大きな音が聞こえたんだけど……」


「雷も落ちてたよね……?」


「ガルムが本気出しとるな……」


「ガルムさんの本気!? 洒落にならないじゃん!」


「ま、大丈夫だろう。さぁ、稽古を始めるぞ!」


「「はい!」」




――ガルムサイド――


「まずは身体強化からやるとするかの」


「身体強化? どうやって?」


「魔力を体中に行き渡らせるのじゃよ」


「魔力……んー、わからん!」


「お前達、ワシと手を繋げ。魔力を少し流してやるからそれで感覚を掴みなさい」


俺達は言われた通りにガルムと手を繋ぐ。


「行くぞ……それっ!」


「おおっ!」


「なんか来た!」


体の中で何かが蠢いている感じがする。この何かが魔力か。


「わかったかの?」


「まぁ大体は」


「じぁ自分で操作してみなさい」


「「はい!」」




「ぐぬぬぬぬ……むほっ!」


「ぎょええええええ!! はっ!」


「別に変な声は出さなくて良いんじゃぞ……?」


「ぐおおおおお! 何か出来てきた気がする!」


「俺も!」


「なら身体強化してみるか」


「どうやってやるんですか?」


「魔力を体中に行き渡らせるのじゃ。満遍なくな」


「魔力を……行き渡らせる……」


「出来たか?」


「出来た気がする!」


「うーん、何となく」


「それでジャンプしてみなさい」


「ジャンプ? ほっ!」


ガルムに言われた通りにジャンプするといつもの倍以上跳ぶことが出来た。


「うおっ! すげぇ! めっちゃ跳べるぜ!」


「よし、使いこなせてるな。それであの木を殴ってみなさい」


「うりぁぁぁぁ!」


くらえ! 黄金の右!!


ゴン!!


「痛えええ!!」


俺の黄金の右は砕け散った。


さよなら右手……


「ほっほっほ、このままじゃと無理なんじゃよ」


「なぜそれをやらせたんですか……?」


「まぁ、細かいことは気にするでない。今度は殴る手に多めに魔力を流してみなさい」


ひでぇ。


「ドンマイ、アル。俺がやって見せるぜ!」


「俺だって!!」


俺は右手に多めに魔力を流す。


「今度こそおおお!!」


バキィ!!


俺の黄金の右は今度は木を折った。


が、


「痛ええぇぇ!!」


「ぐあああああああああああ!!」


俺もフロウも木を折ることは出来たが手が凄く痛い。


「ただ力を強くするだけじゃいかんのじゃ。それに耐えられるようにならないといかんのじゃよ」


「先に言って欲しいです……」


「身をもって体感して欲しかったんじゃよ」


ガルムがほっほっほと笑う。こっちは笑い事じゃねぇよ。


「じぁ次は硬化じゃな」


「それはどうやるんですか? 」


「魔力を表面に出して纏わせて硬化するイメージをする」


「うーん……難しい!」


「まず、魔力を表面に出す訓練からじゃな」


「「はい!」」





――スカルキングサイド――


「お前達はいかに魔法を早く撃てるかが肝心になってくる。わかるな?」


「「はい!」」


「魔法を早く撃つ方法は2つある。ナージャ、それは何だ?」


「えっと……無詠唱と早く詠唱すること?」


「そうだ。上級魔法までなら無詠唱で出来る。神級だけは無理だ」


「え、上級まで出来るんですか?」


「王国魔術師でも中級って聞いたけど……」


「出来る。まぁとりあえずお前達には中級まで出来るようになってもらおう」


「出来るかな……」


「ナージャ、頑張ろう!」


「うん!」


「よしまずは初級から行こうか」


「「はい!」」




「よし、今日はここまでじゃな」


「ありがとうございました!」


「おーい、二人ともー!」


ナージャとセリーナも稽古を終えてこちらにやってきた。


「どうだった? ガルムさんの稽古は」


「めちゃくちゃ厳しいし、痛い」


「そうなんだ……お疲れ様」


「スカルキング、その子達はどうだった?」


「才能がある。強化だけで初級魔法の無詠唱と同時使用を成功させていた」


「それは凄いな。この4人は強くなるぞ」


「ふふ、当たり前よ!」


セリーナはとても自慢げだ。腕を組んでふんぞり返っている。


「帰ろっか」


「そうだね」


「そうね」


「だな!」


「じぁ気をつけてな。それとアルバート、フロウ」


「はい?」


「身体強化使うと慣れんうちは筋肉痛なるから」


「えぇ……」


「なんたこった……」


「じぁまたな」


「さようならー!」


俺達はガルム達と別れ、家へと帰った。




「おかえり、セリィ、アル!」


「ただいま戻りました」


「ただいまー!」


「今日も楽しかったか?」


「うん! あのね、ガルムさんの従魔のスカルキングに魔法を教えてもらったの!」


「ほう! スカルキングか、さすがは伝説の冒険者だな」


今日もセリィは嬉しそうにお父様に今日あったことを話している。


それから俺達は毎日ガルムの所へ行き、稽古をして貰った。






――1年後――



俺達は8歳になった。


俺とフロウはすっかり身体強化も硬化も使いこなし、近接戦闘用の色んな魔法も覚えた。


セリィとナージャは中級まで無詠唱で出来るようになり、詠唱してなら上級の魔法も使えるようになった。


「おはよう、今日も行くか」


「おう!」


いつも通りガルムの所に稽古に行こうとしたその時、森から1人の男が慌てたように走ってきた。


「オークだ! オークの群れが近くまで来てる!!」


「オークだって!?」


村人は騒然としている。すると村長が出てきた。


「戦える男は準備しろ。女子供は近くの町まで逃げるのだ」


「村の一大事のようですな」


「あなたは!? ガルムさん!?」


森からガルムが出てきた。


「オークの群れじゃってな。ここは私の弟子達に任せて貰えないか?」


「弟子?」


「この子たちですよ」


「俺達!?」


「オークなんて無理よ!」


「C級の魔物よ! しかも群れで!」


「お前達なら十分戦える。さぁ、準備をするのじゃ」


「しかし子供だけに任せるのは……」


「ワシも付き添うから大丈夫じゃよ」


「それなら……お任せします……」


「さぁお前達行くぞ」


「「「「おー!」」」」




俺達は森に入り、教えて貰った場所の近くまで来た。


「しっ、いたぞ……」


ガルムがオークの群れを見つけた。


「1、2、3……大体10匹くらいいるのか……」


「このまま放置すれば村は壊滅するじゃろうな」


「そんな……」


「じゃからお前達が倒すのだ」


「でも出来るかな……?」


「お前達は十分強い。連携をしっかりすれば難なく倒せるじゃろう」


「よし、行くぞ!」


「「「おう!」」」



「俺がまず行く!」


フロウは身体強化を使い、凄いスピードでオークに近づき、奇襲を仕掛ける。


「回転斬り!!」


フロウは斧を持って回転し、オークの首を切り落とす。


「フゴッ!?」


周りのオークは突然仲間の首が無くなって動揺している。


「俺達も行くぞ!」


「「うん!」」


俺達もオークの目の前に出る。


俺達のパーティー構成はこうだ。


前衛はタンクの俺とアタッカーのフロウ、後衛は魔法攻撃のセリィと回復等の支援をするナージャだ。


かなりパーティー構成的には安定していると思う。


「フゴオオオ!!」


仲間を殺した敵が目の前に現れてオーク達は興奮している。


オークは大勢でこちらに突進してくる。


「俺に任せろ!」


「アイギスの盾!!」


俺は大きな光の壁を張り、突進を止める。


「行けっ!」


「おおっ!」


「私達も!」


「オラァ!!」


フロウがオークをバッタバッタと斬っていく。


「ファイアーアロー!!」


「ファイアーアロー!!」


ナージャとセリィは火の弓を作り出し、オークを燃やす。


オークは火が弱点なのだ。


「フゴオオオ!!」


後ろに回っていた1匹のオークがセリィに近づく。


「きゃぁぁぁ!!」


「セリィ!」


俺は身体強化を発動し、セリィの元へと向かう。


「セリィに近づくなぁ!!」


「フゴオオオ!!」


オークは突然俺が出てきて驚いたようだがすぐに標的を変え、殴りかかってくる。


「ごふっ!」


俺はオークの攻撃で地面に叩きつけられる。ダメージはないが衝撃がくる。


俺を倒したと思ったのかオークは鼻息を荒くし、セリィに近づく。


「近づくなって言ってんだろがあ!!」


俺は右手に多く魔力を流し、火を纏う。


「うらああああああ!」


俺は火の拳でオークを殴る。


「フゴオオオ!?」


オークは拳が触れたところから燃えていく。


「トドメはもらうぞ!」


フロウは後ろからやってきてオークの首をとばす。


「セリィ、大丈夫ですか?」


「うん。ありがとう! 守ってくれて!」


「無事で良かったです」


「全部倒したかな?」


「そうみたいだな!」


周りを見渡してみるとオークの死体しかなかった。


「ほっほっほ、本当にお前達だけで倒すとはな」


「俺達だけでも戦えるんだ!」


「当たり前よ!」


みんな稽古の成果がわかって嬉しそうだ。


俺だってそうだ。今まで実家ん無かったしな。


「じぁ剥ぎ取りして村に戻ろうかの」


「「「え……」」」


「なんだまだ怖いのか? 俺がやってやるよ」


フロウは素早くオークの剥ぎ取りを済ませる。


「じぁ戻るか」


「「「「おー!」」」」


俺達もちゃんと戦えるんだな。


それが実感できる日だった。

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