188-4.愛娘へ出来る事(アインズバック視点)






 *・*・*(アインズバック視点)








 チャロナとカイルキアの婚約発表。


 しなくてはいけないとは、国王としてわかってはいるのだが……わかってはいるんだ!!?



(わかってはいるんだが、この印を押すには押せん!!)



 ふたりの婚約したことへの国王としての、承認せねばならん書簡への印を押すのを躊躇っている……。


 口とかでは認めたような言い振りをしたが、本心としてはまだ認めたくない!!


 俺もだが、アクシアの手元に戻ってきてまだ幾日も経っていない……。それに城に戻るどころかカイルキアの屋敷に行ってしまう形に……あの子としては戻っていった。



「……陛下。押しませんと」


「……わかってはいる!!」



 たしかに……王族の生活をして来なかったのがほとんどだ。赤児の頃でも、ソーウェンの襲撃があったことで……神の御意向でアクシアが一度命を失い、カイザーがホムラにチャロナを亡命させた。


 それから、十六年だ。


 チャロナがこの城に滞在しても気後れしてしまうのも、無理はない。


 カイルキアの屋敷での生活に馴染んでいるのなら、あちらを選ぶだろう。


 だからとは言え!!?



(でーきーるーかぁああああ!!)



 カイルキアには通達で、チャロナを幸せにしろとは言ったが……言ったが、まだ早いだろうと内心ではうだうだしている。


 手元に戻ったかと思えば、すぐに巣立ってしまったんだぞ!?


 たしかに、最愛の女性であるアクシアは俺の手の内に帰ってきたが。



「俺が押すんだぞぉ!!」



 そして、いきなりバカ息子が登場したため、素早く書簡は掴んだ。こいつが押したら、とっとと侍従ら経由で各友好国に伝達させられるからな!!?



「やめろ!!」


「認めてたじゃないかい??」


「だが……まだひと月どころか数日だぞ!!?」


「ほんのちょっとの距離じゃないかい?」


「俺は転移を使えないんだぞ!!?」


「お使いになられましても……殿下のようにサボられては困ります」


「「う」」



 とことん、この爺やには俺達は敵わない。


 仕方なく、書簡には印を押し……カイザークに渡して各国への伝達の手配をしてから、俺はアクシアの元で晩酌をすることにした。



「まあ、アインズ様……」



 俺が晩酌の理由を話すと、彼女はころころと笑い出した。


 十六年の老化を加えられたとは言え、相変わらずこの女性は美しい。年齢相応に美しくなったのだ。チャロナもこの女性と瓜二つだから……将来は似てしまうのだろう。それをカイルキアが独占……いや、もう止そう。


 チャロナは選んだんだからな、ちゃんとした相手を。



「……子離れ出来ていないのは俺の方だったな」


「仕方ないですもの。私も見守っていたとは言え……あの子は私達の手元にはいませんでした。シュラも」


「君はな。……しかし、チャロナのお陰で君も戻ってこれた」


「ふふ……はい」



 今この奇跡を作ってくれた、愛娘の幸せを壊したくはない。


 父親として出来ることがあるなら、手を差し伸べるまでだ。

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