175-1.終わりの夏野菜ベーグル①






 *・*・*










 ベーグルにしたのは……こちらの世界でも実践出来るか試してみたかったのがある。


 普通のパンやフランスパンとは違って……卵もだが、バターや牛乳なども使わない特殊なパン生地に加えて、焼き方も独特だからだ。


 アレルギーの心配はなさそうなこの世界でも、万が一を思うと食べられるパンが多いに越したことはない。



「ペポロンは茹でて潰して、トウモロコシも茹でて身だけほぐしておきます」


「ベーグルは白パンのようなものかい??」


「もっと違いますよ、エイマーさん。……焼く前に、一度茹でます」


「ええ!?」


「本当に短時間ですが、茹でた後に焼くともちもちします!!」


「「想像しにくいね……」」


『俺っちはペポロンやるでやんす』


『ロティもお手伝いちまふ! しょれないとミキシング出来にゃいでふ』


『なるほど』



 告白してからの、公開いちゃいちゃは相変わらずの二人だった。


 私はその間に粉の計量。エイマーさんとシェトラスさんは手分けしてトウモロコシの下拵え。出来上がったら、ロティの攪拌機ミキサーで丁寧にトウモロコシ以外の材料で生地を捏ねて行く。水分は牛乳とかではなく、ぬるま湯。



「一度生地がまとまったら、トウモロコシを入れて軽く捏ねて……そのあと分割します」



 トウモロコシから水分が出やすいので、水分の調整が大変だけど、これはこれで大丈夫なようだ。


 オレンジの綺麗な生地に、黄色の粒が可愛らしい生地になったわ。



「これは……可愛らしいな? これをリング上……ドーナツのようにわざわざ形作るのかい??」


「はい、エイマーさん。少し特殊な成形です」



 ベンチタイムなので、濡れ布巾を丸めた生地の上に被せて……十五分の間に片付け。その間に、大鍋にお湯を大体沸かした状態にしておく。この後の発酵は時間短縮クイックを使って省略するからだ。


 そして、肝心の成形。


 まず、軽くガス抜きする様に平たく伸ばして……コッペパンの途中になるように棒状にしていく。


 次に、その棒を横に伸ばして。片方は太いまま、もう片方は少し細く伸ばす。太い方はえいや、と潰してその上に細い方をくるっと回して持っていき。


 平たくした生地で細い方を包み込む。ほどけないようにしっかりと、これで出来上がり! なんだけど……。



「『「むむむ……!?」』」



 棒状にするのもだけど、包み込む段階が結構手間取ってしまうのは初心者なので仕方がないかな?


 私も勤務先で習うまでは知らなかったし?



『出来たでふ!!』



 ロティは、いつものドレスじゃなく魔法で作ったコックスーツを着て成形を頑張っていた。今日は発酵器ニーダーポット使わないから、人手が多いのはありがたい。


 それに、私の契約精霊として成長したからか、パン製造技術も加わって綺麗なベーグルの形が出来上がっていたわ。



「いいわよ? じゃ、ロティは作れるだけ作ってね?」


『あいでふ!』



 その間に、私は王女と知る前と同じように……皆さんに成形の指導をするのだった。

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