158-4.穏やかな日々
*・*・*
ほんとに、ふにゃけた表情になってしまったけれども。
ワゴンだと、お屋敷に匂いが充満しちゃうから無限∞収納棚に入れて、ぱっと見は手ぶらで三階に向かう。
すれ違う使用人の皆さんからは、今日のおやつは何? 何? と聞かれたけど、『行ってからのお楽しみです!』とだけ言うだけにしておいた。
(一階に行ったら、すぐわかるし……ふにゃふにゃ被害者? が増えるだけだもの?)
とりあえず、ロティを連れて三階に向かうと執務室の前でメイミーさんが出てきたとこだった。
「あら、チャロナちゃん」
「お疲れ様です。今おやつ出来ました」
「あら! 楽しみにしてるわ! 旦那様とレクターなら、ちょうど休憩されてるところよ?」
「はい!」
『でふぅ!』
なので、ノックしてから入らせていただき。
ちょうどコーヒーを飲んでいらっしゃったのか、お二人はのんびりしてたところでした。
「今日のおやつは、チーズ蒸しパンと言うのを作りました!!」
『でふぅううう!!』
「チーズの?」
「蒸しパン??」
「はい。クリームチーズを使った蒸しパンです。さらに、それをアレンジしました!」
「へー?」
「……出してくれるか?」
「はい!」
カイルキア様にお願いされたので、ステータスを開いてテーブルの上にチーズ蒸しパンを出す。ひと皿に三つずつ。ひとつは普通ので、あとはバター乗せの状態にしたのを。
当然、出来立てを収納棚に入れてたから、バターの芳香が部屋に充満するわけで。
「……なんだ?」
「…………すっごい、いい匂い!!」
さすがはお貴族様だから?
ふにゃふにゃにはならなかったけど、カイルキア様は口に手を当てて緩んだ表情を私に見せようとはしないでいた。レクター先生は、だんだんと顔がふにゃぁって。
うん、対照的だけど見てて面白い。
「切り込みを入れてあるのには、バターを乗せてさらに炙ったんです」
「なるほど……いい匂いはバターのせいなんだ?」
「……クロワッサンとは違うが、香りが強烈だな」
「はい。私達もですけど、この幸せな香りに呑まれちゃって。しばらく動けなかったです……」
「……そうか。とりあえずいただこう」
「あ、外側の薄いのは紙なので食べれないです」
「「わかった」」
そうして、バター乗せからパクリと召し上がってくださると。
レクター先生もだけど、カイルキア様まで顔が『カッ』って感じに変わっちゃった。
『でふぅ?』
「おい……しい!!」
「トースト以外でこの味わい……!? パンはしっとりしてるのに、甘い。だが、クリームチーズのお陰でさっぱりもしている……!!」
「だよね、だよね!? 香りだけでもご馳走なのに、食べたらもっと幸せな気分になれるよ!!?」
「ありがとうございます!!」
『でふぅ!!』
式典まであと三日。
それまで、こんな穏やかに過ごせる日々を。式典が終わったらどうなるかわからない。
だから、今を精一杯楽しむことにした。
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