145-7.シアの決意(ユリアネス視点)
*・*・*(ユリアネス視点)
いつになるか。
その時は近い。
けれど、我らは未だ告げれず。
「……まだ、なのよ。カイルキア」
水鏡越しに、苦渋の表情を浮かべている彼の影をなぞり、その姿を消したのだった。
「……まだなのよ」
あなたと姫が共に歩む時期も。
真実も。
何もかもが。
あと少しであるから、どうか待っていて欲しい。
我ら神々の都合ではあっても、今はその時期ではないのだ。
その証拠に、強固派が焦って姫を殺そうと刺客を差し向けているのだから。いくら、姫に訓練を施していてもまだまだ付け焼き刃程度。
姫の命を失ってからでは遅いのだ。
彼女には、幸せになってほしいのだから。
そのために、約束をしたのだから。
私は水鏡を消してから立ち上がり、空間と空間を飛んである場所へと降り立つ。
そう、カイルキアの伯母であり、姫の実母である
同時に、ロティの魂を繋ぐ大事な大事な保管場所。
その空間の扉を開けると、既に誰かいるようだった。
何故、と私は声に出してしまった。
「……ばーば」
振り向いたのは、眠りに身体を任せていた、我が孫の成長した姿。
赤児には変わりないが、ロティと同じだったのがもっと成長した姿になっていたのだ。
「……何故? まだ寝ている時期じゃ」
「…………呼ばれたの。この子に」
「……呼ばれた?」
「ロティに。『ご主人様達を助けてって』」
「……ロティはここにも通じているから」
普段姫と過ごしている時は、プロテクトをかけているので干渉出来ない。
だが、AIと異なる魂では感知しているのだ。自分達に降りかかっている危機を。
「ねー、ばーば」
ディーシアは、私の前にやってきた。
「その時になったら、私も必要なんでしょ? あの子達にはいっぱい色んな物を食べさせてもらったから、ちゃんと幸せになって欲しいの」
「そう……だけど。でも、そうするとあなたが」
「だーいじょうぶ! すっごいんだよ、あの子の料理!! ここまで大きくなれたのは、あの子のお陰!! それに……もう、フィーをひとりにさせたくないから」
「あなた……フィーのことを?」
「寝てた時に連れてきてくれたんでしょー? だから、繋がったの」
頑張るんだから! と笑った顔がこの子やフィーの両親と重なった。
今はこの子達と関われない立場にいるあの子達と。
「……そう。わかったわ。けれど、おじい様にもちゃんと言うのよ?」
「言ったよ? ね、じーじ?」
「え?」
と、アクシア達の球体の後ろに隠れていた、
少し照れ臭そうに、長い顎ひげを撫でながら出てきたのだ。
「うむ。シアがそこまで意気込んでおるんじゃ。儂らに協力してもらおうじゃないか?」
「あなた……いつ知ったの?」
「ついさっきじゃ。お前さんが来る少し前じゃの?」
「ごめんね、ばーば?」
「はあ。……もう、わかったわ」
来たる時は近い。
けれど、阻む者も出てきている。
であれば、我らも動こうではないか。
「あとほんの少しじゃ。アクシアよ、ロティよ。お前さんらの子供達には、きちんと幸福になってもらえるように手を貸そう」
フィルドがそう言うと。
ロティははしゃぎ、もう目覚めているアクシアは小さくお辞儀をするのだった。
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