143-4.宮廷料理人②(フレイズ視点)
*・*・*(フレイズ視点)
何だったんだ。
何だったんだ、あのパンは!?
この私が……唯一作れないでいた『パン』。
それを今日、【枯渇の悪食】で潰えたはずのレシピを。見事に再現されたパンと出会えた。
138歳であるこの私がだぞ?
人間達のせいで、かつてこの世界を滅ぼしかねた大飢饉である【枯渇の悪食】。
そのせいで、私が生まれてからもハーフエルフの群生地で全然復活出来なかったレシピを。
長年行方知れずだった、王女殿下の手製とお聞きした時の私の心境は驚くだけですまなかった。
発見されたのが、アーネスト殿もおっしゃっていたように、あの鼻垂れ小僧……失礼、現在のローザリオン公爵当主が。
長年の思いが報われただろう。
しかして、何故療養はともかく、王女殿下をすぐに城に帰還させないのだろうか?
兄君でいらっしゃる、シュライゼン殿下はわけがあるとおっしゃっていらしたが。
今日はわけをお聞き出来ず、ひとまず残りの『ショクパン』をいただいて、城内にある私室に向かう。
誰にも邪魔されず、誰にも目に留まらず。
思う存分、王女殿下の手がけられたパンを一人で楽しめる!
だが、単純に楽しむだけではない。
「……このパンの柔らかさに香ばしさ。どのようにすれば、いったいここまでの仕上がりに?」
いただいたパンを、バターたっぷり乗せて炙っただけで、あの仕上がりに。
殿下はトーストとおっしゃっていたが、バターでも最高だったが。他にも食べ方があるに違いない。
焼いていないパンも十分に美味しかったが、このパンはさらに炙ってこそ美味が発揮される。
私室の研究用に設置した冷蔵庫と戸棚から、材料を探しに探して。
下ごしらえをしてから、私はパンをスライスしていく。
「まずはマヨネーズ」
バターもいいが、マヨネーズを炙っても美味いと言うのは最近知れたので。好物をまず合わせてみる。
殿下に手がけていただいたように、焦げ過ぎないように窯で炙り。
マヨネーズとパンが適度に焦げてから取り出して、コーヒーと一緒にひと口。
まさに、至高の逸品となったのだ!
「美味い!! パンとマヨネーズが合うのはわかっていたが、炙るとさらに美味い!!」
サクサクと、ふんわりしたパン。ジュワッと口の中に広がっていくマヨネーズ。
これは美味い!!
もしかしたら、バターと一緒に……いやいや暴力的過ぎだろう。
しかし、合わせるならば。
「チーズが合うかもしれない!」
溶けやすいチーズを削り、パン、マヨネーズ、チーズの順に。
あとは同じように炙っていき。
出来上がったら、すぐにかぶりつく!
「うんま!?」
蕩けたチーズにマヨネーズが絡んで。
パンはサクサクとしっとりの部分と別れたが、それがまた楽しい食感だ!
これは……このパンがあってこそ。
どうやって……どうやったら、ここまで美味なるパンが出来上がるのだ?
前世の経験と
んでもって、公爵以上に鼻垂れ小僧のシェトラスには一発殴りたい!
このように美味なパンを毎日口に出来て……作ることも出来るようになっているのだから!!
「……そうだ。残り少ない最後は」
ひょっとしたら、サンドイッチが合うかもしれないと卵サラダにして挟んだら。
美味過ぎて、厨房区域に声が響き渡ってしまった程だ。
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