132-3.神と精霊の知己

 菜園の土地は地平線とまではいかないが結構広い。


 それを、ラスティさんとエピアちゃんだけで管理してるのって凄い。二人は、もう慣れたとは言っていても。



「……これを〜?」



 そして、ラスティさんに大豆の箱を差し出して。中の豆を見てもらった。



『応。妾とフィルドで実らせようぞ』


「これがなんの食材になるの、ウル〜?」


『そこのことは、チャロナが詳しいぞ?』


「えっと……ヌーガスさんにいただいた、お味噌や油揚げの材料になるんです」



 ユリアさん達がいるので、ここで前世の話は出せない。だから、ヌーガスさんの話題を出せば、ラスティさんはニコニコしてくださった。



「あれは美味しかったもんね〜?? へ〜〜?? こう言う豆が材料なんだ??」


「それと。ヌーガスさんから、昨日作ったプリンの材料になるもののレシピも教えていただいたんです」


「それは是非植えないとねー? せっかくだし、アズキの隣にする??」


『そうしようぞ』



 と、全員で移動してから。ラスティさんとエピアちゃんがクワを持ってささっと空いてる土の整備をしてもらえたのだ。


 大豆は手を加えずに土に埋めるだけで終わり、そこからウルクル様とフィルドさんの出番らしい。


 おふたりが畝の前に立つと、向かい合って両手を上に上げたのだ。



『集え、集え。我が豊穣の力』


「あまねく、星々の力よ我が手に」


『合わされ合わされ、この者の力とともに』


『「豊穣の力を降り注げ!!」』



 ピカッと、真昼なのに雷のような爆音と光が辺り一帯を包み込み。


 その光が畝の部分に降り注ぐと、まるでタイムラプスのように大豆の成長が始まったのだ。



『しゅごいでふぅううう!!』


「しゅごーしゅごー!!」



 ロティとシアちゃんはそれぞれ私とユリアさんに抱っこされながらも、大きく拍手をしていた。対する、私と隣にいたエピアちゃんは絶句。



「ウルクル様のは見たことあるけど」


「……うん、凄い」


「本当に」



 レイ君の知り合いであり、ウルクル様とも仲がいい。


 いったい全体どう言う知り合いか、ものすごく気になったのだが。次の瞬間、その疑問が溶けていくように消え失せてしまった。


 何故だかさっぱり、とエピアちゃんと顔を合わせるのだった。



『米もアズキもダイズもとは。さてさて、面白き馳走になるのお。チャロナ?』



 ウルクル様に話題を振られたので、私は我に返った。



「そうですね!! ゴマも手に入りましたし。さらに美味しいあんぱんだったり、大豆の調理が可能になりました!!」


「チャロナ〜!! 俺手伝うから」


「ダメよ、フィルド。シアも限界だから、今日は帰るわよ??」


「……うぇーい」



 と言うわけで。次回は、と定例化していたこのやり取りだったが。


 次はいつ来られるかわからないと、ユリアさんが申し訳なさそうに言ったのだ。



「しばらく、淋しくなるわ」


「私もです」



 次には、パン作りが一緒に出来ればいいのだが。


 それもわからないので、約束は出来なかった。


 そして、転移で帰られる皆さんを見送った後に。私はエイマーさんと二回目の行儀作法レッスンを強いられたのでした。

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