127-5.学び舎と発酵器






 *・*・*









 エリザベート様によって、お屋敷中に雷を落とされてしまいましたが。


 レクター先生の言いつけを守らないのもいけないことなので、仕方がありません。


 お叱り方が、まるで学校の先生のようだけど。そう言えば、この世界に学校と言う概念がないのを思い出した。


 識字率とかも微妙だったような。


 なので、正座でビリビリに足が痺れてしまった、カイルキア様やシュライゼン様が回復してから。カイルキア様の執務室でお聞きしたのである。



「「「がっこう?」」」


「そーいや、ねぇな?」



 悠花ゆうかさんもこの世界じゃお貴族様なので、おそらく学校には行っていないはず。聞いてみると、お貴族様は家庭教師がつくから必要ないらしい。エイマーさん達、豪族も彼女のご実家のランクなら家庭教師がつくそうだ。



「孤児院はマザーがいらっしゃったので、ある程度の読み書きは出来たんですけど。庶民には必要性が薄いですし……可能であれば、学び舎を設けられればいいなと」


「ふむ。識字率が上がれば、将来の有望な人材を育てられるしね?」


「それだけじゃありません。諦めてた夢……就きたい職業ジョブに向けて勉強も出来るようになるんじゃないかと」


「だな? 孤児だろうが庶民だろうが、有能な人材を育てられるんなら……普通の学問以外にも専門のもいいなあ?」


「そ! それだよ、悠花さん! 私が前世で通ってた専門学校みたいな!」


「……どう言う学び舎なんだ?」



 カイルキア様に聞かれてから、私は一度深呼吸をした。



「学問は学問でも。例えば、建築業だけでなく。調理の専門分野に特化した学び舎なんです。私が実際に学んでから、職に就いたんです」


「なるほど! それが可能となれば……その学び舎で一から全部学べるんだね!」


「はい! ただ、先生が……もし私だけだと大変なんですけど」


「そんな無茶はさせないんだぞ! けど、今出来そうなのは。あと、シェトラスにエイマーだが」


「おふたりは、まだ発酵の部分が心配なんです」



 あと、発酵器がない現状でどれだけうまく出来るかもわからない。


 冷蔵庫のように開発出来ればいいんだけど……と、呟いたら。シュライゼン様に肩を掴まれた。



「いい人材がいるんだぞ!! ちょっと性格に難ありだけど、魔導具でも調理道具専門の職人がいるんだぞ!」


「本当ですか!?」



 そんな凄い人が、シュライゼン様のお知り合いに!? とロティと一緒に万歳をしようとしたら、悠花さん達がげんなりしてしまった。



「……あの人にか」


「カレリアの師匠だけどよ……」


「まあ、腕は確かだし」



 また変人奇人のご登場となるような、不穏な物言いが。



「我が国、いやこの世界の発展のためなんだぞ! 君の前世や異能ギフトのことは仕方ないが伝えるけど……まあ、悪い人間じゃないんだぞ。カレリアの師匠だし」


「えっと……宮廷の錬金術師さん……ですか?」


『でふ?』


「うむ! カレリアは今身重だし、あの人なら吹聴しない信頼も出来るからね? 定例会とかが終わってから連れてくるよ!」


「わ、わかり……ました」


「……この屋敷にか?」


「チャロナはまだ必要以上に外に出れないだろう?」


「……仕方がないか」



 いったいどんな人なのか、ちょっと不安だけど。ちょっと楽しみにしている。だって、錬金術師でも高位の存在なんだから!

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