108-1.ある手紙






 *・*・*








 昨日もある意味お休みだったけど、カイルキア様から慣れない乗馬で疲れたからだろうと、今日もお休みになり。


 そして、その言葉通りか、昨日のデートの方の気疲れかでロティともども寝過ぎてしまい。気付いたら……気付いたら……、なんとなんと十時前だったと言う!?



「寝過ぎた!?」


『ふぁ、ご主人様ぁ?』


「あ、ロティ。おはよう、ゆっくり寝れた?」


『にゅう。おねんねしたでふ!』



 久々に見る、ビシッと敬礼する姿が可愛い……じゃ、なああああい!


 朝ご飯兼ブランチになってまう!


 一日三食はしっかりととらないとぉおおお!


 前世のお母さんがいないとわかってても怒られてしまうぅうう!


 ロティも結構食べるし、お昼ずらさないとぉおお! と急いで身支度をして食堂に向かった。



「お、おはようございます!」


『おはにょーございますでふうう!』


『お、やっと来たでやんすか。おふたりさん?』



 出迎えてくれたのは、最近メイミーさんに頼んで作ってもらったコックスーツを着ているレイ君だった。



「ごっめーん! なんか二人揃って熟睡しちゃってたから!」


『いいでやんすよ? チャロナはん、働き者でやんすから休みくらいゆっくりしてても』


「けど……寝過ぎた!」


『でっふぅ、おはにょーでふ!』


『うんうん。寝る子は育つでやんすよ?』


「レイ君、それ悠花ゆうかさんに教わったの?」


『そうでやんすよ?』


「……使い方間違えないようにね?」


『や、やんす?』



 とりあえず、今は朝ご飯なのでエイマーさんにお願いして二人分用意してもらい。


 食べ終えてから、悠花さんも呼んでステータス確認しようと思ったけど。


 今日は用事があるらしいのか、お屋敷には今いないとレイ君に教えてもらい。


 なので、ロティと二人だけでステータス確認をすることに。




「いっくよ、ロティ?」


『でっふぅうううう、ステータスぅ、オープン!』









 ◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯






幸福の錬金術ハッピークッキング






《所有者》チャロナ=マンシェリー(16)



《レベル》31(次までは、残り2209575PT)



《ナビレベル》4(次までは、残り1902575PT》

[スタミナ]満タン(200/200)



技能スキル

 ・無限∞収納棚


 ・ナビ変換チェンジ(レベル28)

 →ホイッパー三種

 →ミキサー機能(ジューサー他)

 →トースター

 →オーブンに発酵機能・奥行き拡張

 →炊飯器ライス・クッカー

 →揚げ物フライヤー

 →餅つき機

 →フードプロセッサー




 ・時間短縮クイック(レベル20)



 ・タイマーセット同時機能(レベル15)



 ・複合(レベル8)



 ★技能スキルUP各種の レベルアップPTコロンは、現在50000000コロン所持






《特典》

 ・レシピ集データノート (書籍有)



【レシピ】

〈バターロール〉〈コカトリスの卵サラダ〉〈いちごジャム〉〈カッテージチーズ〉〈山形食パン〉〈ラタトゥイユ〉〈チョココロネ〉〈コーンマヨパン〉〈コーンパン〉…………

 ………………

 …………

〈色々おにぎり〉〈フルーツサンド〉




 ・銀製器具シルバーアイテム










 ◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯







 経験値であるPTはだいぶたまってきたが、次のレベルになるまでまだまだ遠い。


 ローテーションで作ってるパンとかだと、あんまりPTは付与されないし、1レベル上げるのも大変だ。


 とは言っても、レベル上げは特に急いでいないし問題はないっちゃない。


 けども、



「神様がなんで私に異能ギフトを与えてくださったのか、未だにわかんないんだよね?」


『でっふ。ロティにもわかんないでふ……』



 出来れば、ロティのナビレベルを上げておきたいが、私のPTより少し少ないだけで次のレベルアップもまだ遠いことに変わりない。


 だから、今出来るのはコロンの振り分けくらいだ。



「あ、ねーねーロティ?」


『にゅ?』


「前にも聞いたけど、技能スキルがさらに進化することってあるんだよね?」


『あるでふ!』


「んじゃ、レベルはどれくらい?」


『30でふ!』


「30かあ……」



 地味に……地味に遠い!


 実はコロンを注ぎ込んでも、最近変換チェンジのレベル上げも少しずつしかレベル上げ出来ていないのだ。


 けど、偏ってレベル上げしたくないし、コロンも多いけどいつもどおりにすることにした。


 と言うことは。



「……暇だぁ」


『お暇でふぅ……』



 こう言う時に悠花さんがいたら話し相手にはなってくれるんだろうけど、あの人もずっとは暇じゃないから強要は出来ない。


 あと、今の私の趣味って、ほとんど料理だから。


 趣味が仕事になっているのは良いことなんだけど、暇な時は何もすることがないので、暇でしょうがない!


 あと、読書をしようにも。私の部屋に置いてある蔵書はカイザークさんがお見舞いの時にくださった、レシピ本くらいだ。



(だいぶ読み込んじゃったから、作れるものも作れるし……)



 けど、ほとんどが千里の作れる料理ばっかりなのが驚きだった。


【枯渇の悪食】から年月は経っていても、お城のご飯って言うのも高級料理であるとは限らないらしい。


 だから、カイルキア様もシュライゼン様も、私の作るパンを抵抗なく召し上がっていただけたと言うわけか。


 それに今更だけど、このお屋敷に来て一ヶ月ちょっとのメニューも、例の劣悪なパンを除けばちょっと手の込んだ家庭料理と変わらない。


 千里の記憶が戻るまで、お貴族様とかはもっと美味しいものを食べているのかな、って勝手に思ってたけど。そうじゃないみたい。




 コンコン。




 考えながら、ベッドにゴロゴロしてたらノックが鳴ったので慌てて姿勢を正した。



「は、はい!」


「チャロナ。俺だが、入っていいか?」


「カイル様?」


『でっふ!』



 待たせちゃいけないと思い、すぐに扉に向かって走って開けたら。


 いつも通り、いつも通りのカイルキア様が何か手紙を持ちながら立っていらした。



「お、おはようございます」


『はにょーございますでふぅ』


「……ああ、おはよう」



 もうお昼前だけど、今日はお休みだったからカイルキア様にはまだご挨拶していなかった。


 カイルキア様も気にしていないのか、挨拶を返してくれた……んだけど! なんでか、笑顔! なんで!?



「チャロナに手紙が来ているのだが、俺の身内からなんだ」


「私に、ですか?」


「わたくしどものおばあ様からですわ!」


「え、リーン様!?」



 いったいいつから? と思っているとアイリーン様はしーっと口に指を当てられた。と言うことは、初めからお兄様のカイルキア様の後ろに隠れていたかもしれない。



「リーン、チャロナをいちいち驚かすな」


「ま、お兄様。お姉様だからこそですわ」


「意味がわからない。……まあ、いい。チャロナ、リーンが言っていたように、俺達の祖母から手紙を預かっているんだ」


「わ、私にですか?」


「お姉様、おばあ様にも例のアイスクリームのレシピを見ていただいて、ご一緒に作りましたの。そうしたら、是非お姉様に一度お会いになられたいと」


「え、え?」


「内容は俺達も見ていない。一緒に見てもいいか?」


「は、はい」



 そして、机の上で開けたら綺麗な便箋が出てきた。





【はじめまして、チャロナ=マンシェリー殿



 あなたの雇い主であるカイルキアの祖母である、エリザベートと申します。


 先日、我が孫娘が無理を言ってレシピを教えていただいたこと、本当に感謝しています。


 お陰で、娘のエディフィアの暑気払いもうまく行きました。その件については、後日改めて御礼の品を贈らせてください。


 さて、本題ですが。


 私も知らない様々な料理の知識。その知識のあるあなたに、是非一度。特に得意とされているパンをご教授していただきたいのです。


 シュライゼン殿や、アインズ殿からも許可は得ています。


 お日にちについては、わたくしがそちらに向かいますので。またご連絡させてくださいな。




 エリザベート】




 なんてことのない手紙に見えて、結構すごい内容が書かれていた!



「まあ、パン作りをお姉様に?」


「となると、ロティの技能スキルを見せるかどうかで変わってはくるが」


「ですが。シュラお兄様にもご許可をいただいていらっしゃるのであれば、お話しされていませんか?」


「だが、屋敷で作っていくのであれば手作業になるぞ?」


「あ、そうですわね?」


「あ、あの……教えてもいいんですか?」



 まだ、孤児院でもミュファンさん達のお店でもお菓子作り以外教えていないのに?



「おばあ様がご自分で志願なさっていますもの。わざわざシュラお兄様方にご許可を取られるのであれば、本気ですわ」


「それと、チャロナにも。あの方が作られる料理を教えてくれるはずだ」


「わ、かりました」



 雇い主のカイルキア様がOKを出してくだされば、私も出し惜しみをしない。


 それと、暇な時間をアイリーン様と一緒に、部屋の簡易厨房で昨日たくさん取った木苺のジャムを作ることになりました。

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