103-3.母の夢
*・*・*
(……どこ、ここ?)
たしか、ロティと一緒に布団に入って寝たとこまでは覚えている。
けれど、夢の中にしては意識がはっきりし過ぎてる。
まるで、以前ロティのレベルアップの時に見せられた、過去の映像の中にいる時みたいに。
「……夢、にしては変なとこ」
話せる、考えることも出来る、手足も普通に動く。ただ、歩くのが止まらないだけ。どこかに向かってるにしても目の前はずっと暗く深い闇が見えるだけだった。
「……ロティ。ろーてぃー!」
念のために、ロティを呼んでみても、あの可愛らしい声は聞こえてこない。ということは、やっぱりここは私の夢の中。
けど、なんで夢の中でこんなにも意識がはっきりしているのだろうか?
と言うか、足が一向に止まらないんだけど?
ずっと歩いて歩いて、歩き続けて。まだかまだかと思ってたら、急に止まった。いったいなんだろう?
すると、目の前が急に白く光り出して……!?
「……わ、私……?」
によく似たドレスアップした女の子……じゃない、女の人。私は今の十六歳のままだろうから、目の前に現れた女の人は、二十代後半くらいの大人の人だった。
顔はよく似てるけど、ところどころ見ると違いがあるのがわかる。特に胸!
エイマーさんに負けないくらいあるし!
『……ここまで来てしまったのね』
声までそっくり過ぎる!
けど、少し歳を重ねた感じの深みのある声だ。成人してても、高校生くらいの私のじゃない。
私が驚いていると、その人は急に私のそばまでやってきて手を伸ばしてきた。
私は避ける余裕もなく、その人に体を抱きしめられてしまう。夢の中だけど、あったかかった。
(……あ、知ってる)
この温かさも、声も。
時々、夢で見てたんだ。覚えがあって当然だ。
私もぶらーんとさせてた手をあげて、その人の背中に腕を回した。
「……も、しかして」
嘘じゃないと思いたかった。
「……お、かあ、さん?」
『ええ、そうよ』
お母さんだと言うその人は、抱きしめる力をゆるめて私の顔を覗き込んできた。
『大きくなって……』
「な……んで、どうして? どうして、夢の中に」
『ふふ。あなたの中にある
「え?」
『……チャロナ。今抱いてる気持ちを大事にしてあげて? あの子も、いずれあなたの気持ちを受け止めてくれるわ』
「あの子……?」
誰のことを言ってるのかよくわからず、聞き返すとお母さんは小さく微笑んだ。
『想い合う者同士、いつかちゃんと結ばれるわ。私と、あの人と同じように……』
「……お父さん?」
『ええ。私と違って生きているわ。ちゃんと会った時に、あの人から教えてくれるわ。その時には、受け止めてあげてね?』
「お母さん……死んじゃっているの?」
『……ええ。ちょっと色々あって』
嘘。
嘘でしょ……?
夢に出てきたから、もしかして、と思ってたら本当にお母さんが死んでたからだなんて。
じゃあ、この間からちょくちょく夢でお母さんが子守唄を歌う夢は?
この人が、見せてくれた夢じゃなかったの……?
「……じゃあ、今のお母さんは、幽霊……?」
『そんな感じね。あなたのそばにはいつもいるけれど』
「え?」
『ふふ。それもいずれわかるわ。今は少し忘れていなさい?』
「え?」
『チャロナ。私の愛しい娘。お兄ちゃんのことも、よろしくね?』
「お……にいちゃん?」
もう一度ぎゅっと抱きしめられてから、私の意識は遠のいてしまって。
目が覚めたら、何も覚えていなかったけど。
胸が苦し過ぎて涙が止まらなかった。
『にゅー。ご主人様ぁ?』
「ろ……てぃ……」
ちょうど起きたらしいロティが、起き上がると私はたまらずに彼女を胸の中に抱き込んだ。
『にぇ、泣いてりゅでふ!?』
「ご……めん。自分でも、よくわからない、の」
なんで、こんなにも胸が苦しくて辛いのか。
よくわからなくて、とにかく涙が止まらずにロティを抱きしめることしか出来なかったのだ。
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