80-2.あんドーナツ作り






 *・*・*








 新技能スキル?となった、合成ジンテーゼ


 それを、ロティの負担を考えつつも色々使ってはみたが。


 なんか、こう。


 途中から、物足りなさを感じてしまった。



「……なんか、ゲームとかで遊んでる気分」


『でふ。ご主人様が最初に言ってちゃことでふ』


「うん。なんか、便利過ぎて料理してる感じがしない!」



 これじゃ、らくし過ぎて物足りないのだ!




「はは、確かに。見てる分には面白いが、料理人としては味気ないかもしれないね?」


「ですよね、エイマーさん」


「まあ、要所要所使っていけばいいんじゃないかな? 限られた時間の時には使うとか」


「わかりました、シェトラスさん!」



 コロンもきっと相当貯まっているだろうから、今からは自分の手で料理をして行こう!


 パン以外の私の担当は、基本的に食材の下ごしらえ。


 だから、食材を洗って切って切って、時には泡立て器で混ぜたり。


 ロティには休んでもらってる間に、全部を頑張ったら。


 あっという間に、お昼になったので今度はお弁当の配膳。


 それも終わって、自分達のお昼ご飯の前にカイルキア様やレクター先生のお昼ご飯をお出しして。



「今日のおやつは、あんぱんを揚げたものを作ります!」


「「アンパンを揚げる?」」


「ドーナツみたいなのですね?」


「よくわかんないけど、美味しそう」


「期待してるぞ」


「頑張ります!」



 そして、お昼ご飯をしっかり食べて、少し小休止してからウルクル様も戻って来られたるまでに生地の仕込みをした。



『チャロナ、あのアンコとやらをパンに入れるのは。前に馳走になったジャガイモのパンと同じやり方かえ?』


「そうですね。最後に切り込みとかは入れませんが、具材を包むのは同じです」



 ただし、今回はせっかくだから、もっと包みやすい方法で行こう。


 餡子達を、冷却コールドで少し冷たくさせて、手でコロコロとピンポン玉のように作っていく。



『何をするのじゃ?』


「これを広げた生地に乗せて、包み込むんです。前のよりは少しやりやすいと思います」


『ほう! やってみようぞ!』



 餡子はたくさんあるので、ウルクル様や手の空いた人が手伝って丸めてくれて。


 出来上がったら、今度は分割しておいた生地をいつも通り伸ばして。



「広げた生地の真ん中に、餡子の玉を置いて。周囲の生地を寄せて包み込むだけです」



 そして、閉じ目をしっかりとつける。


 見本をいくつか見せると、ウルクル様も華奢な手で持ちながら、ゆっくりと挑戦された。



『うむ……うむ。こうかえ?』


「はい。大丈夫ですよ?」



 ところどころいびつな箇所はあるが、十分許容範囲。


 初めてにしては上出来だ。



「こ、こう……か?」


「ううむ。アンベラを使うよりは簡単そうに見えたが、難しいね?」


『うむむむむむ』



 他の人達も挑戦しているので、出来栄えを見ると……まずまずだと思う。


 最初の頃よりも、全然出来ている。


 いきなりアンベラよりも、こういうのから始めれば良かったんだなと少し反省。


 いんげん豆の時でも、同じように出来たから。



「では、これを全部包んで鉄板に乗せたら。また少し発酵させます」



 だいたい、ロティのオーブン機能で30分くらい。


 次に、ちょっと久々に使う揚げ物フライヤーに変身してもらい、魔力を変換して油を作る。



『ほう。珍妙な道具じゃが、これで何をする?』


「今から、これで揚げるんです。中に入っているのは魔力で作った油です」


『ほほう。面白いのぉ』


「はねますので、少し離れててください」


『わかった』



 プラスチックの、カードを二枚使ってそっと持ち上げて。


 フライヤーの中に、静かに落とす。


 もう適温に温まっているので、すぐにジュワッと音が立ったが、気にせず5個くらい入れて。


 念のため、タイマーを召喚させて3、4分そのまま動かさずに揚げる。



「どうかな……?」



 トングでひっくり返してみると、いいきつね色!


 これを全部ひっくり返して同じように揚げて。


 出来上がったら、網を乗せたバットに降ろしてどんどん揚げていくが。



『チャロナ……これで出来上がりではないのか?』



 ウルクル様が食べたそうにしてるので、苦笑いするしかない。



「熱々もいいですが、これをさらに砂糖で周りにまぶすので。もう少しお待ちください」


『なんと、更に甘くするのか!』


「固いドーナツだと、砂糖がつきにくいんですが。柔らかい生地の場合なら可能です。……よし」



 だいたい試食する分には揚がったので、ロティに一度元に戻ってもらってから仕上げに取り掛かる。



「チャロナくん、用意するように言われた砂糖は準備したよ?」


「ありがとうございます。まだ熱いので、トングで掴んで」



 グラニュー糖たっぷりのバットに、揚げたあんドーナツをくぐらせて。


 出来るだけ、たっぷりしっかりとつけたら。


 これもまた、シェトラスさんに用意してもらったクッキングシートのような包み紙で包んで。


 全員分出来上がったら、いよいよ実食!




『おお、おお! 砂糖がたっぷりじゃ。見るからに、甘過ぎそうなパンじゃが。主の作るパンはどれもが珍味。これも驚きものじゃろうな?』


「ふふ。驚いてくださいね?」



 そんなにも難しい技術ではないけど、ウルクル様の助言のお陰で時短出来たあんドーナツ。


 きっと、とても美味しく出来てるに違いない。

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