53-1.お転婆お嬢様アイリーン登場






 *・*・*







 お風呂にささっと入らせていただいてから、少し寝て。


 起きては、またレシピの勉強をしていたらあっという間に夕飯の時間になり。


 作り置きにしてある、食パンで作ってもらったサンドイッチを食べる事になったんだけど。今日はロティとだけじゃなかった。



「恋のキューピッドマスター・・・である、チーちゃんの助けを是非とも借りたいのよん」



 何故か、不思議な事を言い出したマックス悠花さんと一緒になった。


 レイ君は、ロティをお膝に抱っこしてもふもふとサンドイッチを食べさせてるから幸せそう。


 じゃなくて、



「……恋のキューピッド?」



 私、何かしただろうかと思ってると、悠花ゆうかさんはにんまりと笑い出す。



「このあたしとエイマー」



 そして、手にしてたサンドイッチをパクッと食べてからまた笑い出し。



「サイラとエピア。短期間で二組もくっつけたじゃなぁいの。だから、よ」


「え、えー……?」



 たまたまタイミングが色々重なった結果なんじゃ?と言ったら。


 本気じゃないけど、強めのデコピンをお見舞いされてしまった。



「なーに言ってんのよ」


「い……いひゃい」


「あたし達の背中を押してくれたのは、間違いなくあんたよ? エピアだって、心機一転させるきっかけがあんただったじゃないの」


「そ、そう……?」


「まあ、あんたは覚えてないから仕方ないけど」



 エピアちゃんが髪を切るきっかけは少し聞いてたけれど。告白の方は……いや待てよ?


 どっちもの前日と当日。


 私、色々と口出ししてたような?



「あ……あれ?」


「なんか思い出したわね? だーかーらー、自分のはひとまず置いておいて、お願いしたいカップルがいるのよん」


「……誰?」



 ぶっちゃけて言うと、今目の前にいるレイ君とロティではないような気がする。



「うふふふふ…………レクターとカイルの妹」


「ふぇ!?」


『あー、あの』


『でふ?』



 カイルキア様に妹様がいらっしゃった事にもびっくりしたけれど。


 まさか、その妹さんとレクター先生が?


 と思うだろうか?


 一瞬浮かんだけど、カイルキア様の妹様って事は、ものすごくお綺麗で神秘的な方なんだろうなぁと思った。


 ら、



「あのお転婆お嬢様が痺れを切らす前に、チーちゃんの力を借りたいのよん」


「お、おてんば……?」


「まだ15歳だけど、兄貴に負けないくらいの剣技でそこいらのモンスターをぶっ倒せるくらいの……ね」



 お転婆で片付けられないくらい、パワフルな女の子と判明。


 理想像が一気に崩れた音が聞こえた気がした。



「そ……それくらい、元気なら……アタックしまくるんじゃないの?」


「けど、いちおー女の子だから。好きなレクターの前ではしおらしくしてんのよ」


「な、なるほど……?」


「親父さんも認めてるし、レクターは身分差うんぬんで尻込みしてるしで……色々面倒なのよねー」


「それ……私が出る幕ないんじゃ?」



 それだけお節介な外野がいっぱいいるなら、特に役目が無いような気がするけども。



「どっちかと言うと、レクターより問題のお嬢様……アイリーンって言うんだけど。あの子の味方になって欲しいのよ」


「アイリーン……様の?」


「そうそう。なんか痺れを切らしたらしい手紙を寄越してきたっぽいから、近いうちに来るわ」


「そこにいらっしゃっるのは、ユーカお姉様ではなくて!?」



 いきなり、バンッと扉が開いたので何事!?と思いきや。


 入って来たのは、見覚えのある綺麗なスミレ色のふわふわしたロングヘア。


 ゆっくり揺らしながら入ってくると、悠花さんの姿をロックオンしてからだッと走ってきた。



「やっぱり、ユーカお姉様ですわ!」


「ちょ、リーン!? 一応あたし食事中!」


「あら、そのようですわね?」



 運動神経がいいのか、リーンと呼ばれた女の子?はブレーキをかけて立ち止まり、くるっと部屋の中を見回していた。



「あら? ここはある時まで使われないご予定のお部屋では? 何故お姉様がこちらで……あら?」



 私やロティもいると分かると、リーンさん?ちゃん?は綺麗なお顔をパアッと輝かせながらまた駆け出してきた!



「まあまあまあ! 可愛いらしい精霊にそちらは、まさふごぉ!」



 私について口に何か口にしようとした時、何故か悠花さんがダッシュで駆け寄って彼女の口を大きな手で塞いでしまった。



「ふぉ、ふぉねーふぁま!」



 そうして部屋の隅にまで行ってしまい、なにやらひそひそ声で話してから何事もなかったかのように戻ってきた。



「こほん。失礼いたしましたわ」



 リーンさん?は、軽く咳払いをしてから先日私が頑張った以上に綺麗なお辞儀を披露してくださった。



「わたくしは、アイリーン=レイア=ローザリオンと申しますわ。カイルキアお兄様の妹ですの」


「!」



 って事は、今さっき話してたカイルキア様の妹様!


 来るとは聞いてたけれど、いきなり過ぎやしないだろうか。



「ちゃ、チャロナ=マンシェリーです! こ、こんな状態で申し訳ありませんが、今は体調がすぐれなくて」


「まあまあ、気にしませんわ。父から伺っておりましたの。期待の調理人が今は夏風邪を召されているとか」


「聞いてるんなら、もうちょっと静かに入ってきなさい」


「申し訳ありませんわ……」



 アイリーン=レイア=ローザリオン様。


 お兄様のカイルキア様と同じ髪色だけど、目は藤色。


 でも、顔立ちは今は可愛いよりでも、将来はきっと美女候補ってくらいお綺麗で。


 体格も細身でいらっしゃるのに、本当に剣でモンスターを倒せちゃう人なのだろうか?



「てか、近いうちに来るとは聞いてたけど」


「んもぅ、カイルお兄様がちっともレクターお兄様に会わせてくださらないからですわ!」



 うん。


 すっごいパワフルでわかりやすい。


 好きな人には、全力で立ち向かうタイプだ。


 あと、たしかに少しお転婆っぽい。



「あいつもあんたの兄貴も忙しいのわかってんでしょ?」


「ですが、ユーカお姉様!」



 それと、悠花さんをそう呼ぶって事は、転生者の事を知ってるみたい?


 しばらくあーだこーだ話されていると、アイリーン様はくるっと私の方に振り返った。



「お二方はご友人なのですね?」


「チーちゃんはあんたの二個上よ」


「では、チャロナお姉様と!」


「な、なんでですか!?」



 私は使用人なんだから、年上だろうが関係ないと思うんですけど!


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