35-1.パーティー開始






 *・*・*








「お待たせしました!」


『でふぅうう!』



 扉を開ければ、まず手前に居たのはメインゲストの悠花マックスさん、エピアちゃんにサイラ君。


 その後ろに見えたのは、エスメラルダさんとメイミーさんにラスティさん。


 順にお通ししたけれど、カイルキア様とレクター先生に、シュライゼン様はいなかった。


 メイミーさんが言うには、明後日のためにもう少しだけお仕事を頑張ってくるらしく。


 パーティーにはあとでちゃんと合流するから、と。


 その代わりじゃないけれど、最後に居たのは。



「お招きありがとさん」


「初めまして〜、カレリアと言いますー」



 ある意味、諸悪の根源だったフィーガスさんと。


 その奥様になられるご予定の、カレリアさんと言う女性。


 フィーガスさんは一応パーティーだからきっちりと貴族らしい服は着ててカッコよかったけど!


 お隣のカレリアさんだと言う女性が!



「…………すっごく、可愛いです」


「あ、あら〜? そうかしら?」



 これまた、可愛らしい女性でした。


 緩くセットした髪は金髪だけど、猫っ毛ふわふわで。


 お顔もちっちゃく、首も手足も華奢で。


 イメージで言うならば、犬のチワワとかポメラニアンって感じ。


 エピアちゃんとはまた違う意味で、守ってあげたくなるタイプの女性でした。


 お貴族さんじゃないとは聞いてたけど。今着てるドレスをきちんと着こなしてるから言われないとわかんない!



「そうだろ、そうだろ! 俺のカーミィは可愛いだろ?」


「ふ、フィーさん!」


「ほんとに可愛いです!」


「あ、ありがとう」



 恋人兼婚約者さんを褒められて、フィーガスさんは機嫌がよくなったのか、嬉しくて彼女の肩に腕を回していた。


 身長差は結構あるけど、初対面直後に悠花さん達にいじられたセットのお陰で、実にお似合いのカップルに見える。



「では、お二人とも中へどうぞ」


「おう、目一杯美味いもん食うぞ!」


「急なお招きありがとう。えっと……」


「あ、チャロナ=マンシェリーと言います。こっちは、契約精霊のロティです」


『ロティでふぅう!』


「うわぁ、可愛い! 私の事は、カレリアでもカーミィでもどっちでも大丈夫よー?」


「では、カレリアさんと」


「私はチャロナちゃんって呼ぶわね〜?」



 お互いの呼び方も決まってから、一度扉を閉める。


 料理は全部は出していないけど、カイルキア様達の分は避けておこうと先にシェトラスさんに報告して。


 全員分の、お酒(ロティは念のためにジュース)が行き渡ってから、音頭は悠花さんが取ることになりました。




「​───────……え〜〜〜〜と、もう全員にはバレてるが。改めて言う」



 一応、カップル記念パーティーなので、悠花さんもさすがに口調は男性寄りにされてて。


 顔色は超真っ赤だけど、これは仕方ない。


 なにせ、エピアちゃん達もだけど……当人以外バレバレだったらしいから。改めて言うのも照れて無理はないもの。



「俺は、エイマー。サイラはエピアとだが、今日それぞれ結ばれた! 集まってくれてありがとな!」


「ひゅーひゅー」


「お前はうっさい!」



 茶化すフィーガスさんはお約束な感じだったけど、即座にカレリアさんに腕をつねられてた。


 ほえほえぽわぽわなイメージだったけど、結構しっかりしてる女性のようだ。



「マックスさーん、とりあえず乾杯しようぜ!」


「お、おう……」



 乾杯の音頭が途中になってたので、もう一組のサイラ君が割り込むことで口喧嘩は中断。


 また咳払いしてから、悠花さんは乾杯用に持ってたワイングラスを掲げた。



「今日は目一杯楽しんでってくれ、乾杯!」


「「『「「『「「乾杯〜〜〜〜!!」」』」」』」」




 今日は無礼講、って事で。


 私とシェトラスさんは、一応厨房側なのでドレスコードはコックスーツだけど気にしなくていいって。


 エイマーさんは、始まる直前にメイミーさんに連れられてドレスチェンジさせられてます。


 どこから調達したのか、もともと持っていたのか。


 エイマーさんのアイスブルーの瞳によく合う薄青のドレスを着せられました。


 デザインは、可愛いより綺麗寄り。


 フリルも少ないから、髪が短めの彼女でもよく似合う。


 んでもって、ある意味ホスト側だから悠花さんが隣でべったりしてます。



「似合ってんぞ?」


「そ、そうかな……?」



 と言う会話だけでも、甘々な雰囲気が漂ってるのでごちそう様です!


 悠花さんも、貴族らしい装いなので非常にかっこいいです。口調も、フィーガスさんと話す以外はとりあえずオネエはやめてるみたい。


 けじめをつけたからかな?


 そっちはそっちで話に華が咲いてるので。



「エピアちゃん、サイラ君。改めておめでとう!」


『でっふぅ!』


「「ありがと(う……)」」



 私は私で同僚側に加わる!


 こっちはワインじゃなくて、甘めのロゼワインのようなお酒。


 しかも、スパークリングだからすっごく軽くて飲みやすい。



「お料理いっぱい作ったし、とっておきのデザートもあるからいっぱい食べてね!」


「俺、俺、昼間に聞いたやつがいい!」


「私も、チーズのがいいな」


「じゃ、ご案内ー」


「んじゃ、あたいも」


「僕も〜」


「俺も〜」


「「あんた(君)誰?」」



 ちゃっかり、フィルドさんも混じってました。


 けど、いっぱい手伝ってもらったから、参加くらいいいかなと言うことで。


 先に少し味見してるから、銀製の蓋であるクロッシェを取るのを一緒にしてもらうことに。



「今からお見せするのは、ピザと言うパン料理です」


「いっくよー?」



 せーの、で蓋を外せば。


 湯気はないものの、たくさん用意したピザの数々。


 同時の上がる歓声に嬉しさが込み上げ。


 私は、クロッシェを空いてるとこに置いてから、見本のためにピザをお皿に取った。


 マルゲリータだけど、チーズの伸びがいい。


 これには、エピアちゃんらしいツバを飲み込む音が聞こえてきたのに、少し笑った。



「こうやって、あとは手づかみで食べていくんですが。女性はドレスなので、フォークで召し上がってください」



 実は、エスメラルダさんもエピアちゃんもドレス。


 エピアちゃんは、おそらくメイミーさんが用意してあげたんだろうけど……そのメイミーさんはいつでも仕事に行けるようにメイド服のまま。


 エスメラルダさんは、褐色の肌が映える結構露出度の高い赤いドレスだった。目のやり場に困るが、これは慣れるしかない。


 しかし、胸すごい!


 じゃなくて、説明の続き。



「今ここにある以外にも、また焼き立てを用意しますので。遠慮なく食べてください。あとは、芋を揚げたものやお弁当によく入れてる唐揚げも」


「チャロナ、よくやった!」


「い゛で!」



 背中を叩かれたのは、エスメラルダさん。


 おつまみにもよくリクエストする唐揚げがあるのがよっぽど嬉しかったみたい。



(背中、赤くなってないといいけど)



 ひとまず、私は食べずにエスメラルダさんにさっきのマルゲリータを渡せば、彼女はドレスを気にせずに豪快に持ち上げてかぶりついた。



「美味い! パンの内側はもちもちしてて、外側の端はカリカリ。二度楽しめるねぇ? この具材はトマトのソースとハーブとチーズだけとシンプルだが……お互いをうまく調和させてる!」



 実に素晴らしい食リポありがとうございます!



「こちらの、白っぽいのはマヨネーズ。とりあえず、ソースはその二種類にして色々組み合わせてみました!」


「全種類網羅するよ!」


「俺も!」


「僕も〜!」


「わ、私も〜!」


「あ〜〜、ピザなら俺も食う!」



 と言うわけで、ピザやサイドメニューは歓談どころか食べ放題並みになくなりそうでした。

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