15-3.オネエパラダイス
*・*・*
二日後が実に楽しみになってきた。
色々恥ずかしい事になっても、マザー・ライアはリリアンさんと同じくらいに優しい人で良かった。
さすがは抱擁力スペシャルMAX保持者の、修道女さんだ。
リリアンさんの姪っ子さんとは言え、初対面で泣いて地面に膝をついちゃった女の子にも、冷静に対処してくださった。
今思い返せば、超顔真っ赤ですまない醜態をさらしたのに、本当にいい人。
院長さんって言っても、まだ30代くらいの若い人だったし、代替わりされたばかりなのかな?
それはさて置き、現状はまた色々大変なとこにいます。
「シュラの次はあたしね? うちの実家が資金出してる店があるのよ。オーナーはある意味あたしだーけど」
と、シュライゼン様が帰る時間も迫ってるので、ちょっと遊びに行くかのノリで提案されたんだけども。
到着した場所が、とにかく凄かった。
だって、歓楽街ではなくても、一応裏通りだったから!
『『『いらっしゃいませぇ〜〜〜〜オーナーお帰りなさいませぇ〜〜〜〜』』』
「ただいま〜〜〜〜」
『…………でやんす』
到着したのは、一軒の……カフェ、らしい。
けど、店員さん全員オネエさんでした!
中には綺麗な女性みたいな人もいるけど、全員男だって! 男の娘な感じの人もいるんだって!
「うむ! ここに来るのも久しぶりなんだぞ!」
「シュライゼン様、初めてじゃないんですか!?」
「マックスと打ち合わせが必要な時とかは、ギルド以外じゃ大抵ここなんだぞ」
「oh......(´・ω・`)」
オネエに抵抗がないイケメンさんってつよぉい。
ロティは、
「シュラは当然知ってるでしょうけど、こっちの女の子はカイルんとこの使用人になったばっかで、あたしのマブダチよ! これからちょくちょく連れてくると思うわ〜」
『『『イエッサー!』』』
「ゆ……っ、マックスさん!」
マブダチは嬉しいけど、ここにしょっちゅう連れて来られるの!?
外観は超好みなアンティークっぽい可愛いお店だけども!
店員さんが全員こうだと、緊張する!
あと、とって食われないか少し心配!
「あら〜、オーナーとそれだけ抵抗感なくお話出来るのなら、大丈夫ですよ?」
ずいっと出てきたのは、見た目すっごくお綺麗なお姉さん。
だけど、この店にいるって事は男性。
つまりは、オネエかオカマさん。
なのに、悔しいほど綺麗!
「はじめまして、代理オーナー兼店長のミュファンと申します。あ、一応本名ですよ?」
「は、はじめ……まして。チャロナ、です」
『にゅ、ロティでふぅ』
「あら、ご丁寧に。そちらの精霊はあなたの契約精霊でしょうか? 随分とお可愛いらしい」
『でふぅ?』
『『『きゃぁあああああああ〜〜〜〜!!!!』』』
ロティが首を傾げただけでこの反応。
さすがは、可愛さ満点の赤ちゃん妖精。
口調も相まって、オネエさん達まで虜にしてしまったようだ。
「チャ、チャロナちゃ〜〜ん、その子少しだけ抱っこさせて!」
「あら、ダメよあたし!」
「あたしよぉおおお!」
とか他にも何人ものオネエさんが迫ってくる始末に!
びっくりし過ぎて、思わずロティがぐぇって言っちゃうくらい強めに抱きしめてしまった。
『だーめでやんす。姐さん方、この精霊は俺っちの妹分なんでやんすから、勝手な事はしないでほしいでやんす』
『『『レイのケチ〜〜〜〜!』』』
『どうとでも言ってくだせぇ』
ありがとう、レイ君!
咄嗟に前に出てくれて、庇ってくれてありがとう!
オネエさん達も、レイ君が人型関係なく頭が上がらないようなので、仕方なく引き下がってくれたみたい。
「そ・れ・よ・り、あたし達を休ませてちょうだいな? まだ酒飲む時間じゃないし、冷たい紅茶とかで」
『『『は〜〜い』』』
「かしこまりました。すぐにお持ちしますので、陽光のフロアにでもいかれてください」
「そうするわ」
ミュファンさんよりは断然年下でも、悠花さんがオーナーだからか。
悠花さんが言いつければきちんと言うことを聞き、ミュファンさん以外の人達は大人しくお店の中に戻っていく。
私達は、彼?彼女?達が入ってから少しして、悠花さんを先導に中に入っていくことに。
「うわぁ、可愛い……っ!」
『でっふぅ!』
中は外観以上に綺麗で可愛いらしいアンティーク調の可愛らしいインテリア。
店員さん達がああいう人じゃなきゃ、是非とも通い詰めたいと思える雰囲気だが、印象だけで決めちゃダメだ。
シュライゼン様もよく来られるらしいし、貴族からしてもサービスのいいお店みたいだもの。
「少し奥に、年中陽当たりが優しい場所があるの。ここを建てる時に、西日が一番気持ちがいいとこを選んでね?」
「ゆ……マックスさんのオススメ?」
「ここであたしの事は悠花って呼んで構わないわよ? オーナー名のようなので通してるし、ミュファンと幹部勢だけは、あたしの事情知ってるのよ」
「おお!」
なんか少しカッコいい!
いや、悠花さんは今の外見もイケメンさんならものすっごくかっこいいけど!
幹部って響きがなんかかっこいい!
とりあえず、連れてきてもらったフロアは個室のようなところで。
バルコニーみたく綺麗に整えられた、陽射しが柔らかく差し込むフロア。
席数も多く、手前にはソファ席がある。
シュライゼン様が先に入られると、ためらいもなくどかっと座り込んだ。
「あ〜〜、ここ相変わらずふっかふか!」
「ほんとはチーちゃんに座ってもらいたかったけど。まあ、あんたも頑張ってたしいいわ。さ、チーちゃんも好きな席に座って」
「うん」
せっかくなので、日当たりが一番いい席に座ると、夏場なのにポカポカと優しい温度に包まれる。
ちょっと泣き疲れたのもあるから、このままだと少し寝ちゃいそう。あと、食堂でやらかした件についてまだ体が結構疲れてるのよね、覚えてないけど。
「お待たせしました。お菓子も少しお持ちしましたよ」
「サンキュー、ミュファン。あんたも少しいらっしゃい」
「あら、ご同席させていただいても?」
「少し伝えたいこともあるのよん」
悠花さんなりに、なにかお話があるようでミュファンさんはお代わり用にと用意してたグラスに自分のを注いでから座られた。
見た目も所作も、ほんとーにほんとーに前もって聞いてなきゃ、綺麗な女性にしか見えない。
ふんわふわの薄青の髪は、これ何年伸ばしたの?ってくらい長いけど、男の人なのに綺麗な髪質。
肌も随分とお手入れされてるようで、艶々のプルプル。
唇も鼻も、すっとしてて。
紅茶をひと口飲むだけで、まるで絵のよう。
女子力絶対負けてます!
「で、チャロナ……チーちゃんなんだけどぉ。こんなわっかいのに、料理の腕がピカイチなのよん!」
「まあ、そうなんですか?」
いきなりの話題にも、ミュファンさんは嫌な顔ひとつしない。ここにも女子力の違い、いや、そこは置いておこう。
それよりも、私の話題を出したという事は、少しパンの事を話すかもしれないから。
「あんただから言うけど。あたしと同じ『日本』の出身なのよ、前世が。おまけに、職人でパンとかが美味しいの。だから、この世界の激不味パン達を改革してくれる存在だわ」
「まあ、こんなにもお若いのに……」
「うむ。まずはその美味しいパンをカイルや俺達以外にも、君がかつていたマザー・ライアの孤児院の子達にも食べてもらいたいんだぞ!」
「え、ミュファンさんが?」
「そうよん。ここの子達、大半があそこ以外にも何軒かの孤児院出身なのよ。オネエは趣味と処世術を身につけさせるためね?」
あんなにも明るそうな人達に、そんな過去が。
チャロナもだけど、人生何かあるかわからない。
あの人達も、色々あったんだ。
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