第83話 知っていたなら教えて欲しい

「むぅ~…」


「ほらほらティオちゃん元気出して」


「むむむぅ~!」


 ボクは今、母の胸に背中を預け頬を膨らませている。


 理由は当然死んだと思っていた母が生きていたことである。


 勿論ミーナがボクに会わせようとしていたのも母である。


 …再会したとたんにうちの娘達が「おばあちゃん!」と元気に走り寄ったことから以前ボクが眠っていた時に出会っていたようだ。


 が、ボクをびっくりさせるために黙っていたようだ。


「頬を膨らませているティオさん…可愛いです…」


「まぁそう膨れるでない主よ。感動の再会じゃろう?もっと甘えても罰は当たらんじゃろ」


 無言の抵抗でさらに頬を膨らませるボク。


 ボク以外知ってたのが若干に腹立たしい。


 そんな気持ちを元にボクが無言の抵抗を続けていたそのとき、ボクを抱きしめている母の声が聞こえる。


「はぶててはいるけど甘えてもいるの。ティオは私に抱きしめられて脱力するのが好きだから~」


「……まぁそうだけどさ」


「それにしても以前眠っているときも可愛らしかったけど、魂が整ったらもっと可愛くなったわねぇ~。さすがは私の娘だわ~」


「…お母さんボクが男だったこと忘れてない?」


「ティオはティオって性別なの」


「元から判別されてなかった…」


「憐れよの」


 我が家の面々で和やかに話をしていたら何やら咳払いをして賢者の一人が口を開いた。


「とりあえずそこの可愛らしい少女がディアンナ殿の娘だというのは分かった」


「可愛らしい…少女…娘…」


 ボクが非常に悲しそうな表情をしているとアルが母の隣に座り一緒に頭を撫で始める。


 すこしだけ悲しみの心が癒された気がした。


「…で、なんだがそろそろここに集まった理由を聞かせて貰えないかな?」


 視線をミーナの方へと向ける火の賢者。


 それを受けてミーナが一歩前に出る。


「一番の目的は彼女たちを再会させること。そしてもう一つの理由は今現在私達が置かれている状況を解決できそうな人物が彼女なの」


「…彼女が?いったい彼女は何者なんだい?」


「ティオ、自己紹介してもらってもいい?」


「あいあい。えっとレスティオルゥ・ヴァンマギカです。いつも母がお世話になっております」


「丁寧な挨拶痛み入る。なるほど…なるほど?…うん?」


 ボクの名前を聞いた賢者が優しい顔をした後、困惑した顔、そのまま驚いた顔になっている。


 ころころ表情が変わって忙しそう。


 そんなことを考えていたボクを放って賢者たちが顔を見合わせた。


「協会長、その名前は創世の大魔導師の名前」


「そうよアンキ。彼女がその大魔導師」


「えっ…えぇーーーーっ!?…というかディアンナさん大魔導師さんの母親だったんですか!?」


「うちの自慢の娘です~」


「あばばばばばばばば……」


「おいミンシュバ、一人驚きすぎて泡吹いておるぞ?」


「あっアグニしっかりして!」


「ティオさんのせいで大混乱ですね」


「解せぬ…」


 ここから静かになるまでしばらくかかるかな?


 そう思って騒然としている会議室を母に抱かれながら見ていたそのとき、急にこちらに焦った様子のエミリアが近寄った。


 何やら鬼気迫る様子を感じ取ったボクは母から飛び降りるとエミリアの肩に手をのせる。


「どうかしたの?」


「…分からない、分からないけど多分これが私の使命…」


「前に言ってた世界が滅ぶって言ってたやつのこと?」


「うん、たぶんそう。滅びが…空からくるの…」


「空から…?」


 怯えた様子でボクに抱き着くエミリアを安心させるために優しく撫でていたボクの背後に何やら気配を感じた。


「ふむ、空からということは…お嬢さん、すまないが詳しい話を聴かせてもらえるかな?」


「こん!泡のおじさん、気が付いたのです!」


「さっきは情けない姿を見せたね…」


 突然のことから正気を取り戻したアグニさんとやら。


 どうやら彼には…いや他の者達の表情を見るに何か思うところがあったらしい。


 もしかしたらエミリアの使命とここにボクたちが来た件は同じ目的なのかもしれないね。


 そんなこんなでお互いに情報交換をするべく会議室の扉は閉まった。


そしてお互いの自己紹介と解決しなければいけない問題を話し合うのだった。



――空からやってくる滅星ほろぼしの災いのために。

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