第50話 後始末はしっかりと
買い物帰りで出会った男性3人。
町中で立ち話もあれなのでとりあえず我が家で話を聞くことにした。
コンの知り合いのようだが僕には聞き覚えのない冒険者ギルドとかいう組織に所属しているようだ。
帰ってきてすぐにルクスを発見したので話を聞こうとしたのだが…、
「客!……なぁ~んだむさい男三人か。転んだ時に股間に石が刺さって死ね!」
出会い頭に大変失礼なことを言って出ていった。
いつからうちの来客が女性確定だと思っていたのか。
大変失礼なうちの同居人が去ったことでとりあえずの問題はなくなったが話も聞けなかったので、こちらは僕とアルとアジダハ、あちらは先ほどの3人が向かい合う形でテーブルを囲っている。
3人の中で一番立場が大きいのがさっき名前を教えてもらったフューリさん。
他2名は護衛というか付き添いの様なものらしい。
先程口走っていた冒険者ギルドでそれなりの立場なのだろう。
さて、状況も整ったので話を…始める前に先に個人的に確認する必要がある事柄を確認することとなった。
「アル、アジダハ、冒険者ギルドって知ってる?」
「うぬ?何を言い出す主よ?冒険者ギルドは冒険者ギルドであろう?」
「いやそんな当然のことのように言われてもな。僕は冒険者は知っていてもその呼称は知らないんだ」
もともと冒険者にすら大した興味がなかった。
そんなことを気にするなら研究をするのが魔術師である。
別に僕が無関心というわけではない…おそらくない。
一応椅子に座っている僕に抱きしめられているコンに視線を送るが…、
「……こん?」
残念ながら首を傾げるだけ。
と、そんなやり取りをしているときに何かに気づいた様子のアルが耳元に口を寄せてくる。
「…そういえば冒険者ギルドができたのって大体100年くらい前なので、ティオさんは知らないかもしれませんね」
「…あー…なるほど…」
僕が表社会から消えている間に出来たのなら確かに把握していないくても無理はないなぁ。
そのまま軽くアルに説明を受けたが以前は個人で依頼などを受けていた冒険者達が、管理されその等級ごとに依頼をギルドから斡旋してもらうシステムになったとのこと。
つまりは冒険者達の組織。
魔術師で言う魔術教会のようなものだろう。
足りなかった知識を埋めた僕は適当に出していたお茶と手製のお菓子で間を濁していた相手に視線を移す。
…なぜか小動物のように男三人が頬にお菓子を詰め込んでいるが、こちらの視線に気が付くと急いで飲み込んだフューリさんが口を開けた。
「すみませんね。急にうちに上げてもらった上にこんなに高い菓子まで貰ってしまって」
「いえ、僕が暇を見て作っているだけのものですのでお気にしないでください」
「それでまずはあなたの抱きかかえている子についてお聞きしたいんですが…」
「この子について…ですか?」
「こん?」
それからフューリさんに聞いた話だが、どうやらコンは冒険者ギルドに一応所属しているらしい。
ちなみに本人曰く…、
「旅の資金集めに魔物退治のお仕事をしていたのです!」
とのこと。
ときどき生活費稼ぎにご利用していたようです。
で、この辺で依頼を受けた後行方不明になっていたコンを、ギルドでは探していたようだ。
なのでこの辺で風邪をひき倒れていたのを保護した旨を伝えると胸を撫で下ろしていた。
厳ついおじさん達が揃って喜んでいる様子を見るにそれなりに皆に好かれているようだな。
まぁコンは無害な子だからな。
「それとお聞きしたいことがあるのですが…」
「はい、何ですか?」
「このあたりに現れた大型の魔物が何者かに倒されていたのですが…、あなたは誰が倒したなどはご存じないでしょうか?」
「大型の魔物…ですか?」
「はい、大きな狼の様な魔物3匹なんですが…」
「大きな…3匹の狼…あっ…」
言われて思いつくのはこの間のピクニックの時に襲い掛かってきたでかい狼。
つまり彼らが捜していたのは僕らのことだろう。
ちょっと後ろに振り向くと魔術で脳裏に会話が発生した。
『この間倒した奴らじゃの』
『そうですね』
『ひょっとして倒したらまずかったのかな…。どうする?黙っておくか?』
『…ん~?別にええじゃろ。そもそもこんなところに逃げてくるまで放置したこやつら悪いのじゃ』
『ですね~。いちゃもんを付けてきたら死体も残らないように処理すればいいと思います』
『何でもう証拠隠滅の方向に行ってるの!?』
最近忘れがちだがそういえばこの二人、この世界の2大悪だった…。
後方で隙あらば襲い掛かろうとしている二人を制止しつつ僕は返事をした。
「……あーその…実はその魔物を倒したの僕らでして~……何か問題があったんですか?」
僕の返答を受けて一回顔を見合わせる冒険者おじさん一同。
しかしすぐに爆笑する。
「あははははっ!ご冗談が上手いですね!あなたの様なか弱い女性が倒しただなんて…!」
どうやら信じていないらしい。
まぁ…僕が強そうに見えるかどうかが基準なら、筋肉のないそこまで身長の高くない女が巨大な魔物を倒したなんて言われても確かに信じられないだろう。
…が、爆笑している3人に向かって凄まじい殺気が叩きつけられた。
「「 何が可笑しい? 」」
「「「 ……すいませんでした… 」」」
後方腕組みマイファミリーが大変怒っていらっしゃる。
元魔王と竜の殺気を叩きつけられている3人はもはや子犬のようにプルプルと震えていた。
あーあ…冒険者形無しである。
この後、僕の後ろの方で鬼の表情かつ仁王立ちをしている2人に睨まれながらフューリさん達は彼らの困っている事情について説明を始めるのだった。
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