と学会の興亡・その四
僕かと学会をやめようと決心したある事件がある。
その頃、と学会の例会はある駅の5階か6階(もう記憶か曖昧だ)にあった。そこまで上るのはもちろんエレベーター。ちょうど季節は2012年の春。窓の外には完成が近づいた東京スカイツリーがよく見えた。僕はその日、一人のと学会会員といっしょにエレベーターにのった。
「もうじき完成てすね、スカイツリー」
するとその若者はこう言ったのだ。
「最初にスカイツリーを壊しに来るのはどんな怪獣なんでしょうね?」
僕は息が止まるほどのショックを受けた。
スカイツリーを壊しに来る怪獣? そんなもの決まっている。怪獣6号ゼロケルビンだ。チルソギーニャ遊星人に操られて東京に襲来、スカイツリーの上でヒメと激戦を繰り広げるのだ……。
そう、『MM9』の続編『invasion』。僕はそれを2011年に描いた。スカイツリー完成の前の年だ。当然、僕の読者なら知っているはずだ。
僕はその体験の直後に、と学会会員の言動に目を走らせはじめた。そして直ちに、それまで気づかなかったことに気が付くようになった。
みんな僕の小説の話を聞こうとしない。
『MM9』だけではなく、他の小説についても同じことが言える。たとえば『BISビブリオバトル部』などは本の好きな人間ならたまらないとおもうのだが。他にも『夏葉と宇宙へ三週間』とか『僕の光輝く世界』とか『UFOはもう来ない』とか面白い作品は山ほどある。まあと学会の中でも原田実さんや開田裕治さん夫妻などは特撮関係の著書にも詳しいけど、それ以外の一般のと学会の関係者はあまり本を読んでいない印象である。
こうなる前に皆神龍太郎さんが言っていた言葉を思い出した。「と学会会員は山本さんの下で遊んでるんだ。つまりみんなに遊び場を提供するのが山本さんの役目なんだ」と。
僕はその言葉を噛みしめた。僕の役割とは、単に遊び場を提供するだけ。と学会の会員には僕の小説を読んでいない人が多い。
それに気づいたとき、僕は会長の座をやめようと決心した。
僕は「と学会の天皇」なんて空虚な座は欲しくかった。
僕の望みはただひとつ、小説を読んだ人に「面白かった!」と言ってもらえることだったから!
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