第17話 リボルト#04 謎だらけの現実 Part2 行動開始!
俺に名前を呼ばれた聡は、少し悪巧みを考えているような表情を顔に浮かべながら、床に置いてある自分のカバンを漁っている。
「なによ、『アレ』って?」
何の前触れもなく始まった展開に、友美佳は不思議に思い、目を見開いて聡の方へ体を乗り出す。
「ジャンジャンジャーン! 聡特製、万能監視ビデオカメラだぜ! プロペラ付きだから、どこまでも飛んでいけるし、高倍率スコープで余すところなく全部お見せしちゃうからな! それにさ……」
機械オタクの聡は、昨日の無愛想な態度が一転し、自信作を手にして自慢を始めた。やはり誰でも自分の趣味の分野になると、テンションが高まるってわけか。
「それに?」
「なんと、こいつは透視機能も付いてるんだぜ! たとえ隙間のない金庫でも、中身が隅々まで見えるようにできるぞ!」
美穂の何気ない一言で、聡のおしゃべりスイッチが起動された。しかし、聡のその言葉は、女子たちの白目を招いてしまったのだ。
「と、透視……それってもしかして……」
「聡くんはずっとアレで、私たちを覗いてたり……」
「あ、あり得るわね! 聡くんやらしい~」
「全てを見透かす異界の
女子たちは一斉に腕で体を隠し、
もちろん、聡はそんなことで黙るはずはなかった。彼は机を叩いた後、すぐに立ち上がって反発した。
「な、何だよ! 人を悪者扱いして! そもそも、オレはこんな汚え考え方をしたことはねーし!」
「えっ!?」
驚く女子たち。まあ、こいつ普段あんまり喋らないタイプだし、多分普段はむっつりスケベとでも思われているのだろうか。
「なるほど、こんな使い方があったのか……今度これで女子たちを覗くとするか。これはお前らがオレに提案してくれたお礼だからな!」
指に力を入れてビデオカメラを掴む聡は、急に頭を下げた。その口元から嫌らしい笑みが見える。それは女子たちにバカにされた怒りによって本気で言ってるのか、それともただの悪ふざけなのか。
「いやああああああーーー!!!」
自ら災いを引き起こした女子たちは、合唱しているかのように同時に悲鳴を上げた。ワーオ、こいつは壮観だな。こういうノリ、嫌いじゃねえぜ。
それでも千恵子は、冷静さを失うことなく、依然としてリーダーシップを発揮している。
「はいみなさん、お静かに! 今はふざけている場合じゃありませんよ!」
「そうだな。さっさと証拠集めに行こうぜ、
「おっと、取り乱しちまったな……よし、行こうか!」
我に返った聡は手が滑ってしまい、危うく大事なビデオカメラを落とすところだった。
「おいおい、しっかりしてくれよ? 俺たちの切り札が壊れちまったら、作戦が
「わ、分かってるよ!」
俺は苛立つ聡の前で、ドアを開けて廊下に出た。他のクラスメイトたちも、俺たちの後に続く。
「さ~て、作戦を始めるか!」
気を取り直した聡は、魂を燃やして元気溌剌の声を出した。握る左拳は、岩石の意志を表した証だ。
「ああ。まずはAクラスを調査するぞ」
静かな廊下には、ただ俺たちの姿が揺れている。普通の学校ならどこにもありそうな光景だが、こいつはワケが違う。スパイのように動く俺たちは、この廊下ではあまりにも不自然だ。
そしてついに、2ーAのプレートが俺たちの目の前に姿を現した。ドアには、大きな「P」が書かれている。その威圧感は、廊下の静けさと相まって更に強まる。
「よーし、行くぞ……準備はいいか?」
姿がバレないように、聡はしゃがんだ体勢を取りながら小声で話しているが、興奮しているため震える音が隠せなかったようだ。
「俺たちなら、いつでもいいぜ。そっちこそ、もったいぶらないで、さっさとやれよ」
武者震いしながら機械を弄る聡を見て、痺れを切らした俺は思わず彼を促した。
「そう焦んなって! ……よし、できたぞ」
ビデオカメラを起動させた聡は立ち上がり、両手に黒い箱のようなものを持っている。よく見ると、それはラジコンの送信機だった。
そしてビデオカメラの上部にある銀色の
「おお、すごいね聡くん! こんなものが作れるなんて~」
「フン、まあな! こう見えても機械には結構自信があるんだぜ」
女子に褒められるのは初めてか、聡は少し照れくさそうに調子のいいことを言い放った。
「氷室さん、なかなかいい素質がおありですね……わたくし、ずっと彼のことを誤解していたみたいですね」
「ただのゲーム中毒者とでも思っていたのか? まあ、そう思う気持ちは分からなくもないけど、もっと色んな角度で人を見るんべきだったな、千恵子は」
千恵子の
「えっ?」
「実は昨日の夜に、俺はあいつと相談をしたんだ。何か隣の教室の、中の様子を見る方法はないかってな。そしたらあいつは別人に変わったみたいで、自分で作った自信作を一つずつ見せてくれたんだ」
「そ、そうだったんですか?」
不思議に思う千恵子。ずっと話が噛み合わない二人に、そんな日が訪れるとは思ってもいなかったんだろうな。
「ああ、あいつと最初に出会った時、機械に詳しそうだなと思ったからな。でも、まさかここまでやる気が出るとはな」
俺は冷静に自分の分析を述べた。しかしこの後千恵子の発した言葉は、俺の予想外だった。
「いいえ、わたくしが驚くのはそちらではありません。狛幸さんが、ここまで考えてくださったことです」
「えっ、そっち? 別に驚くことじゃねえだろう」
今度は俺が驚く番だった。目を見開いた俺は、思わず千恵子の方を振り向いた。
「いいえ、そんなことはありません。わたくしの考えは、まだまだ甘かったようです。それに狛幸さん、いつもわたくしの先にこんな素晴らしい作戦を……何だか悔しい気分です」
そう言った千恵子は、急に頭を下げ、また物憂い顔になった。やはり昔からの生い立ちは、彼女の完璧主義を作り上げたのか。
「他人と比べるのはやめようぜ、千恵子。君は君だろう? そうやって自分を責めるとキリがないぞ。それに、君も君にしかない
「こ、狛幸さん……」
また俺に励まされた千恵子は、顔が赤くなり、驚きと喜びの満ちた眼差しで俺を見つめる。褒められて悪い気がする人はいないだろうな、やはり。
「あっ、映ったぞ! おーい、見てみろよこれ!」
突然大声を上げた聡。どうやら何か衝撃的なものでも見たみてえだな。俺たちは素早く聡のいるところに近付き、一刻も早く教室の中を覗こうとする。
そして俺たちは自分が目にした光景に、思わず
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【雑談タイム】
友美佳「えっ、ここまで? なによもう~、いつもちょうどいいところに!」
秀和「しょうがねえだろう、作者だって色々都合があるんだよ。こうして更新するだけで精一杯なんだぜ」
菜摘「まあ、ファンのみんなを待たせるわけにもいかないもんね!とはいっても、大事なところは適当に書いちゃダメだし~」
秀和「そういうことだ。たまには待つことも大事だぜ」
友美佳「あんたたち、呑気なことを言うわね……」
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