ミズホ⑧

ミズホが通いだしてから3か月ほどが経った。


店にだいぶ慣れてきたミズホは、酔ってなくてもヘルプと話せるようになっていた。


出勤する、ミズホが来る、めちゃ酒を飲む、アフターで皆とごはんに行く、ミズホと二人で帰る、ミズホの家で寝る、昼に起きて一旦家に帰る、出勤する。


これの繰り返しだった。


ミズホ以外の客がいなかった俺は、これだけの毎日になっていた。


ミズホは独占欲が強かった。


最初のうちはミズホが来てる時でも初回に着いていたが、酔うと

「なんで初回つくんや!」

と怒り、めんどくさくなるので初回に着くこともだいぶ減った。


初回の席で指名もらうことも少ないし、何よりミズホは他の客がいらないくらいの金額を使うようになってきた。


最初は上の人に

「初回着けよ」

と言われていたが、ミズホの使う額が額なので、次第に誰も言わなくなってきた。


ミズホは働いていなかった。


しかし、お金はある。


一か月で300万円を超えだしてから、疑問に思ってきた。


「このお金はどこからきてるんだろう」


1日20時間くらい一緒に居るが、仕事をしてる素振りすら見たことない。


親が金持ち?


いや、親からもらってる感じもない。


かといって、ミズホに直接聞く意味もなかった。


金の出所はどうでもいい。


金を持ってるか持ってないかもどうでもいい。


店で使いさえすればなんでもいい。


ミズホは酔ったまま寝て起きると、正気に戻ったかのように、俺にラインを送る。


「もう二度と店に行かない」

「目の前から消えて」

「会いに来ないで」


こういったラインがほぼ毎日のように来ていた。


だいたい

「いや」

「無理」

「意味わからん」


などとラインを返す。


最初のうちは長文で返信したり、先輩に相談したりもしていた。


しかし、結局その日店に来る。


しかも金を使う。


もう言いたいだけなんだろう。


構って欲しいだけなんだろう。


実際、一緒に居るし、ごはんも行く。


めちゃくちゃ構ってあげていた。


ラインでまで構う必要はなかった。


そんなラインがくるのが日課だった。


季節は冬。


もうそろそろで12月になる。


年末が近くなると、繁華街も賑わってくる。


ミナミの街も人が増え、キャッチも増え、酔っ払いも増えていた。


ホストの世界でも12月は稼ぎ時だ。


店の雰囲気もいい感じで、盛り上がる営業日が増えてきた。


その影響なのか、ミズホの使う金額は特に増してきていた。


何もない日にシャンパンタワー、ブランデーもおろす日も珍しくなかった。



















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