ユカ⑰

シャワーを浴びて、ごはんを食べ、布団に入る。


そしてユカを抱いた。


ユカのことはむしろ嫌いだ。


しかし、心の中では完全に仕事として割り切っていた。


ホストとしては良いことでない気がするが、久しぶりに風俗以外で女を抱いた。


営業終わりということもあり、さすがに疲れた。


ことが終わると二人ともすぐに寝た。


ユカがホストに対しての抵抗が徐々になくなっているのがわかる。


最初は店に来ることに対して抵抗があった。


今はまったくなかった。


慣れは恐い。


ユカのことを見てるとつくづく思う。




それから何か月か経ち、ユカはだいぶ仕事に慣れたようだった。


新規の客だけでなく、リピート客も増えてきたようだった。


ユカは自己主張がなく、出勤日数も多いため、変な客に当たる確率も多かった。


自分から話す方ではないので、あまり詳しくはわからないが、気持ち悪い客もいるようだった。


ある日、愚痴を誰かに言いたかったのか、ついに俺に風俗で働いてることを言ってきた。


俺は黙って愚痴を聞いていた。


色々な客の話があった。


話も下手なユカの話は聞くのも辛かった。


しかし、一人だけ聞き入った客の話がある。


恐らく、脳に障害がある客の話。


ユカが働いてる店を良く利用するらしい。


常に電動車いすで、自分ひとりでは生活できないらしい。


他の風俗嬢は断るが、ユカは断らず、受け入れるらしい。


「ユカはなんでその客を断らないの?」


「だって良い人だもん。見た目とか変やし、うまく話せないけど。本番ねだられることないし、変なことも出来ないし。最初はテンパったけど、慣れたらむしろ楽。普通の若い人とかの方めんどくさかったりするよ。」


ユカの発言に深く共感したのは初めてだった気がする。


障害者より健常者の方が迷惑か。


良い皮肉だった。


ホストクラブにおいても言えることかもしれない。


まともな感性を持ってる人間が、ホストクラブでホストを続けられるわけがない。


昔、カナデに言われた一言を思い出した。


「ホストで売れる奴が、まともなわけがない。」


間違いない。


まともな感性を持つホストは「情」が沸いてきて、客のことを好きになって結婚したりする。


そんな奴はホストを辞め、好きな人のために昼職を始める。


結果的にホストは狂ってる奴ばかりになる。


2年もやってるとそんなことも感じるようになってくる。


そもそも「まとも」とはなんだろうか。


「まとも」であることに意味はあるのか。


その答えはわからないが、ホストをやる上では考える意味もないことだった。












































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る