レギュラーにて

レギュラーになると変わるもの。


日給が少し上がる。


月3回のミーティングに参加しなきゃいけなくなる。


基本毎日出勤しなきゃいけなくなる。


休みの日のコール練習などをしないといけなくなる。


店とのルールで言ったらこんなものだが、週2くらいの出勤から週5になると職場の人間との絡みが濃くなる。


もちろん、ホスト同士だけでなく、客との絡みもだ。


ホストは個人プレーのように見えるが、連携も大切。


そのため、同僚や先輩なんかには好かれておくと得なことは多い。


そして、もう1つ大きく違くなったこと。


寮に入った。


周りをホスト一色の環境にしたかった。


元々実家だった。


少し店から遠いのと、甘えが出る感じがした。


寮は3LDKに3人暮らしといったものであった。


同じ部屋には同期の二人がいた。


ユーダイとシオンだ。


同期ということもあり、年齢はバラバラだったが、仲は良かった。


ユーダイは30歳でホストを始めた。


売れないバンドマンみたいな感じの人だった。


ゲームとかアニメとかが好きで、オタク気質があった。


シオンは18歳で関東からカバン1つで大阪に出てきた。


可愛らしい顔をしててちょいやんちゃな感じ、いかにも地元でモテてきました、と言った感じだった。


背中には龍の刺青を入れていた。


「今日からよろしく~」


寮は汚かった。


そりゃそうだ。


5年近くホストの寮として、入れ替わり使われた部屋だ。


綺麗なハズがない。


壁はタバコのヤニで黄ばんでいるし、床のフローリングは火のついたタバコを落とした燃え跡があった。


水回りはもっと悲惨だった。


風呂の鏡は水垢で真っ白で、自分の姿を確認出来ない程だった。


俺は掃除から始めることにした。


掃除用具があるわけでもなく、そのお金が店から支給されるわけでもない。


自費で掃除道具をいくつか買ってきた。


シオンとユーダイは各々の部屋にいた。


頼らず自分でやる。


他人を動かすのは難しい。


自分が動いた方が早い。


なおさら相手がホストならそうだ。


俺は綺麗好きだった。


不要なものを見ると何でも捨てたくなる。


物が捨てれない人の気持ちが全く分からなかった。


中学生の時にもらった卒業アルバムは、もらった次の日に捨てたくらいだ。


そのため物がまったくない。


ホストやるようなやつで綺麗好きは少ない上に、売れてないやつが入る寮である。


とにかく悲惨だった。


床を拭いてごみを捨て、水回りを綺麗にした。


疲れた。


シロウトがやるには限界はあるが、大分綺麗になった。


「ゲンキさんすごい!」


シオンがめっちゃほめてきた。


掃除くらいやれよ。


と思ったが、そうは言わず


「まあこれから一緒に掃除やろか」


くらいに言った。


今日は店休日だった。


しかし、売れてないホストに休みなんかない。


というより早く売れた過ぎて休みなんかどうでもよかった。


「早くカナデさんの位置に行きたい」


心の中でそう思いながら、シオンとキャッチに出た。


シオンとはその後も何回も何回もキャッチに出た。




















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