第13話
「でも、ここに来る間、私はそのシステムを使わなかった。本当の人間が感じている暑さや寒さ、痛みや心苦しさを感じるために」
「それだけのために、冷却機能オフ……って、そうしたら並みの人間よりずっと辛いだろ!?」
僅かに顎を上下させるアキ。
「お前、そこまでして人間と同じ感覚を求めて……?」
「そうしないと、助けたいターゲットの気持ちなんて分からないから。だから、私……」
その時だった。
「そんな……。お前はお前でいいんだよ!」
俺の口から、妙な言葉が飛び出した。また僅かに目を見開くアキ。しかし、俺もここで引くわけにはいかない。
「お前みたいな人工知能がいてくれなけりゃ、麻耶たちには会えなかったわけだし、もっと自分らしくしてろよ」
「俊……介?」
「昨日は、あんな言い方して悪かった」
俺はしゃがみ込み、熱を測るようにしてアキの額に手を遣った。アキは、少しばかりほっとした様子だ。
「もし水が飲みにくいなら、脱脂綿か何かに水を染み込ませてくるから、それを口元に当てるんだ。それくらいなら、できるだろ?」
こくり、と頷いたアキを見て、俺は再び廊下へ。台所で脱脂綿を探しながら、
「さて、と……」
俺は今後、どうやってアキや麻耶と接していくべきなのかを考え始めていた。
全く、とんだ片棒担がされちまったな。
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