雨に宿る

 作:北見悠平


 どうしてお前がそこにいると

 言い切る言葉が生まれる不思議

 鏡みたいに綺麗には写らない顔

 冷たくてもうじきに風邪を引く


 私が真剣に怖いのは

 雨音に宿る一滴の恨み

 空蝉だけで全てとはなり得ないから

 縛りつけて律儀に泣き喚く


 冷酷で無慈悲な空言の話

 真っ正直な透明さを主張すればするほど

 あらゆる色の怨念が吸いついて

 やがて死に至る病


 誰もが自分は違うのだと

 思われたくなる怒れる地獄

 あなたのように強くは生きられぬ人

 泣きたくて諦めが堰を切る


 明日がどうしても辛いのは

 降り止んだ雨に架からない虹と

 宿ったはずの心が消えること

 殴りつけて静かに夢を見る


 あんまり不完全で

 何かが始まるとも知れぬ

 愚かな自然の理

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