DID ~多重人格の私~

緋都 歩夢

第1話 あの日

 『「玲斗、玲歌、ダメ!戻って来なさい!!」

「ママー!」

「あ、まってー」

道路に飛び出した兄妹に母親が呼び掛けると女の子はママー!と言いながら母親の方へ走ってきた。しかし、男の子は持っていたフィギュアを落とし、追いかけていった。しかも道路の真ん中に。

「玲斗!!!!!!」

そこに大型トラックが来た。母親は我が子を守るようにして二人とも跳ねられた。』

これが私の一番古い記憶。玲歌は私。玲斗は私の双子の兄。私は3才のとき、母と兄の玲斗と3人で出掛けた。そこで2人とも死んだ。あれから10年。私は今、父と2人で暮らしている。13歳になり、中学生になった。あの日のことは絶対に忘れない。忘れられない。

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