第18話 シェザの森の妖精
その話を聞いて、亮太はチャロの気持ちに感じるものがあった。
力を貸してやりたいと純粋に思った。
「なあ、俺達で力になるのなら、このチャロに力を貸してあげないか?」
「もちろん、いいわ。リョウタ。私もパルメザックは許せない」
エルフの奴隷売買の話も聞いているフィーネは、すぐ賛成してくれた。
亮太はジャスティンを見る。
ジャスティンは少し面倒くさそうではあったが、頭をポリポリかきながら、
「しょうがないな、ちょっとだけだぞ」
と言って承諾してくれた。
「よし!!」
亮太は2人の同意を得て、妖精チャロの助けをする事を決める。
捕まっている妖精達の居場所を聞くと、チャロは語り始めた。
「詳しい場所はわからないのだけど、ブリジット王国の何処かにアジトがあるらしいの。それを探して欲しいのよ」
「ブリジット王国自体が、奴隷売買に絡んでいるとかはないよな?」
亮太が不思議に思ってつぶやく。
「そうね、確かに顧客は王国の貴族たちがいると、風の噂に聞いた事があるわ。でもブリジット国の王は、英雄王として国民から信頼の厚い男だと評判よ。彼は信頼できると、爺様も言っていたから間違いない。そんな人物が裏で奴隷売買に関わっているとは思えないわ」
フィーネはベルンハルトが、忠誠を捧げた王について話してくれた。
「そうか、でもブリジット王国内だとするとちょっとやっかいかもね。でも、王国に入って出たとこ勝負か」
亮太は右拳を固めてつぶやいた。
話を聞いていたジャスティンは、
「あいつらに手伝ってもらったらどうだ?」
っと顎で後ろを見る。
え?っと亮太やフィーネが後ろを見るが木々以外何も見えない。
何を言っているんだ?とジャスティンに聞くと、
彼は、
「バレてるぞ、出て来いよ」
と、気軽に声をかけた。
しばらくして、近くの大木の影から一人の忍者が現れた。
「あ、『漆黒の隼』じゃないか!!」
亮太が叫んだ。
「よくわかったな……」
忍者は驚愕の面持ちながら、ジャスティンの方を見ていた。
「まあ、2度目だしな、それに俺達を見張って付いてきているのではとも思ってたんだ。また、パルメザックと出会うかもしれないのを期待したんだろ? しかし、妖精の結界に入ったのは致命的だな、あれでわかった」
ジャスティンは淡々と語るが、忍者は悔しそうだ。
「確かにあの結界は想定外だったな」
妖精チャロはもちろん忍者の存在に気付いていたのか得意そうだ。
「私の結界に足を踏み入れたからね、当然私は知っていたわよ」
と、パタパタと飛びながら無い胸を反らして威張っていた。
「でも、今の話を聞いていたのなら、話が早い」
亮太は忍者に話しかける。
「『漆黒の隼』のあなた達の力を借りたいんだ。ブリジット王国のパルメザックのアジトを見つけたい。協力してもらえないか?」
「俺達に協力だと? 確かに俺達は、ブリジット王国からパルメザックの勢力を一掃しようと動いている所だ。お前らも腕は立ちそうだし、利害は合いそうだな。……いいだろう、お頭も許してくれる事だろう。だが一つ約束しろ。俺達の指示無しにブリジット王国で勝手にパルメザック一味と争わないと。うちにはうちの戦い方があるのでな」
「わかった、約束だ」
亮太は即答した。
そして、
「では、わかったら連絡して欲しい。俺達はこのままブリジット王国に入るつもりなんだ」
「いいだろう、奴のアジトを探したらお前達に教える。これは約束だ。それと、」
と言いチャロとフィーネを指差し、
「お前達は、その妖精とエルフの女を必ず守れ、いいな?」
亮太はちょっとびっくりした面持ちで、
「チャロはわかるが、フィーネも狙われているのか?」
「美人のエルフだからな、狙われる要素があるという事だ」
そう言って笑うと忍者は、お頭に伝えに行くのでこれで御免と姿を消した。
相変わらず、素早い移動術だ。
もう近くにはいない事がわかる。
「美人だって言ってたわよ?」
何故かフィーネは嬉しそうに亮太に絡む。
「大丈夫、しっかり守るから」
真面目な顔して言う亮太に、
「そこじゃないだろ!!」
と何故かチャロが怒っていた。
「よし、じゃあ、チャロお前も俺達の旅に加われ。お守しないといけないからな」
ジャスティンがつまらなそうに言った。
「うん、じゃあ、みんな、よろしくね!!」
チャロはパタパタとみんなの周りを飛んで挨拶をすると、
亮太の肩に止まって、ペコリと頭を下げたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます