第6話 出会い
翌日になり、ジャスティンに昨日の事を尋ねた。
どうやらジャスティンを狙う組織の尖兵ではないかという話だ。
何故ジャスティンが狙われているのか聞いてみると、
「わははは、有名人だからな、俺様は。有名税というやつか?俺を脅威と思っている輩は大勢いるということだ」
「天才は辛いな」
ぼそっと
なんか喜んでるぞ。相変わらず自信満々のようだ。
ジャスティンの話だと、大魔法使いであるジャスティンの存在を、邪魔と思う国や組織が多数存在するらしい。
敵対しているのかと聞くと、首をすくめた。
「俺様はどうでもいいが、難癖をつけてくる
売られた喧嘩で遊んでやっているだけだ」
とのこと。
何故、邪魔だと思われてるかは話してくれなかったが。
何処の国や組織にも属さず、孤高を貫き? 辺境の地で暮らしているらしい。
ジャスティンは俺に向かい、昨日の戦いについてこう意見した。
「お前の戦いを見た、剣技には多少心得があるようだが、戦いの基本ができちゃいない」
俺は剣術において少しは自信があったが、あの獣人にまったく通用しなかったのには
まったくレベルが違った。力やスピードが。
本当の殺し合いだったが、亮太に殺生の経験はない。
こんな世界でどうやって生きていけばいいのだろう?
「お前がこの世界で生きていく為には、武術にしろ魔術にしろ、『覇気』を操る必要があるな」
「覇気? ああ、魔法に必要とかいう力か。俺に扱えるような代物なのか?」
正直イメージがわかない。俺に覇気があるかどうかもわからんのに。
「俺は言ったよな。お前には素養があると。覇気は魔法だけではないぞ。この力を操れれば修行しだいで、身体能力にも大きく作用することができるのだぞ。『身体強化』、『治癒力強化』、『5感増強』、『気功法』など、自分の能力を最大限引き出す事ができる」
「そうなのか、何か無敵の力に聞こえるな」
そんな力があるのなら体得してみたいという欲求が亮太に芽生えた。
俺は更に強くなれるんだ。
やっぱり武人として目指すなら世界一の大剣豪だろう! と。
「この世界の武人達は達人に近いほど『覇気』を完璧に扱える。俺から見ても怖い連中だ」
それを聞いてジャスティンをしっかりと
「なあ、ジャス。俺に教えてくれないか。その『覇気』ってやつを」
こいつは口が悪くて、高飛車な奴だが悪い奴じゃない。
むしろ、なんだかんだ言って助けてくれている……と思う。
俺は
「魔術なら教えられないでもないが、武術なると俺様は専門外でな」
と手をひらひらと振ってにべもない回答。
「そ、そうか、ダメなのか? ケチな奴だな」
「……武術は専門外だ!」
俺はがっくしうなだれる。
やはり駄目か、これから生きていく為にどうやって強くなればいいんだ。
途方に暮れる。
すると、ジャスティンが思い出した様に、
「そういえば、教わるのに打ってつけの奴がいるな!」
「え、誰か知っているのか?」
「おう、知ってるぞ、奴が教えてくれるかは別として、この近辺では最強の武人だろう」
「そんな凄い人がいるのか、是非合わせて欲しい!!」
すると、ジャスティンはジト目で俺を見てきた。
そして、ボソッと一言、
「俺、あいつ嫌いなんだよなー」
なんだ? なんかあったのか??
「ま、なんつーか、生死をかけた戦いを何度もやり合った仲って事でね、あいつとは仲が悪いんだ、たぶん」
お前その若さでそんなに喧嘩っ早いのか?
何怒らせてるんだ、まったく。
「ふーん、そうなんだ。……でも俺会ってみたくなったよ、その武人に」
俺は高らかに宣言する。
強くなりたい、純粋に思そう思った。
元の世界に戻れるかどうかわからないが、この世界だったとしても俺は一番の大剣豪になりたい!
誰よりも強く世界一に。そう願った。
ジャスティンはそれを見て、はぁー、と息を吐き、わかったよ、そいつの所に連れて行ってやると約束してくれた。
よし、じゃあ、早速出発だと出ようとして、ジャスティンに止められた。
「お前、その恰好で行くのか? 服を着替えろ。後、これ」
そう言って、両刃のロングソードを投げて
これ、くれるのか?
本物の鋼の剣だ。想像していたのよりちょっと重い。
日本刀ならもっと軽いんだろうけど、日本刀はないのだろうか?
そうは思ったが贅沢はいえない。
「ありがとう、ジャス」
礼を言うと、ジャスティンは何故か仏頂面で「おう」と
俺たちは武人が住むという家を目指して出発した。
この世界の森で感じた事は大きな木々が多く、見たこともない植物が生い茂ってる。
ジャスティンが住んでいた所は本当に辺境の地で森の中だったが、何時間か経つと道で行商人みたいな人々とすれ違った。
この世界ではジャスティン以外初めての人々。
もちろん人なんだろうが、稀にこの人、人間だよね?? って
怪しい場面に数回
遠くに街々の屋根が見える所まで来た時、道脇で
一人の旅人らし人と数人の男たちが言い争っているのが見えたのだった。
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