第3話 アルメンドロス



城の中庭で剣の鍔ぜる音が響く

音の主は少年二人によるものだ


アルメンドロスとガランサス


王の謁見から

約三か月


私ガランサスは王子の従士としてではなく

客人として


優雅な生活を


アリュメトの宮使いとしての教育を


もちろん騎士としての訓練も


私はそのすべてにおいて高い水準をみたしていたように思える


アリュメトは一度引き立てられさえすれば

貴族も貧民も才能を図られる


地位に関係なく


ウイジール殿も元は貧民の生まれだったらしい


その他にも貧しい出から役職を与えられた者は少なからずいた



奴隷の身であったのは私くらいだったが



私はアルメンドロスとの稽古だった

アルメンドロスは必死に打ち込んできたが

私には届かなかった



私は王子の剣をかわし

自らの剣の矛先を王子の肩に置いた



王子はまた悔しそうに参ったと吐き捨て

自らの剣を投げ捨てしりもちをつくと

悪態をつきはじめる




なぜ当たらない!

子供の頃から訓練を続けているのに・・・




私は取り繕うように言った



アルメンドロス様の太刀筋はとても正確で

しかし正直で

私のような者は裏をかく立ち回りですので

これは単に相性の問題かと・・・



よせ

その優雅な喋り方は

絹の服を着ているからと言って

歯にまで着せなくていい




お許しをアルメンドロス様



そのアルメンドロス様というのもやめないか!

歳は近いはずだろう




また王子に諫められてしまった

私は困った



ではなんとお呼びしたら良いでしょうか?

普段はどのように呼ばれていますか


改めて聞いてみた



そうだな

ウイジールも強情にアルメンドロス様だが


侍女のサラは陛下、


軍団長のガンダールは無口だし


町でパン屋をやってるトリスばあさんも王子だな


王子は次々と思い当たる呼び名と人物を数えて思い出していた

そのどれもが固い呼び名であった


父上は、、


倅。


バカ。


能無し。


クズ。


出来損ない。



死神・・・





しにがみ?



私は不躾に訊ねてしまった


するとアルメンドロスは話した


あぁ

父は私の母上を愛していたらしい


幼いころから同じ土地で共に生き

そして結婚し私は生まれた


母上はその時に亡くなった


父はそれ以来私を憎んでいる


お前が生まれてからというもの

常に死が付きまとうと言われた



お前は死神だ



王子は涙こそ浮かべはしなかったが

その顔は初めて出会った時のように


物憂げであった




すまない

お前に話す事ではなかったな

忘れてくれガランサス






アル様とお呼びしてもよろしいでしょうか?






私はつい聞いてしまった




アル様?





ふふ…





あぁ構わないよ






悪くないな






ありがとうガランサス





王子は笑っていた





怒ってはないようなので

私も安心した



王子は立ち上がると


よし!


ガランサス

稽古の続きをしよう!

今なら勝てる気がするぞ!





それはありえませんアル様





私とアルメンドロスは稽古の続きをした

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