第13話 収録後(2)


 梨元プロデューサーの大富豪冗談に辟易しながらも、リアルに永久追放されてしまうので、殴るのだけは堪えていると、


 !?


「パンツ一丁でなにやってるんですか!?」


 いつの間にか服が脱ぎ捨てられていた。あられもない姿になった梨元さんを前に、思わず震えが止まらない。


 とうとう、どうにかなっちゃったんですか!?


「ふっ……驚いたかい?」


「ええ、今も絶賛驚き中であります!」


 だから、早く理由を言ってくれ。


 じゃないと、タダの変態おっさん認定をしてしまう。


「新谷君。一つ、聞いてもいいかい?」


 パンツ一丁で、梨元さんが訪ねる。


「は、はい」


「君は……この凪坂46のために……全てを懸ける覚悟はあるかい?」


「ありません」


「そうか。よく、言ってくれ……え?」


「え?」


「……ないの?」


「ないっす」


「……本当に?」


「一ミリたりとも」


          ・・・


「なんでなんだ――――――!?」


「ぎゃ、逆にどうして全てを懸けられると思ったのか、教えて欲しいですけどもね!」


「それじゃあ、彼女たちが可哀そうじゃないか!」


「……今までの収録を見て頂いて、そう感じたんだとしたら、ただ、遺憾の極みです」


 逆に俺は可哀そうじゃないのか。


「くっ……じゃあ、僕のお願いは聞いてもらえないよな」


「いや、別に、聞きますよ」


「な、なんでだ!?」


「仕事ですから」


 一度受けたからには、責任をもって務めさせて頂く。それが、俺のプライド。


「フフフ……さすがはジャパニーズプロフェッショナルコメディアン」


 パンツ一丁で、なに言ってんだ、このおっさんは。


「で、なにをすればいいんですか!?」


「ふっ……クリスマスプレゼント……消費税……。これらのヒントからわからないかい?」


「……全然検討もつかないです」


 というか、アレってヒントだったんですか。


 梨元さんが最高級バックから取り出したのは、一枚のブリーフパンツだった。


「これを履いて……パンツ一丁になって、彼女たちの楽屋に忍び込んで――「失礼します!」


「ちょ―――――――――! 新谷君新谷君新谷君――――――!?」


 は、離せ変態っ。


「そんなこと、できるわけないでしょう!?」


 ヒント全然関係ないじゃねぇか!?


「日本のお笑い芸人、伝家の宝刀だろ!?」


「確かに、諸先輩方には、そういう特殊な芸を生業としている方はいらっしゃいます。凄く面白いしです。それは間違いないです」


「じゃあ……むしろ、チャンスと捉えることは、できないかね?」


「できません」


 キッパリ。


「失礼しま――「ちょ―――――――――! 新谷君新谷君新谷君――――――!?」


 は、離せクソプロデューサーっ。


「少なくとも、俺には俺の目指しているお笑い芸人像がありますから!」


 曰く、汚れ芸人には、なりたくない。


「頼む! このパンツを履いてくれ! お願いだから、パンツを履いてくれみてくれ」


「嫌です、絶対に履きません! 履いてたまるか!」


「後生だから! そのままの格好じゃダメなんだ」


「なんでダメなんですか! これが普通でしょう?」


「とにかくパンツ! パンツを履いて、一度話をしよう」


「絶対に嫌ですこのまま――」


 トントントン。


 その時、ノック音が、響いた。


「あの……」


 木葉のテンションの低い声が響く。


「はぁ……はぁ……どうした?」


「声が……大きいので、もう少し小さな声で」


「あ、ああすまん。つい、取り乱して」


「は、はい……私は……お二人の関係については……誰にも言いませんから!」


 タッタッタッ……


        ・・・











 


 凄い誤解してる――――――――――!?


 

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