39話:悪なる光 後編
因果が狂う。
宇宙が揺らぐ。
未来が暗闇に飲まれていく。
つじつまあわせに過ぎなかったはずの些事だった。
この星の物質分解によって終わる結末が、ごっそりと抜け落ちていく。
〈異形体〉の仕業ではない。
その兆候は観測されておらず、また彼の定めた運命にもないものだ。
数え切れない無限無数の可能性事象――制御されない変数によって、致命的な何かが起きている。
〈全能体〉は、その身に宿した無限無数の瞳を地上に向けた。
◆
まるで嵐のように、天候が荒れ始めていた。
急激な物質分解の影響が、地球環境を急速に崩壊させたのだ。
失われた膨大な質量によって地表の地形は大きく変わっていたし、上空に吸い上げられ、分解されていく海水はより致命的な変化を与えるだろう。
当然のごとく気圧の変化は急速かつ大規模に、激しく発生。
巨大な積乱雲が生まれ、雷鳴と共に竜巻が相次いで地表を襲っていた。
この世の終わりのような光景こそ、今の自分には相応しく思えた。
塚原ヒフミの情報体の発現――地上に降臨した昇華端末と区別がつかない――のおかげで、〈全能体〉からこちらの存在座標が隠蔽されているのは幸いだった。
いくつかの準備を終えたとき、由峻の胸に去来したのは郷愁だった。
――きっと、いつか、あなただけの答えが見つかるはずだから。
遠い昔、母が優しく語りかけた言葉が想起される。
ああ、そうか。
これがそうなのだ、と腑に落ちた。
この胸に抱いた祈りも誇りも打ち砕かれて、ただ絶望するだけの由峻が見つけた道しるべ。
迷いはなかった。
もしも自分が間違っているというのなら――それを証明するために最果てまで歩まねばならない。
遠く、南太平洋の彼方にまで伸びた水晶のアーチ――全長二五〇〇キロメートルにも及ぶ巨体。
地球外知性体〈異形体〉、その盟主たるトリニティクラスターを見上げて、由峻は傲岸不遜に笑う。
「わたしに賭けなさい――あなた方の改変戦争に、有益な手駒を用意してさしあげます」
静観の構えを崩さない〈異形体〉――こちらに手出ししないのならそれでよかった。
――いずれにせよ、為すべきことは変わりません。
山羊角を模した通信デバイスを用いて、連絡のあった空間座標から目的の品を取り寄せる。
空間転移による移動のショートカット。
まるで陽炎のように揺らめく大気、現れたのは桁違いに大きな巨体二つ――七つの首を持つ大蛇のような巨影――高純度の結晶細胞で構築された身体拡張兵器、戦闘駆体〈ムシュマッヘ〉。
母の遺産であり、間接的に塚原ヒフミを死へ至らしめた道具。
その力が必要だった。
先ほど、ハイヴ=ネットワークごしにイオナ=イノウエが伝えてきたとおりの座標だった。
あの老人の意図はわかっている。
以前ならば顔をしかめたところだが、今はお互いに都合がいいというべきだろう。
ヴァルタン=バベシュの無力化によって解放されたユニット、その七つの首――首の一本一本が空間干渉デバイス――の付け根に手を触れる。
皮膚表面の疑似生体を部分的に結晶細胞へ置換、接触通信による制御権限の正式な書き換えを開始。
何の面白みもなく、全機能の掌握が完了した。
まるで元々、そうなるためにあったかのように、〈ムシュマッヘ〉は由峻によく馴染んだ。
それも当然か。
高純度結晶細胞で構築されたツール、という意味では、彼女もこの大蛇も同じカテゴリの戦闘駆体なのだ。
ガラス細工の大蛇にインストールされた設計図を上書き後、背中を預けるような形で立ち上がる。
今から由峻が行うのは、戦闘駆体本来の運用法――亜人種との融合による能力拡張だ。
正規のそれと異なるのは、融合後の主体が〈ムシュマッヘ〉ではなく彼女自身であること。
片方残っていたハイブーツも脱ぎ捨てたから、今の少女は素足だった。
直前に侵食光が吹き荒れたせいか、塵一つない道路を踏みしめる。
どのみち不要になるのだから、衣服一式を脱ぎ捨ててもよかったのだが――由峻の良識が、たとえ地球が滅ぶ瀬戸際であろうと全裸を拒否していた。
脱げば勝てるなら迷わず脱ぐが、そういう問題でもなかった。
息を吸い込む。
光の結界越しにもわかる黄金の太陽――〈全能体〉の姿を視界に収めて、
これから始めるのは彼女なりの意思表示、決して相容れない存在への宣戦布告だ。
「〈全能体〉よ、我が名は
そうする必要があったから、〈全能体〉に対して口を開いた。
塚原ヒフミを失ったあのとき、胸に抱いた悲嘆も憎悪も絶望も嘘のように優しい語り口。
まるで愛おしむように、静かな声音だった。
「あなた方――
遠く、空の彼方に光り輝く無数の人影が浮かんでいた。
先ほどまで〈天の女王〉に群がっていた化身たちが、雲霞のごとく景色を覆い尽くしている。
時折、撃ち上がる熱線の軌跡を見るに、彼女はまだ生きているようだが――その様は弱々しく、風前の灯火と呼ぶに相応しい有様。
距離は一〇キロメートル、これまでの観測情報から推測して、こちらに到達するのに一〇秒もかかるまい。
「わたしは一人の生者として、あなた方を言祝ぎましょう……人は世界の征服者として、何者にも負けない永遠を手にできるのだと。その力強さを、わたしは一つの成果として評価しています」
〈全能体〉が、由峻を見つけたのがわかった。
塚原ヒフミの残した経路がバックドアとなり、相手方の動きを手に取るように教えてくれる。
由峻の一人芝居を、〈全能体〉が観測している――そうでなくては意味がない。
おびただしい量の光が押し寄せてくるのがわかった。
先ほどの〈裁きの知恵者〉が可愛らしく思えるような、信仰の皮を被った正しきものたち。
どれほどそのありようが歪で、醜悪に見えたとしても、その姿形を作る想念は間違っていないのだ。
誰もが幸せになりたいと願うから、どこかで英雄を望んでしまう。
夜空に輝く星のように、眩い光を――運命や不正義に立ち向かえる強者の偶像を作り上げる。
けれど多くの場合、人を苦しめるのはもっと卑近で、根絶のしようがない苦痛が大半だ。
それは老いであり、病であり、貧しさであり、恐れであったもの。
人間存在に根ざした悪は滅ぼすことができない。人にできるのは、そこから遠ざかろうとし続けることだけだ。
〈全能体〉が使わした化身たちは、皆、神々や英雄の姿を象った神話の住人だ。
只人とは住む世界が違う偶像だから、不都合を押しつけるにちょうどいい。
救済機構として自動的に働き、人間に奉仕するもの――そうして除去される不都合が適切で、排除される行程が自動的であればあるほど、救われる人間の数は増えていく。
何も変わってはいないのだ。
それはシルシュが作り上げた
「その弱さを、愚かしさをそのままにしてなお、人はここまで強大になれるのです。だから、わたしは見てみたい――あなた方の業苦を踏破した先に、どんな未来があるのかを」
由峻への排除行動――光の雨が降り注ぎ、無数の巨人がその武具を振るう――侵食光の結界が、そのすべてを消去していくのがわかった。
〈全能体〉という救済機構は、おぞましいほどに自動的だ。
それゆえに彼らは、今ここで稼働している〈光輝の王〉の残滓を止める術を持たない。それが守ろうとしている由峻もまた、人間の一部にカウントされているのだから。
すべての人を救いたい/すべての人が救われたいという、切なる祈りの産物――それゆえに少女を滅ぼせない皮肉な構図が、由峻の命を保っていた。
「わたしが生きているせいで、不確定の未来がやってくるのかもしれない。死と苦痛から人を救う、永遠のゆりかごが台無しになるのかもしれない……とても、悲しいことです」
無防備になる時間を、ヒフミが残した光が稼いでくれる。
書きかえた設計図に基づき、戦闘駆体から分離した結晶細胞――花びらのような無数の欠片を、皮膚を通じて自らの肉体に取り込んでいく。
兵器の一部になるのではなく、兵器を取り込んで肉体そのものを再構築――それが由峻の選んだ戦う術の獲得手段であった。
〈ムシュマッヘ〉を構築する結晶細胞は、あらゆる物質の性質を真似て振る舞い、超物理現象の発動媒体となる。
ヴァルタンの遠隔操作時に見せた機能は、〈異形体〉が引き起こす超物理現象に迫る不条理だった。言わば限定的に再現された神の手足というわけだ。
ならば、〈異形体〉の視座を持つ由峻がそれを扱えば――造物主に迫ることもできるのではないか。
足りない出力は、眼前の神に等しいシステムから奪い取ればいい。
「わたしの存在とは、あなた方の幸福を踏みにじることと同義なのでしょう」
細胞組織が置換される。
増大していく質量に、再構築されていく躰に耐えうる構造へと変化――三次元的立体構造から五次元的超空間構造へとシフト。
物理的強度と空間の制約から解放された器に、全長一〇メートル近い〈ムシュマッヘ〉が呑み込まれていく。
「傷ついた人々のやすらぎが邪魔ならば、わたしはそれを踏み潰しましょう。我が子の幸福を願う父母の祈りが障害だというのなら、生まれる前にくびり殺しましょう」
〈全能体〉を物質宇宙で孵化させるための中枢端末、最も根源的な超常種――存在起源であるがゆえに消去できない経路を乗っ取り、物質分解で生まれた莫大なエネルギーを、掌握した〈全能体〉の系から奪い取る。
地球という星を貪り食らい、神をも殺す竜へと我が身を至らしめるために。
「欲に塗れ、苦痛から逃れられず、生きた果ての答え。それが〈全能体〉だというのなら、わたしは
塚原ヒフミは、世界を照らす光だと人間を形容した。
けれど由峻はその人間の到達点が見せる、剥き出しの悪を目の当たりにした。
ゆえに、彼女はおのれの定義を導き出す。
――きっと、これは答えのない問いかけなのです。
社会の発展と共に、悪の観念は拡張されてきた。
人間らしく生きられる世界を求めて、ありもしない理想世界へ辿り着くために、おのれと一体不可分の獣性を悪と定義した。
悪とは、生命の根本原理そのものだ。
誕生し、呼吸し、捕食し、睡眠し、成長し、交尾し、安全を求める。
そんなありふれた行動から、あらゆる悪が生まれる。
獣性とは知性の対義語ではない。
浅ましい知恵、愚かしい策謀――この地球上で最も知性体と呼ぶに相応しい霊長、人類の歴史がその証明であろう。
正しき闘争を掲げ、赤子の頭を地面に叩き付ける誰か。柔らかな頭蓋骨からあふれだすピンク色の脳漿を踏みにじり、歓喜の声を上げる虐殺者。
そんな残虐の化身が、妻子の前ではよき父親であるように。
わが子を愛する母親が、他人の腹から生まれた子供をくびり殺すように。
啓蒙と人道を是とする共同体が、その外にある奴隷を搾取して繁栄するように。
どんな正義も、愛情も、理想も、人がその身に宿す悪と絡みついて癒着してしまう。
それが思想に根ざそうと、理念に根ざそうと、感情に根ざそうと――人間は驚くほど自動的な邪悪を作り上げる。
人類史において、あらゆる正義が利害調整の方便に用いられ、残忍な暴力を御してこなかったように――度し難い醜悪と怠惰こそが、人間存在の根底に張り付いた業なのだ。
制御された暴力も、分別のある闘争も、人がそうあればいいと夢見る幻想でしかない。
だが、そうして見るに堪えない惨状を生み出してきた生命が、輝かしい文明と壮麗な文化を築き上げてきた。
剥き出しの悪そのものでありながら、そうではない希望を吐き出す、人間という名の地獄の機械。
「――悪なる光。それが、すべての人を表す言葉です。あまたの輝かしい意味を照らしながら、命燃え尽きるまで業苦に苛まれる獣たちよ。あなた方の苦悶と絶望をこそ、わたしは愛おしく思います」
狂おしい激情が、少女の総身を支配していた。
「さあ、わたしを呪いなさい」
由峻を呪う声が聞こえた。
悪魔と。
悪鬼と。
天魔と。
たまらなく快感だった。
罵倒に、悲鳴に、苦悶に、慟哭に、憎悪に、憤怒に、絶望によろこびを感じた。
彼女は今、あらゆる人の醜悪、惰弱、愚劣の行き着く究極のかたちを目の当たりにしていた。
その無惨なありようをこそ、愛するに値すると感じた。
無数の業をつなぎ合わせた
だが、それは罪ではない。
人を人たらしめるのは、血液のように全身を巡る悪から逃れようとし続ける指向性だ。
そう、由峻は信じられる。
人を堕落させた
それは過去にさかのぼって、人の意識に反響する偶像となるはずだ。
すなわち、すべての人が恐れるものの体現者。
人類の信仰の皮を被る機械仕掛けの神が、逆説的に、信仰の敵対者を規定する――〈全能体〉の影響下へ人類が取り込まれたそのときから、あらゆる事象は結果に向かって収斂していく。
忌避という行為の本質は信仰だ――忌むべきものがあり、避けねばならないという世界認識は、素朴な差別や偏見とつながった人の業でもある。
そういう人の浅ましさ、愚かしさへの処方箋として宗教/道徳/倫理があったように、あるべき姿の対には、あってはならない姿があるのだ。
天主の
だが、〈全能体〉は人類の根本的性質――征服、収奪、播種という生態を拡張した超越者だ。
桁外れの規模で行われるその行為もまた、彼らが内包している獣性の証明に他ならなかった。
ゆえに。
邪悪という名の信仰に、〈全能体〉は
それも当然だろう。
とどのつまり、救いを求めた人々を押し潰したのは尊厳なき物質宇宙の悲惨さ、死という虚無であって、悪魔や邪神などではない。
霊魂なき哀れな肉身を、わざわざ堕落させる
今この瞬間までは。
〈全能体〉が不滅である限り、絶対に滅ぼせない悪そのもの――三千世界を呪う化身として、導由峻はこの時空間座標で再誕する。
永遠不滅の悪として存在し続ける対立概念。
時空間から搾取した資源によって、永遠に続く安らぎの世界に、〈全能体〉が克服したはずの業苦の権化が居座る。
無限の時間と空間にまたがる楽土と、有限と必滅を是とする悪鬼は決して相容れない。
それは可能性事象を収奪し、人類に都合のいい因果だけを選び取る彼らにとって、致命的なエラーを意味していた。
――わたしは、
由峻はよろこび笑う。
琥珀色の瞳から流す涙も、頬を上気させる熱も、頭脳の奥に居座る冷たい達観も、おのれなのだと受け入れた。
悲嘆も憎悪も絶望も超えて――憤怒そのものとなって、運命に対峙するために。
幾何学模様の発光現象、侵食光をも取り込みながら少女の血肉は変貌していく。
接合され、融合しながら、まったく新しい肉体を形成――身長一七〇センチの少女のそれとは似ても似つかぬ黒鉄色。
光の結界が消えた。
その役目を終えたか。
あるいは、より巨大な何かに呑み込まれたかのように。
一〇〇〇体を超すであろう昇華端末――あらゆる神々/天使を象った美しい化身たちが、破滅の一撃と共に迫り来る。
刹那、彼らの耳朶を叩いたのは笑い声。
――黄金のラッパを吹き鳴らすように、
一閃。
時空が切り裂かれた。廃墟の街並みや遠く宙を浮かぶ陸塊に、奇妙なズレが生じる。物質も光も区別なく、黒い筋が走っていた。
まるで現実という絵画の上に、黒インクで線を引いたかのような有様。
〇・〇六秒後、世界が悲鳴を上げた。
辛うじて残っていた建造物が、包丁で切れ目を入れた豆腐のようにバラバラになった。上空に浮かんでいた土塊が、その分子結合を破壊され、形を保てずに自壊していく。
黒い筋が走っていた空間のあらゆる場所で、何の物質もない絶対真空が生じ、その空白を埋めようと押し寄せた大気によって爆風が吹き荒れた。
地平線の彼方では、山々が真っ二つに切り裂かれ、かつてない規模の地滑りを起こしている。
それは四桁を超える化身も例外ではなかった。
砂のように崩れ去っていく端末たち――まるでパズルのピースのように、巨人たちの肉体が寸断され、再生の素振りも見せずに倒れていく。
美しい肉体を切り裂き、その存在を永遠たらしめる情報体を両断せしめる権能。
振るわれたのは、空間を引き裂く深紅の爪。
――燃えるような滅びの光と共に、それはこの宇宙に産声を上げた。
異形であった。
それがこの世のものでないことは、一目でわかった。
ゆうに三メートル半を超えるであろう、優美な曲線を描く細身の長身。人体の特徴である直立二足歩行を継承した人影だ。
その全身を
無機質な質感と裏腹に、その頭部は有機的な曲線が入り乱れた美術品のようであった。
如何に神話的存在を表現するかに苦心した、芸術家の姿が想像できるような造形美――目のない竜と呼ぶべき
三日月型の山羊角が変じた突起物は、バイザーのように眼窩を覆って後頭部へと延長されており、まるで悪魔の角のよう。
しなやかな印象を与える長い手足――恐ろしいかぎ爪は
腰から下を飾り立てているのは、スカートのように脚線美を隠す竜の頭四つ。
腰椎から生えた一対二枚の翼のようなものは、一際大きな竜の首だ――スカート部分の竜頭は一つずつ、腰の竜頭は二つずつ角を有している。
頭部の一対二本と合わせれば、七つの頭と一〇の角。
悪魔を思わせる容貌にもかかわらず、それはドレスを着た貴婦人のように
最も新しい〈異形体〉であり、人を呪う〈全能体〉の化身であり、そのいずれでもない
――その名は〈悪竜〉。
躰を流れるのは可能性事象の光、血のように赤い
終末の世にあって、星を喰らい誕生した人類の天敵だ。
一秒とかからずに、近くの化身の群れを壊滅させた〈悪竜〉は、ぐるりと周囲を一瞥。先ほどの一〇〇〇体など、空を覆う化身たちのほんの一部に過ぎない。
上空から飛来する無数の光点――〈全能体〉より遣わされた化身たちを見やり、即座に肉体を構成する結晶細胞を活性化。
時空間連続体に介入、その構成を書きかえる。
瞬間、不可視の盾が〈悪竜〉の周囲、半径三〇〇メートル圏内に展開――すべてのエネルギーを無へ還元する停滞フィールドが、降り注ぐ熱線、飛翔体を無力化。
赤く発光する爪を一閃。
距離にして数十キロメートル先にいた化身が、二〇体ほどバラバラに切り裂かれて消滅した。
空間断裂は、停滞フィールドと同じく時空間連続体への介入によって可能となる事象改変行為の一種だ。その性質上、すでに存在する時空間が丸ごと塗り変わるため、到達速度という概念が存在しない。
言わば改変と同時に着弾する攻撃――しかし手間がかかる分、決して効率はよくない。
今も増大していく敵影は、すでに一〇〇〇万を超えていた。
「さて、試運転の相手としては妥当な数でしょう」
生身と同じ発声――周囲の大気を直接振動させ、由峻であったものは傲岸不遜に笑う。
音もなく、その身が地面から飛び立つ。
重力波推進機関による飛翔は一切の駆動音を立てず、不気味なほど静かであった。
空間を歪めるほどの出力――垂直に高度を上昇/音速超過の衝撃波――〈悪竜〉へ肉薄するようにして、一八〇体もの化身が追随した。
空間断裂はその性質上、一度に攻撃できる方向を限られるから、接近すればするほど有効性が落ちる。
停滞フィールドによる変質も、常に遡航再生によって肉体を復元する昇華端末ならば突破できるだろう。
事実、体組織を劣化させながらも新しい血肉を充填されて、こともなげに停滞フィールドを突破する巨人たち。
フィールド突入前に帯びていた加速、すなわち運動エネルギーは消去されたものの、体内の推進機関により空間を歪め、強引にフィールドの展開領域を抜けたのだ。
爪の一なぎで三〇体近くがバラバラに切り裂かれる――残り一五〇体。
その迎撃を抜けた化身たちは即座に音速超過の加速を開始。
四方八方からの同士討ちを恐れぬ突撃――不死の端末群ゆえに可能となる戦闘機動だ。
停滞フィールドの防護領域の内側でなら、〈悪竜〉への攻撃も通る。
だが、遅い。
殺意を描く軌道が四つ――瞬時に三〇〇メートル超に延長された竜頭――スカート状になっていた四つの
肉がえぐれ、骨がへし折れ、衝撃で千切れた手足が四散する。
化身どもの再生速度を凌駕する破壊であった――残り七八体。
鞭のようにしなる蛇頭に当たったものたちもさることながら、先端の竜頭に食らいつかれた昇華端末はさらに無惨であった。
その牙に食らいつかれた化身が、音もなく肉体を消失させた。
瞬くのは物質分解の光、何者も抗えぬ救済の煌めき――〈光輝の王〉が残した侵食光の残滓の攻撃転用――おのれを愛した男の想念すら兵器として、〈悪竜〉は空を駆け抜ける。
残り四二体。
包囲を成立させるには数を減らしすぎた第一波――停滞フィールドの外側、〈悪竜〉を中心とした半径三〇〇メートル圏内からさらなる増援。
その到着前に、かぎ爪を振るった。
これで第一波は全滅。
慣性制御を駆使した直角的方向転換、最高速度を維持したまま変幻自在に宙を舞う。
その合間に振るわれる空間断裂に射程の制限はない。
〈悪竜〉から見て二次元的に空間を観測、三次元的な空間の広がりにそれを適応する斬撃――二次被害を問題にしなければ、地平線の彼方にまで届く。
元より〈全能体〉に捕食され、その質量ごと消えかけていた星である。地表をずたずたに切り刻みきながら、一度に何万体もの化身を切断する。
まるで舞踏のように煌びやかに、無数の死を振りまいた――再生の間に合わぬ化身たちを置き去りにして。
その体表から剥離する無数の断片があった。
花弁のように薄く、血のように赤く輝く結晶細胞。
その一つ一つが、〈ドラゴンスケイル〉と呼ばれる兵装――接触した対象の肉体を分子レベルで切り刻み、破砕する攻撃デバイスであった。
〈悪竜〉の躰から切り離されたそれらは、指数関数的に分裂/増殖を繰り返し、停滞フィールドの展開領域外にまで拡散。
おびただしい数の竜の鱗が、花吹雪のように舞い落ちる。
黄金の太陽に照らされた空の下、先ほどまでの激しい動きが嘘のように、〈悪竜〉は空中の一点にぴたりと静止。
この肉体に組み込んだ近接兵装の性能評価は終わった。もう用はないと、彼女の周囲――半径一万キロメートルに降臨した億を超える巨人――に存在する化身どもを、冷ややかに一瞥。
角と眼窩が融合した目のない頭部に、紅蓮が灯る。
「死になさい」
どこか芝居がかった仕草で、手首を落とした。
刹那、滅びの流星雨が降り注いだ。
殺戮であった。
破壊であった。
虐殺であった。
それは断じて戦闘ではなかった。
直径一センチほどの結晶細胞で構築された端末群は、与えられた
本体である〈悪竜〉から供給される潤沢なエネルギーを用いて、その一つ一つが指定された目標に向けて加速した。
初速は光速の九九パーセント。
限りなく光の速さに近い速度は、質量を持つ物質にとってほぼ実現不可能な速さだ――この宇宙の物理法則下においては。
超空間構造体の亜種である結晶細胞は、その性質上、熱によって蒸発することがない。構造体を保つための結合が破壊されることはあっても、最小単位である結晶細胞は残る。
〈悪竜〉との同調で極めて強固な細胞結合を持つ〈ドラゴンスケイル〉は、理想的な質量投射兵器の弾体であった。
ゆえに、物質宇宙でもたらされる被害は想像を絶するものだった。
プラズマ化した大気を残して直進する飛翔体――二億枚の〈ドラゴンスケイル〉が地表と成層圏外に射出。
そのうち、約四割である八〇〇〇万発が地表に向けて投射されていた。
着弾。
――
八〇〇〇万箇所の着弾地点――大気圏外からでも観測できる――から火山噴火のような土煙が上がり、激震が走った。
直撃した化身の肉体が消し飛び、貫通した弾体が地表にクレーターを穿つ。
海が割れた。
山が砕けた。
都市が吹き飛んだ。
辛うじて現存していた文明は、地表諸共に爆砕された。
遠く、流れ弾として飛来した〈ドラゴンスケイル〉が月に着弾、クレーターが生まれていた。
熱量防壁を展開していた昇華端末もいたが、弾体一つ一つが停滞フィールドを出力、防御手段を無力化していたために無意味だった。
膨大な運動エネルギーを帯びた弾体と衝撃波。それだけで物理的な肉体は跡形もなかった。
成層圏や衛星軌道上に存在していた、残り六割の昇華端末たちも同様である。
接触した対象の情報体を破壊、〈悪竜〉へ吸収する機能の付与――〈光輝の王〉の侵食光の応用――により、化身たちは遡航再生を封じられて沈黙。
幾何学模様の発光現象が、地上と天空を彩るイルミネーションのように輝いていた。
「これで前提条件は達成されました。この地上に生存する人類は、誤差の範囲内です」
〈悪竜〉は小首を傾げた。
もうもうと土砂を噴き上げる、穴だらけになった地上――可能性事象の変動から推定される死者数は一億人以下。
たったそれだけしか、人類は生き残っていなかったということだ。
〈悪竜〉の引き起こした大惨事を、〈異形体〉は傍観している。
彼女を生み出した穏健派トリニティクラスターはもちろん、人類への民族浄化を行ってきた過激派の大陸クラスター群も黙認していると見ていい。
この世の終わりのような光景を眺めながら、彼女はひどく落ち着いた様子で口を開いた。
「この手は、これからも人を殺めるでしょう」
その気になれば、存在座標をこの宇宙の外側――あまたの並行宇宙へずらし、身一つで逃亡することもできた。
今の彼女ならば、見知らぬ世界に漂着しても問題はない。
だが、それでは駄目なのだ。
「
〈悪竜〉――導由峻であったもの――の命題の答えを得るには、この宇宙でなくては意味がない。
だから、この手遅れになった時間軸への改変行為が必要だ。先ほどの一斉掃射で、地球上に残存していた
おかげで、改変に最適な空白領域のお膳立てができた。
この宇宙のルールはシンプルだ。
死者はモノとして干渉できるが、生者への干渉は間接的なものに留まる。
〈全能体〉という仮想敵を前にして、人としての倫理を捨て去り、他者の命を自らの都合で奪い取る悪逆。
忌むべき超人の独善、かつてあの人が何よりも憎悪していたもの。
自らの行いを悪鬼外道と認識しながらも、〈悪竜〉は決して止まらない。
「たとえそれが、
誕生し、存在してしまった生命の背負う業を、人類という知性体は悪と定義する。
そして肉身に染みついた悪に抗うために、無数の制限を発明してきた。
最初、それは共同体の維持のために普及した戒律だったのかもしれない。
受け継がれ定められた法に従っていただけなのかもしれない。
だが、そうして生じた秩序と繁栄の中から、より根源的な問いかけが為された。
何故、殺すのか。
何故、奪うのか。
何故、犯すのか。
目を覆いたくなるような虐殺と略奪と陵辱の歴史――すべてが種としての力強さと一体不可分の、どうしようもなく人間らしいおぞましさ。
所詮、この世にあるのは人間という悪と、その手が握りしめた
その救われない様相の対として、善の概念が生まれたその日から――
――はるか彼方の天の星を目指して、人は走り始めた。
いつか、あの星へ辿り着くのだと。
正義や理想という名の推進力が、獣の引力から人間を解放すると信じて――途方もない歩みの最果てに、あるべき到達点を見出した。
それが数え切れない悪であり、それを克服せんと進み続ける善なのだ。
未だ果たされぬ切なる願いを、どうして無意味と笑えようか。
〈悪竜〉は
恋するように、愛するように。
「この世に満ちたる悪すべてを
それは普遍的な悪だった。
利己という名の獣性、独善という名の
生まれては死ぬ人間の苦しみを足蹴にして、唾棄すべき非道を為してなお、手を伸ばさねばならないたった一人を彼女は得たのだ。
地球生命四六億年の悲願など、それに比べれば取るに足らない些末事。
何故ならば、そう――あの人は、人の手では届かない
銀色の翼を広げた天球、黄金の太陽がその想いに応えることはあるまい。砕け散り、拡散しきった端末の仮初めの自我など何の意味も持たない。
それは人類という種を救うために自動機械、永遠と幸福を追求する楽園の建設者ゆえに。
ぎらり、と。
一際強い輝きが、〈全能体〉から放たれた。七色の光がプロミネンスのように立ちのぼり、〈全能体〉の周囲で収束していく。
それはこの世ならぬ超光速波、〈全能体〉を〈全能体〉たらしめるもの。
天体規模の侵食光の直接放射――地球諸共に、彼女を消し去るための準備だ。
〈悪竜〉が地上を壊滅させたことで、直接的な破壊行為に躊躇いがなくなったのだろう。
そう、この状況は〈全能体〉にとっても好都合。
ここで決着をつければ、この宇宙での救済は完遂される――〈悪竜〉によって殺傷された人々を救うこともできるのだから。
このときを待っていた。
〈全能体〉という可能性事象の収奪者が居座る限り、大規模な時空間への干渉は阻止される。
彼らの狙いは、人類を情報体へと転換して回収する救済であり、物質宇宙の存続そのものには無頓着だ。
ゆえに〈悪竜〉の目的――死者を生者と入れ替え、破壊された都市をそうでなかったことにする再配置――と相容れることはない。
直径一三九万キロの恒星を核として降臨した超越者――〈全能体〉の胚となり、いずれは天の川銀河を呑み込んでなお膨張するであろう神の卵を打ち砕く。
そうすることで〈全能体〉の一部となり、永遠を享受する魂は、無慈悲な宇宙に放り出されたモノになり果てる。
〈異形体〉の手で生死をひっくり返せる、ひどく矮小な存在に。
彼女の願いを叶えるには幾千、幾万、幾億の時がかかるだろう。その足がかりとして、この世界は取り戻さねばならなかった。
それに。
「わたしにも、責任というものがありますから」
それが犠牲と絶望の荒れ野へ放り出す行いだとしても、〈悪竜〉――
目のない頭部を、〈全能体〉に向けた。
現在、〈悪竜〉は地球大気の外側、高度一万キロメートルの外気圏で静止している。
〈全能体〉を迎え撃つ上で、最適な位置だった。
過去/現在/未来にまたがる無数の因果が折り重なった、時空間という名の領土を支配し、自らの望みの結果に向けて時空を組み替えていくチェスゲーム。
そのやり方を学んだ〈悪竜〉は、それに相応しい方法でこの戦いに勝つつもりでいた。
〈全能体〉の一人勝ちなどさせてやるものか。
そのために機能は、すでにこの
スカート部の四本の竜頭が伸び、頭部と同じ方向を向いた。
続いて腰椎から生えた二本の竜頭――悪魔の翼のような構造体――を延長、両肩の上で水平になるように固定。
人型の竜と呼ぶべきシルエットだった全身の形状が、少しずつより本質的な形態に近づいていく。
顎を構成する無数の部品がうごめく。
拘束具が外れるようにそれらがスライド、下顎が大きく二つに開いた。
露出する口腔――鉱物のように赤い光を透かし、煌めく結晶細胞で構築された異質な器官の内部には、舌も歯も存在しない。
腰から生えた一対二本の竜頭およびスカート状の四本も、同様に顎を展開。
内蔵された機構を目覚めさせた。
それは捕食、発声のための器官にあらず。
外敵を排除するための殺戮器官たる竜の
空間断裂では破壊できない、〈全能体〉を構成する超空間構造体を唯一、貫通しうる兵装。
――収束重力波射出機構〈竜の吐息〉。
それは、いつか人が辿り着くであろう力の一端だ。
彼女は人類の歴史を、こんなところで終わらせたりはしない。
どれほどの苦痛と絶望が待っていようと、彼らをここへ連れていこう。
その全身が深紅の輝きを放つ――まるで黙示録の獣――赤い竜を思わせる姿形。
七つの竜の頭が、一斉に収束重力波の放出を開始。
虚空を歪める破滅の足音――光を呑み込む真っ黒な重力場が生成/膨張/収束――その巨大な空間歪曲によって周囲の景色がねじれていく。
可能性事象の変動から、侵食光の発射兆候を感知。
〈全能体〉の超光速波攻撃である侵食光は、その原理上、発射後の回避が不可能だ。
ゆえに、その直前にこちらから撃った。
――〈竜の吐息〉が解き放たれる。
それは空間を破砕しながら進む黒い津波だった。宇宙の黒よりもなお暗い、如何なる光も通さぬ存在否定の色。
呪詛と呼ぶほかない邪悪、星をも砕く空間破壊兵器――宇宙誕生以前の虚無そのものを再現し、神に等しき知性体すら打ち砕く術。
空間をねじ切り消失させる黒い濁流に、七色の光が激突した。
高次元の色彩たる侵食光は、〈全能体〉の一部そのものだ。
この宇宙の物質態では触れることすら叶わない、人類史の到達点――すべての人を永遠へと導く人間否定にして存在肯定。
その救済を、〈竜の吐息〉が噛み砕いた。
射線上になかった侵食光すらも、吸い込まれるように虚無に呑み込まれ、一条の例外もなく消えていった。
狂ったように吹き荒れる侵食光の嵐があった。
黄金の太陽の表面から無数の光が噴き出し、プロミネンスのようにその表面を覆っていく。
無限無数に伸ばされた白銀の翼が、本体を守るように折りたたまれて――黒い津波に跡形もなく消し去られた。
絶叫。
経路を通じて、その悲鳴の大合唱は〈悪竜〉にも聞こえていた。
彼女は微笑む。
哀れむように、愛おしむように。
その身に宿した人々を守ろうと、〈全能体〉は足掻いている。
だが、どんな防御手段も無意味だった。
空間そのものを破壊し、宇宙に大きな傷跡を刻んでいく一撃。
〈全能体〉自身を出力源とする虚無は、栄華を極めた永遠の光の影、忘れ去られた死の恐怖そのものであった。
〈悪竜〉を討つ英雄はいない。
あらゆる偶像が打ち倒され、噛み砕かれ、その骸を晒した。
何者も、悪しき竜を止める術を持たない。
お
それは呪いだった。
――運命を呪い、世界を呪い、人間を呪う竜の歌。
破壊的重力波の濁流が、〈全能体〉に到達する。
幾重にも重ねられた侵食光の鎧を剥ぎ取り、〈竜の吐息〉が天球に突き刺さった。
閃光。
おびただしい量の幾何学模様の光が放たれる。
全天を覆う光輝――それは人の情報体、五〇億の魂そのもの。
あの人が言ったように、人は光なのだと信じたくなるような景色。
星が壊れていく。
超空間構造体で編まれた神が、その血肉を打ち砕かれ、虹色の断末魔をあげている。
その余波は凄まじかった。
放出された熱量と重力波によって、火星が、金星が、水星が、木星が、土星が、天王星が、海王星が消し飛んだ。
太陽系など塵一つ残さずなくなるのではないかと思われる灼熱と歪曲の地獄。
その嵐の中でなお、〈悪竜〉は存在していた。
〈異形体〉の展開した停滞フィールドが、地球周辺の空間を守護しているのだ。
さながら天地開闢のごとき光と熱と重力波を見つめながら、〈悪竜〉は可能性事象への介入を開始。
時空間を改ざんして
そう、黄金の太陽を打ち砕いても〈全能体〉が滅ぶことはない。
彼らは無数の並行世界にまたがって遍在する救済機構であり、〈悪竜〉が破壊したのは、この宇宙に降臨した器に過ぎない。
それほどまでに、人類の末裔たる進化の極点は強大だった。
文字通り、それは人智を越えた存在なのだろう。
消失した塚原ヒフミの自我も、その巨大すぎる構造体に散らばり、意味をなさなくなったのだから。
ああ、最果てまで駆け抜けよう。
人類史を利用し尽くし、あらゆる悪を為しながら神の
――いつか、この手がきっと。
これは終わりではない。
たくさんの人を傷つけて、たくさんの想いを踏みにじって、どこにもいない誰かに手を伸ばして。
〈悪竜〉は誓う、未来永劫、朽ち果てることのない約束を。
「――わたしが救ってさしあげましょう。業苦に支配された無知蒙昧の主、
この世に生まれて、彼に出会えたという奇跡。
たとえ世界のすべてが敵になろうとも、
もしも何かを見失ったとしても、ぬくもりだけは消えないから。
――白熱する宇宙、音なき虚空に調べがひとつ。
それは人ならぬものたちの、哀れな恋の終わり。
あるいは、愚かしき愛のはじまり。
束の間のひととき、重ねた魂を求める旅路――永劫の時をかけて紡がれる、久遠の想い。
竜は進む。
他の誰でもなく、たった一人の英雄に手を伸ばすために。
竜は戦う。
いつか、未来の果てで巡り会うそのときまで。
竜を歌う。
時すら凍える虚空の果てまで響き渡る
これより始まるのは、人間否定の物語ではない。
――悪しき竜が歌う、世界を焼き尽くす愛の物語だ。
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